6月の台風2号に伴う住家の被害認定調査で、床上浸水被害を受けた沼津市の被災者から「詳しい調査を受けていない」との声が上がっている。内閣府の指針では、外観上の損傷を伴わない床上浸水の場合、全ての部屋の被災状況を調べる必要があるが、「調査員は家の中に上がっていない」との証言もある。市は被害認定した計116件のほぼ全てを床下浸水と同レベルの「準半壊に至らない(一部損壊)」と判定しており、不服として再調査を求める被災者も出ている。
「ボランティアは家に上がって詳しく調べてくれたが、市職員は玄関で浸水の高さを測っただけ」。市内で最も被害が深刻だった同市西添町。木造2階建て住家の浸水が床上約58センチに達したという松田啓資さん(85)は憤る。市からは床下浸水と同レベルの「一部損壊」と判定された。木造平屋の自宅が約25センチ床上浸水したダンス講師渋田ともかさん(35)も「8部屋あるうち2部屋しか見てもらっていない」と訴える。床下にカビが生えたり、扉が開閉しにくくなったりしているといい、「一部損壊」と判定した市に再調査を求めた。70代の別の男性も「市の調査は浸水の高さを居間で1カ所測っただけだった」と不満を口にする。
住家の被害認定は内閣府の指針に基づき、被害を受けた全ての部屋について床や内壁、柱、基礎など部位ごとに損傷の程度を点数化し、その積み上げで家屋全体の被害を判定する。結果は罹災(りさい)証明になる。内閣府は「被害認定は自治体に一定の裁量があり床上浸水でも準半壊に満たないケースはあるが、指針に沿って点数を積み上げていけばおおむね準半壊以上になる」との認識を示す。
台風2号で同市と同じような床上浸水被害があった磐田市は、計9件について半壊8件、中規模半壊1件と判定した。沼津市は115件が一部損壊で、準半壊1件。指針では、壁の断熱材の吸水や床下への汚泥の堆積が認められれば被害認定することになっているが、沼津市はほとんど確認しておらず、点数も加点していない。
沼津市資産税課の担当者は「現場では迅速な作業をという思いがあったのかもしれないが、基本的には全部屋を調べる必要がある。経験が少ない被害認定は手探りの部分があり、課題を整理したい」としている。
(社会部・武田愛一郎)
住家の被害認定調査 地震や風水害、液状化被害などの際、市町村が災害対策基本法に基づき被災者からの申請を受けて行う調査。被害の程度に応じて「全壊」「大規模半壊」「中規模半壊」「半壊」「準半壊」「準半壊に至らない(一部損壊)」の6段階に分けられる。罹災証明書として発行され、公的支援を受けたり、保険金を請求したりする際に必要になる。被災者から再調査の求めがあった場合、市町村は必要に応じて対応する。
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