米国ロサンゼルス郡公衆衛生局は7月28日、全事業に対する屋内でのマスク着用義務の再開を見送ると発表した。同郡は、7月14日から米国疾病予防管理センター(CDC)による新型コロナウイルス感染リスクが「中」から「高」に引き上げられたため(2022年7月27日記事参照)、感染拡大の予防策として全事業所における屋内でのマスク着用義務を再開することを検討していた。マスクの着用は引き続き強く推奨され、特にオフィスや店内、飲食時を除くレストランなど屋内での着用が推奨されている。
ロサンゼルス郡の1日当たり新規感染者数は、7月28日時点で7,009人となり、7月21日時点(8,691人)や7月14日時点(8,535人)と比べると減少傾向にある。新型コロナウイルス感染による入院患者数も減少傾向にあり、同郡公衆衛生局はこうした足元の状況を踏まえ、同郡が近いうちに「中」の分類に戻る可能性が高いことから、現時点でのマスク着用義務の再開を見送った。同郡公衆衛生局のバーバラ・フェラー局長は「7月23日以降かなり順調に感染者数が減少しており、減少傾向の始まりを示唆している可能性がある」「1日当たり入院患者数も4月中旬以来初めて減少に転じた」と直近の傾向を説明した上で、「企業や施設は滞在する人々に対し、独自で屋内でのマスク着用を求めることが認められており、これは感染者が多い時期に取るべき賢明な行動であることには変わりない」とし、引き続き安全措置を取るよう呼びかけた。
今回のマスク着用義務再開見送りは、新型コロナウイルスとの共存が進み、マスク着用に比較的寛容だったロサンゼルス周辺の人々の考えや行動に変化があったことも、一因とみられる。ロサンゼルス郡によるマスク着用義務再開の検討が進む中、同郡内のビバリーヒルズ市は、屋内でのマスク着用が義務化された場合でも、義務の履行のために市の職員やリソースを投入しないことを市議会において全会一致で可決した(「ロサンゼルス・タイムズ」紙電子版7月26日)。また、マンハッタン・ビーチ市やロング・ビーチ市はマスク着用義務に反対する姿勢を表明しており、独自の公衆衛生局を持つパサディナ市もマスク着用義務を実施しないと発表している。ロサンゼルス郡の隣に位置し、感染リスクが「高」レベルのオレンジ郡も、マスク着用義務の再開は検討していないと発表していた(「NBC」7月26日)。
ケンタウロス(BA.2.75)の感染拡大にも注意
ロサンゼルス郡では、オミクロン株の派生型である「BA.5」が新型コロナウイルス感染者のうち71.3%を占めている。一方で、インドで感染拡大が報告されている、オミクロン株の新たな派生型である「BA.2.75(通称:ケンタウロス)」も全米で35件、カリフォルニア州で9件、ロサンゼルス郡で1件報告されている。BA.2.75株については不明点が多く、引き続き注意が必要となる。
(サチエ・ヴァメーレン)
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