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排水対策工事の完了を受け、盛り土の安全性について県に質問する被災者や住民ら=いずれも熱海市伊豆山で
静岡県熱海市伊豆山の土石流災害の被害を拡大させたとされる盛り土の一部が今も残る問題で、崩落の危険性がある土砂への水の流入を防ぐ排水対策工事が完了したことを受け、県は三日、土石流の起点付近の現場を被災者らに公開した。ただ、被災者からは「まだ安心できない」と不安の声が相次いだ。
起点には県の推計で、約二万立方メートルの土砂が残っている。崩落の危険性を否定できず、県は雨水や地下水が土砂に流入するのを防ぐため、地上や地中に排水路を設置した。市は起点付近の市道の側溝を網状のふたに変えるなどした。県は二日に工事完了を発表した。
この日の現場公開には、被災者ら約四十人が参加し、県や市の担当者から排水設備について説明を受けた。被災者は大雨が降り、残っている盛り土がすべて崩れた場合を不安視。県の担当者は既存の砂防ダムでは一部しかせき止めることができないと説明した。ただ、立ち入りが原則禁止される警戒区域には誰も住んでいないことから「人への被害はないと思っている」と述べた。
これに対し、警戒区域内に自宅がある中島秀人さん(53)は「ある程度、安全確保されると思っていたから、すべて受け止められないと聞いて驚いた。できる限りの対策をしてほしい」と要望。他の被災者も「(排水対策で)多少は安心だけど、一度崩れていると安心できない」「警戒区域近くの住民は不安が消えないと思う」などと口にした。(山中正義)
◆不明の太田さん名義 診察券2枚見つかる
土石流で流された現場付近で線香を供える被災者=熱海市で
静岡県警は三日、行方不明者の太田和子さんを一斉捜索し、太田さん名義の病院の診察券二枚を見つけた。被災現場付近ではこの日、被災者らが黙とうをささげ、犠牲者の冥福と太田さんの早期発見を祈った。
県警によると、診察券が見つかったのは、土砂を仮置きしている旧市立小嵐中学校。国道135号の逢初(あいぞめ)橋付近にあった土砂をふるいにかけていて、警察官が見つけた。被災時に本人が所持していたかは不明。
発生時刻の午前十時半ごろには、土砂が流れ下った現場を前に、被災者ら十数人が黙とうした。遺族らでつくる被害者の会の太田滋副会長(65)は「ほぼ毎日のように伊豆山に来ているけど、何でこんなふうになったのかといつも思う」と変わらぬ気持ちを吐露した。
現場近くにある「心象めぐみ会共同作業所」の伊勢井勝所長(71)は実家が被災した。「自宅からも仕事場からも窓を開けると現場。怖い気持ちはなくなったけど、亡くなった人がかわいそう」話した。(山中正義、板倉陽佑)
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