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日本初の導入
インターネット通販大手のアマゾンジャパン(東京都目黒区)は、兵庫県尼崎市にある尼崎フルフィルメントセンターで、災害支援物資の備蓄拠点を設けると発表した。
尼崎市とも提携し、災害発生時に被災地へ物資を無償配送するという。アマゾンは海外で同様の取り組みをしており、日本国内では初めての導入となる。
支援物資は飲料や非常食のほか、ウエットティッシュや歯ブラシなどの日用品、乾電池などの災害時に必要な物資を備蓄し、水や食料品など消費期限のあるものは一般の商品を転用して支援物資として供給する。
また、携帯電話を充電するためのモバイルバッテリーや子ども用の絵本といった被災生活を向上させる品目も保管されている。商品数は約50種類、1万5000点のものが保管されているという。これは、被災者1000人に対し、
「3日間分」
の支援を想定し、災害発生後72時間以内に被災地に物資を届けるとしている。
地域に大きな貢献
日本では近年大規模な自然災害が多発している。地震のほか、豪雨や台風、大雪による被害が毎年のように発生し、地域に甚大な被害が生じている。
災害時には、生活に必要な物資が容易に手に入らなくなる。最低限必要となる水や食料、毛布や衛生用品など、欠かすことのできないものでも不足することになる。その際、自治体や民間企業からの物資の支援は重要な役割を果たす。
今回のアマゾンの取り組みは、地域に大きな貢献を果たすことが期待される。
アマゾンのほかにも、災害時に物資供給を行うことを自治体と提携している企業は多い。佐川急便は全国各地の都道府県、市町村と協定を締結し、災害時における救援物資の集配・仕分け・保管・輸送等を担うとしている。
ホームセンター大手も注力
また、ホームセンター大手のカインズ(埼玉県本庄市)も、各地の自治体と災害時における生活物資を供給する協定を締結している。カインズは、自治体からの要請に基づき、ブルーシート、土のう袋、発電機、水、紙おむつ、カセットコンロなどの必要となる物資を同社の物流拠点から供給するという。
地域住民に対し、災害時に必要となる支援物資の備蓄、供給は、国や各自治体が行うことが基本となる。しかし、甚大な災害が発生した場合、国や自治体からの支援だけでは限界があり、民間企業と連携する意義は大きい。
特に、物流企業や流通業は、物を届けるノウハウにたけている。自治体がカバーしきれない支援物資の物流は、民間企業によって補完することが望まれる。
民間物資拠点の推移
国土交通省によると、支援物資の広域的な受け入れ拠点(物資を一時的に受け入れ、被災地に供給するための場所)として民間で登録されているのは、2023年3月末時点で全国で
「1755か所」
となっている。
災害時に物資を支援するにあたり、必要なものが迅速に供給できるか、また確実に届けられるかという課題がある。
災害は、その種類、規模、影響度合いが千差万別である。多くはそれらを事前に予想することが困難である。さらに、災害発生直後と3日後、1週間後では被災者のニーズも変化する。
発生直後はまず水や食料、トイレの確保が重要であり、やがて避難所で過ごすための衣服や簡易ベッド、衛生用品、発電機といったものが求められる。災害の影響が長期化すると、物を置くためのケースや自宅を修繕する道具、子ども用の娯楽用品といったものも必要となる。
支援物資を届けるふたつの方法
支援物資を被災者に届ける方法には、
・プッシュ型
・プル型
のふたつの方法がある。
プッシュ型とは、災害発生時に必要と想定される物資を現地に送り込む形である。一方のプル型とは被災地のニーズを供給元に伝え、現地が必要とする物資を送り込んでもらう形である。
災害発生時は自治体の機能も混乱し、公的な支援を十分に行うことが難しくなる。被災が広域になると、きめ細かな支援を行うための人的リソースや物資は大幅に不足する。その際、まずは必要であろうと想定される物資をプッシュ型で送り込むことの意義は大きい。
しかし、受け入れる側の拠点の能力や人的リソースが足りない場合、物資が必要なところに届かず途中で滞留する恐れがある。また、被災地のニーズに合ったものが送られてくるとは限らない。物によっては現地で調達することができ、
「それほど必要のないもの」
まで送られてくる可能性もある。
さらに、個人や団体から義援物資が送られてくることもある。食料品や衣類などが、寄付によって被災地に送られてくる。これらの荷姿は統一されておらず、ダンボールにも「子ども服」などのおおざっぱな記載しかされていないことも多い。中身の明細を確認し、必要となる住民に配布するための人員も確保しなければならない。
一方、プル型では必要となる物資をきめ細かく把握することが課題となる。時間の経過や被災地のエリアごとに必要とされるものは変わってくる。高齢者が多い地域、子どもが多い地域など、住民の特性によっても求めるものは異なる。それらを自治体の職員だけで対応することは容易でない。地域の住民や民間企業と連携し、適切な情報の発信、受け入れ態勢を作る必要がある。
意義ある拠点増加
また、支援物資を必要となる場所に届けるうえで大きなネックとなるのが
「道路の寸断」
である。
道路が土砂で埋まったり陥没したりした場合、トラックで配送することができなくなる。この場合、一度に運べる量は大きくないが
・ヘリコプター
・ドローン
を活用するといった配送手段の確保が課題となる。この対策としても支援物資の受け入れや供給するための拠点を各地に増やしておくことの意義は大きい。
これらの意義からも、今回のアマゾンの取り組みは災害支援に対する一助になることは間違いない。アマゾンでは他の拠点でも同様の取り組みを進めていくという。また、アマゾン以外の企業も自治体との連携を強化したり、自主的な災害支援策を構築したりして物資供給の拠点が増えていくことが期待されている。
支援物資を供給する拠点が増えれば増えるほど、被災者に必要なものを届けることができる割合が増え、きめ細かなニーズにも対応しやすくなる。災害時に支援してくれる企業が増加していることに、一住民としても感謝したい。
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