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強い勢力のまま本県に直撃し、県内全域で甚大な被害を及ぼした台風19号から4年が経過した。先月には宇都宮市や真岡市、さくら市、益子町、芳賀町、塩谷町付近で激しい大雨が降り、床下浸水などの被害があった。災害の教訓を生かすため、台風19号の被災者に当時の様子を振り返ってもらった。
栃木市薗部町4丁目の両毛印刷は、子育て世帯をターゲットにしたフリーペーパー・交流サイト(SNS)「TOCHICO日和」を展開している。編集長の松本真由美(まつもとまゆみ)さんは、2度の水害の経験を踏まえ、災害・防災に関する情報発信に力を注いでいる。
同社の社屋は永野川や太平山からの用水路に近く、2015年の関東東北豪雨で浸水被害に見舞われた。台風19号の被災当時、松本さん一家は自宅で過ごしていた。「数十年に一度の水害が4年前に起こったばかり。すぐ次が来るはずがない」。しかし、駐車場の自家用車が半分ほど水に漬かっているのが見えて不安を覚えた。
避難が難しくなり自宅で待機したが、玄関から水が少しずつ入ってきた。子どもたちを寝かせた後、夫婦で慌てて必要な物を2階に運び上げた。床まであと1センチという状況で水は引いたが「もし水が入り込んでいたら、洋服や学用品、食べ物は駄目になっていたかもしれない」と振り返る。
社屋が再び被害を受けたと聞き駆け付けたかったが、自家用車が使えない上、3人の子どもがいて家を空けることができない。もどかしさを感じていた際、被災した知り合いたちから「チャイルドシートが駄目になってしまった」「洋服やおむつを譲ってほしい」との相談が寄せられた。
TOCHICO日和は栃木市社協と連携し、使わなくなった子ども用品を1品100円で交換し合う「TOCHICOリサイクル」を18年秋から行っていた。松本さんはチャイルドシートやベビーカーなどを譲ってくれる人がいないかSNSを通じて呼びかけると、読者やフォロワーからベビー用品が集まり、困っている人に届けることができた。
「リサイクルが始まって1年が経ち『TOCHICOに聞けば解決できるかも、何か協力できるかも』と地域に浸透してきた時期でもあった。子育てをキーワードに、困っている人や助けたい人をつなぐことができた」と松本さん。この経験を機に、親子での防災に特化した「おやこで考えるとちぎ防災BOOK」を発行した。このほか、防災イベントを企画・運営するなど精力的に活動している。
一方で、活動を続けてきたからこそ“壁”を感じることもあった。台風19号で被災した家庭を支援するため、保護者が自宅の片付けをしている間に子どもを預かることを思い付いたが、法的に難しいことから断念。また、多くの被災体験談を集め冊子を発行しようと考えた。しかし、知り合いの大半から「私よりひどい体験をしている人がたくさんいる」「人に話せるような経験ではない」と断られてしまったという。
災害の教訓を伝える難しさを感じながらも、松本さんは「地域の防災力を高めるためには学生や若者のパワーも不可欠。子どものうちから防災イベンに参加して備えや知識を学ぶ機会を設け、地域を担う若い世代を増やしたい」と意欲的だ。
◆メモ 2019年10月、本県に台風19号が直撃し、宇都宮市や栃木市など県内14市町に大雨特別警報が発表された。日降水量は宇都宮市、鹿沼市、佐野市などで観測史上最大を記録。河川の氾濫などにより床上、床下浸水など住宅被害は1万4千棟以上となった。鉄道橋が破損したJR両毛線は1カ月にわたって一部区間で運転を見合わせ、市民生活に大きな影響を及ぼした。
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