北アフリカのモロッコで9月に発生した地震の被災者支援のため、岡山市が本部の国際医療NGO「AMDA(アムダ)」の看護師兼調整員として現地に派遣され、約2週間、医療支援活動に従事した。
9月8日夜に発生した地震はマグニチュード6・8。これまでに3千人近くが死亡、負傷者は6千人近くにのぼった。藤本智子さん(47)と荻野祥子さん(44)=いずれも東京都在住=が活動したのは、震源に近い山岳地帯の村など。14日にモロッコ入りした際は、崩壊して建物に残された人の救出や、急を要する外傷治療は一段落していた。医療品などの物資の仕分けや、避難生活で新たにかかった病気や持病へのケアを担当した。
2人は、今回が初対面。これまでお互い看護師として多くの経験を積んできた。
藤本さんは「ツアーナース」として、海外を含む各地の旅行に同行して健康管理をする仕事を約20年間勤めている。多いときには年間250日間、旅に付き添っていた。
ただ、この数年はコロナ禍で比較的余裕ができていた。知人からモロッコ派遣の話を聞き「突発的な事態に対応してきた経験が生かせれば」と決意。災害支援のボランティア活動は初めてだった。
荻野さんは、8月末まで国際協力機構(JICA)の活動でマレーシアに滞在。2年半、現地スタッフや家族の健康管理を担当した。それ以前にも青年海外協力隊でラオスで活動したり、別の国際NGO団体で同国の小児保健の調整員を務めたりした。2月のトルコ地震で活動した知り合いの看護師からの勧めで、モロッコ行きを決めた。荻野さんも海外の被災地での活動は初めてだった。
2人は9月14日に現地入り。震源から約70キロ離れたマラケシュに向かった。モロッコ政府の方針で、医療支援活動できる国が限られており、日本は対象外。そのため、国際保健を専門とするモロッコのNGO団体の医師らの活動に同行した。
現地の建物は土やレンガ造りなど耐震性の低いものが大半。倒壊、半壊した建物が目立った。余震を恐れ、屋外でテント生活を送る被災者が多かった。夜になると気温が急激に低下するため、体調を崩した人たちへのケアもしたという。
9月21日には車で4時間かけて震源地近くの村へ。子どもたちが自由に描いた絵には、倒壊した建物や傷を負った人の顔が描かれ、それらで占められていた。藤本さんは「言葉が通じず表情からしか分からなかったが、やはり心の傷を負っているようでした」と振り返る。子どもたちへのメンタルケアの必要性を感じたという。
荻野さんは、宗教や文化の違いとともに、女性や子どもなど弱い立場の人たちが声が上げにくい状況にあるようにも感じたという。「公平に医療を届けられることが理想。生活再建は徐々に進んでいたが、今後も長期的な支援が必要だと感じました」
活動を振り返って藤本さんは「手探りの中でどこまで支援できたんだろうかと。次はもっと良い医療を提供していければ」。荻野さんは「モロッコに限らず、現地の人たちと一緒になって、医療にアクセスしやすい体制構築に向けたプロジェクトに参加してみたいです」。(上山崎雅泰)
からの記事と詳細 ( 被災者国境を越えケア、モロッコ地震でAMDA派遣の看護師:朝日新聞デジタル - 朝日新聞デジタル )
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