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多くの自治体の担当者が参加した、災害時の心のケアを考えるオンライン研修会＝長野市若里７の長野県精神保健福祉センターで２０２０年９月２４日午後０時５９分、坂根真理撮影
全国各地で自然災害が頻発する中で、被災地で重要性が増している「心のケア」を学んで被災者支援につなげようと、長野県精神保健福祉センターが災害時の「心理的応急処置」（ＰＦＡ）のオンライン研修会を開催。県内の佐久市や飯田市などの自治体や医療関係者ら約９０人が参加した。その様子を報告する。【坂根真理】
まず、心的外傷後ストレス障害（ＰＴＳＤ）の治療開発の第一人者で災害現場に厚生労働省の専門家として赴いている国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所の金吉晴所長が「災害時におけるこころのケア総論」と題して講演した。
金所長は「被害後３６時間以内に集中的なカウンセリングをすれば将来のＰＴＳＤが予防できる」という誤った支援の考え方があったことについて言及し、「その後（症状が）悪くなることが分かり、勧められていない。多くの研究によって無効とされています」と注意を促した。災害直後は、避難生活や復旧などに向けての情報処理などでストレスを抱える被災者に対し、カウンセリングよりも「寄り添う支援が欠かせない」と指摘した。
また、被災して取り乱している人に緑茶やコーヒーなどカフェインが入った飲み物を渡すのは不安感を強めることにつながるなどとアドバイス。「世界的に見ても『災害といえば心のケア』と認識されている」と述べた。
続いて同研究所の大沼麻実さんが、災害発生時の支援の心構えや対応のポイントなどの初期対応について世界保健機関（ＷＨＯ）がまとめたＰＦＡを説明した。押しつけがましくない、実際に役立つケアや支援▽ニーズや心配事の確認▽水や食料など基本的なニーズが得られる支援▽無理強いをせずに傾聴する▽安心させ落ち着かせる▽社会的支援につなぐ――などだ。
大沼さんは「生きている限り、危機的な出来事に遭うことはある。ＰＦＡは専門家にしかできないものではなく、誰でもできます」。ＰＦＡなどの支援が受けられれば、多くの人は時間がたつにつれて回復するという。
大沼さんは、支援する側のセルフケアの重要性についても指摘。「１週間程度被災地支援に行くと仮定して、自分自身のケアのために何ができるか（チャットに）書き込んでください」と呼び掛けたところ、災害支援の陣頭に立つ各自治体の担当者は、支援前のケアについて、十分な睡眠や栄養補給▽相手先の地名熟知▽ＰＣＲ検査などと回答。支援中は、支援者同士の情報共有▽被災地に飛び交うネガティブな言葉にのみ込まれない▽メリハリをつける――などと書き込んでいた。
最後に、長野県北部地震（２０１１年３月１２日）から来年で１０年を迎える栄村の保健師、樋口祐介さんが、当時の被災状況や支援内容について説明。「仮設住宅に、熱中症対策としてみんなで朝顔を植えました。同じことをすることでコミュニケーションが生まれ、（心のケア）支援につながった」と述べた。
主催した県精神保健福祉センターの小泉典章所長は「誰もがＰＦＡの手法を用いて、被災者の心のケアができるようになることが大切」と狙いを語った。
★ＷＨＯ版ＰＦＡマニュアル★
＜被災者に言ってはならないこと、してはいけないこと＞
・無理に話をさせない
・相手の話を遮ったり、急がせたりしない
・相手の状況に対して自分の意見を述べない。ただ聞くようにする
・適切であると確信できない限り、相手の体に触れない
・「そんなふうに思ってはいけません」「助かってよかったじゃないですか」は禁句。人々がしたことや、しなかったこと、感じていることについて価値判断をしない
・自分が知らないことをごまかして作り話をしない
・専門的過ぎる言葉は使わない
・自分自身の悩みを話さない
・他の人たちから聞いた話をしない
・できない約束や、上辺だけの気休めは言わない
・相手の問題を全部解決しようとは考えない
・その人の強さ、自分のことは自分でできるという自尊心を奪わない
＜言った方がよいこと、した方がよいこと＞
・気が散らないように、できるだけ静かな場所を見つけて話す
・被災者のそばにいる
・話を聞いていることが相手に伝わるように、うなずいたり相づちを打つ
・忍耐強く冷静でいる
・事実についての情報があれば伝える。知っていること、知らないことを正直に話す。「私には分かりませんが調べてみます」など
・相手が理解できるような方法で、情報を簡潔に伝える
・人々の気持ちや、話に出たあらゆる損失や重大な出来事（家屋の損失や大切な人の死）をしっかり受け止める。「本当に大変でしたね。どんなにかおつらいことでしょう」など
・プライバシーを尊重し、特に個人的な話を打ち明けられた時には相手の秘密を守る
・相手の強さと、これまでどのようにつらさを乗り越えてきたのかを知り、認める
※抜粋
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