首相の演説 被災者の声を前フリに「いまそれ言う?」の素・頓・狂:朝日新聞デジタル - 朝日新聞デジタル

02.31
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記者コラム「多事奏論」 編集委員・高橋純子

 もう言い飽きたからこれで最後にしたいのだけれど、岸田文雄氏は首相としての資質を欠いている。私はそう結論している。ただ悔しいかな、首相という立場にのみ宿る力というものはある。

 災害で命を危うくし、仕事や財産を失って絶望の淵に立たされている人に、かろうじて一筋の「光」を見せられるのが、首相だ。現地に身を置く。言葉を尽くす。それが「光」となり得る。誤解を恐れず言えば、たったそれだけのこと、手間もかからず元手もいらずで出し惜しみする理由はない。ゆえに体制のいかんを問わず、世界の政治リーダーはふつう被災地に「駆けつける」。人々の心に届くメッセージを発しようと努める。

 しかし岸田氏はできない。やらない。

 能登半島地震の被災地を訪れたのは1月14日、発災から13日後である。

 1月30日の施政方針演説では、地震の被害状況が「体言止め」で並べ立てられた。「半島特有の道路事情による交通網の寸断。海底隆起や津波被害による海上輸送の途絶。水道、電気、通信などライフラインの甚大な損傷。地震に弱い木造家屋が散在する小さな集落の孤立。高齢者比率5割を超える地域社会への直撃」。それぞれに多くの命やくらしがかかっているのに、手際良くサッサと折り畳んでいく。冷にして淡。まあでも、肝心なのはこの後だ。被災された方にどう心を寄せ、どんな言葉をかけるか、首相としての真価が問われる。さて――。

 「なによりも素晴らしいのは…

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