Marisa9/iStock
黒坂岳央です。
タイ政府は2022年1月、富裕層外国人向けのビザ発給を決めた。延長を含めれば、最長10年間タイに滞在することができ、対象者は富裕層や高度な専門技術を持ったものに限られるという。これと同じことを我が国でもできないだろうか?
日本には年間3188万人(2019年)の外国人観光客が訪れるようになり、世界で最もチャンネル登録者数が多いYouTuberとして知られるPewDiePie氏も日本移住を決めた。コロナ禍の影響により、依然として入国には厳しい制限がかけられているが、これが緩和されると円安の状況も手伝って爆発的な観光客がやってくるだろう。つまり、日本は外国人が「お客様」として利用する上で、大変魅力的に映っていると言える。
日本に対して否定的な日本人をかなり見かけるが、少なくとも魅力的に感じてくれている外国人は大勢いる。ならば本気で富裕層を誘致する施策を打つことで、経済的利益を享受する価値はあるのではないだろうか。
※本稿はビザや外国人移住における門外漢の素人による考察であり、誤った情報が含まれるリスクを承知の上で読み進めていただきたい。
FIRE達成者のリタイア先としての日本
労働先として、日本が理想的かは賛否両論ある。ワーキングビザ発給のハードルや、英語理解者が少ないこと。特に直近は円安であり、平均給与も高くなってはいない。
BBCニュースなどでは、「コロナ禍で会社が大変な打撃を受けた際、欧米企業はリストラを進めた中、日本企業は温情的に会社が従業員を守った」とポジティブに取り上げるなどをしたものの、国際競争力に優れる米国や中国に比べれば「働く先」として日本に魅力を感じる人はそこまで多くはないかもしれない。
このような点を踏まえると、外国人にとって魅力的な労働先かは分からないが、少なくともリタイア先としては論理的に数多くのメリットがある。
まずは治安である。「治安はお金で買うもの」という感覚が一般的である国家は少なくない。筆者がアメリカ・シカゴに住んでいた時はまさしくこのことを感じた。きらびやかな表通りの直ぐ裏に、落書きだらけで危険な男たちがタムロする世界が混在する。日本の治安の良さは世界トップクラスで、比較的安いエリアでも安全である。
そしてインフラだ。水道は世界一綺麗で使い放題、医療レベルも高く、食もおいしくて安いし、インターネットも高速で安価である。接客は言わずもがなで、便利なコンビニはあちこちにある。東京オリンピックの際に、外国人がその便利さに驚き、興奮気味に投稿をしていた。
日本は成熟した国家でG7の先進国だ。成熟国家でのリタイア先としては最高の選択肢だと思う。外国人にとって魅力的で日本の国益にもなるなら、ぜひ導入を勧めてほしいと感じる。
ビザ発給条件はどうする?
さて、そんなリタイアビザだが問題は発給条件である。ビザを受け取り、あくせく働く労働者が増えてしまったり、犯罪が増えては問題だ。条件には高いハードルを持たせる必要がある。
- 過去に重大な犯罪歴やビザ発給拒否履歴がないこと
- 日本円建てで1億円以上の資産を持っていること
- 年間の半分以上日本国内に滞在していること
- 最長10年(5年で一度更新)
- 就労不可
こうした高めの条件を持たせることで、日本に移住して問題行動につながる外国人を制限できるだろう(専門家からすると、穴だらけの条件かも知れないが…)。さらに日本国内では就労不可とすることで雇用問題も起こらず、外国人移住者は日本でたくさんのお金を使ってくれる大事なお客様になる。日本でのハイクオリティの生活の様子が広く伝われば、次のお客様の誘致にもなるはずだ。
◇
「富裕層を誘致」というと新興国が外貨獲得のためにやっている施策だと「プライドが傷つく」と感じる人もいるかもしれない。だが、国益の観点で論理的メリットがあるならやった方が良いのでは?と感じる。
やってみて不測の問題が生じれば、その時点で条件を変えるなど、実践しながら柔軟にハンドリングすればいい。「安い日本」「円安」とネガティブな論調が支配的であるが、それを逆手にビジネスチャンスにつながればと切に願う。
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