ロシアの侵攻を受け、ウクライナから洋野町に避難した4人が19日、同町役場を訪れ、「世界が平和であることがウクライナにとっても一番の願い」と、戦争の早期終結を訴えた。4人は同町出身で戦後にウクライナに移り住んだ元日本軍兵士、故・ 上野 石之助さんの親族。避難を受け入れた町への感謝の言葉や、今も戦禍にいる家族への思いも語った。
4人は、石之助さんの長女ナージャ・ザイチュックさん(60)、石之助さんの長男の妻のレーナ・ロハチョーバさん(46)と、その息子のセミョン・ウエノ君(7)、マクシム・ウエノ君(7)。
4人は、ウクライナの首都キーウ(キエフ)の西に位置するジトーミル州で生活していたが、ロシアの侵攻後、自宅近くに爆弾が落ちたのをきっかけにポーランドへ避難。石之助さんのおいの幸夫さん(75)とSNSで連絡を取り合い、日本への避難を決断した。8日、ポーランドを飛び立ち、10日に洋野町入りした。
19日の訪問では、岡本正善町長が「静かな環境で安心して過ごしてもらえるよう精いっぱいサポートしたい」と4人の歓迎を表明した。これに対し、レーナさんは「皆さんの支援に感謝したい。全然違う国なので、まずは文化を知りたい」と述べた。
その後行われた記者との質疑応答では、ナージャさんが侵攻後の生活について「侵攻後2日間は眠れなかった。着の身着のまま地下に避難し、暖房もなく寒くて、心がすさむ生活だった」と振り返った。レーナさんは、夫と息子がウクライナに残って人道支援などに携わっているといい、「今も現地では被害や犠牲にあった人がたくさんいる。一日でも早く戦争が終わることを願っている」と語った。
4人は、現地の戦況が落ち着くまで幸夫さんの自宅に滞在する予定。現在は、日本語を覚えたり、美容師のレーナさんが幸夫さんの散髪をしたりと、ゆっくりと地域になじもうとしているという。レーナさんは、日本の印象について「親戚、近所の皆さんから花や食事をもらい、とても感謝している」と話した。
町は現在、4人に生活支援や子どもたちの学習支援などを行うことを検討している。今年9月に就学するはずだったセミョン君とマクシム君には日本の子どもたちとの交流の場を設ける方向だ。また、町独自に寄付も募る計画で、役場前に窓口を設置し、4人に贈ることを考えているという。
避難してきた4人の力になりたい――。洋野町の町民からも、歓迎やねぎらいの声が相次いだ。
町婦人団体連絡協議会は、折り鶴1000羽でできたウクライナの国旗を約2日かけて制作し、4人が訪れた役場の会場に飾った。募金の12万円も町に寄付した。役員の 安是 芳子さん(73)は「早く戦争が終わってほしい。できることがあればなんでもやりたい」と語った。
同町大野の「蛇口商店」の店主蛇口敏昌さん(57)は「個人的に物資などを上野さん宅に寄付した。町全体でも支援をしていきたい」と意気込み、同所の会社役員下川原由幸さん(58)も「町で支援の取り組みをしてくれれば、自分も参加したい」と語った。
Adblock test (Why?)
からの記事と詳細 ( ウクライナ平和願う 避難民4人洋野町役場訪問 - 読売新聞オンライン )
https://ift.tt/vRGzPq1