主将の一言が全てを物語っていた。「負けるべくして負けた」――。2大会連続のアジア最終予選初戦黒星スタートを、吉田は苦渋の表情で受け入れた。
試合開始から、スイッチが入りきらなかった。「クリエーティビティー(創造性、独創力)が足りなかった。疲労なのかどうか分からないが、いつもよりもテンポ良くボールを回せなかった。インテンシティー(強度)も足りなかった」。決定機は自らのロングフィードから伊東が放った前半28分のシュートシーンのみ。逆に何度もカウンターの脅威にさらされた。後半43分の痛恨の失点はこの日を象徴していた。中盤でこぼれ球を拾われ左サイドに運ばれると、複数で寄せたが動きが重く奪い切れなかった。
「簡単にクロスを上げさせたし、僕はニアをもう少し消すべきだったし、マークの付き方も…。細かいミスの重なりが失点につながった。1人のミスじゃない。全体のミス。ホームで無失点は最低限だが、それを果たせなかったのは悔しい」
来年11月のW杯カタール大会へ向け、世界の強豪を見据えながらの戦いをイメージしていた中、アジア相手に攻守の課題が噴出。「日本を出国すれば多少、制限が緩和されると思う。チームづくりや戦術を含めて話さないといけない」。新型コロナ感染拡大防止策で国内組と海外組は隔離。これまで十分に話す時間が取れなかったが、次戦中国戦の開催地ドーハへ向かう機内で森保監督と緊急会談を設ける意向も示した。
前回のW杯ロシア大会アジア最終予選の初戦UAE戦は逆転負け。アジア勢では初戦黒星スタートから本大会出場を果たした唯一の国となったが、「前回同様に苦しい状態に追い込まれた。もう勝つしかない」と悲壮な表情を浮かべた。中国戦は早くも大一番。そこを乗り切れないようでは「W杯ベスト8以上進出」など到底、たどり着かない。
《突破率3%》アジア勢に単独でW杯の出場枠が与えられた86年メキシコ大会以降、アジア予選を突破して本大会に出場した延べ29カ国の最終予選初戦は計19勝9分け1敗。初戦に敗れながらも出場を決めたのは、前回18年ロシア大会予選で日本がUAEに1―2で敗れてから、最終的に組内1位で突破したのが初めて。確率0%からの逆転W杯出場を果たした前回に続き、今回は29分の1、確率3%からの逆転を目指すことになる。今回と全く同じ方式だった前回予選の日本は第2戦以降を6勝2分けと立て直し、最終戦の1つ前の9試合目でオーストラリアを破り1位突破を決めた。再現を狙うには、ここから先は1試合も落としたくない。
▽18年W杯ロシア大会アジア最終予選初戦 16年9月1日、日本はホームの埼玉スタジアムでUAEと対戦した。前半11分に清武のFKから本田のヘディングで先制。しかし同20分にFKを直接決められると、後半9分には接触プレーでPKを取られ、逆転を許して逃げ切られた。同32分にはゴールラインを割ったように見えた浅野のシュートが認められないなど、カタールの主審の微妙な判定にも泣かされた。
▼日本協会・田嶋会長 とても残念ながら敗戦という結果になったが、最終予選10試合のうちの1試合と捉え、気持ちを切り替えて次の試合に臨むとともに、残り9試合でカバーしていかなければならない。今日はこの試合に懸けてきたオマーン代表を称賛しなければならない。
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