東日本大震災の津波で、宮城県女川町の七十七銀行女川支店で亡くなった犠牲者らを悼むため、被災地に通う音楽家らが「命の大切さ」を伝える歌を海に向かって響かせた。遺族とともに絵本も作り、少しでも前向きになれるよう支援していく。
「海はつながっている 空はつながっている みんなの思いがつながれば なにか 動きはじめる 声をあげてみてね 少し勇気を出して きっとあなたのすぐ近くで 誰か 君を待ってる」
遺族が設置した「女川いのちの広場」=女川町黄金=で4日にあったミニコンサート。横浜市のシンガー・ソングライター木村真紀さん(62)がキーボードを弾きながら、音楽家の藤田司さんらの伴奏に合わせ、被災者を思う歌を披露した。
木村さんが作詞作曲した「つながっている」は、石巻市や東松島市といった被災地に通う中で生まれた歌。木村さんは2011年秋から被災地を訪れ、仮設住宅で避難者と一緒に歌うなどしてきた。コロナ下では活動を自粛していたため、今回久しぶりに遺族と再会し、歌を届けた。
この3月には、木村さんも文章を書いた絵本「ふしぎな光のしずく~けんたとの約束~」が出版された。13年前、七十七銀行女川支店で亡くなった田村健太さん(当時25)と、両親の田村孝行さん(63)、弘美さん(61)夫妻の思いを伝えている。健太さんらは近くの高台ではなく、銀行2階の屋上に避難し、12人が犠牲になった。
木村さんは田村さんら遺族と知り合い、交流してきた。女川で起きたことを伝えるため、絵本を作ることにした。木村さんは弘美さんと一緒に文章を担当し、5年かかって完成させた。コンサートでは、田村夫妻や他の遺族の前で、絵本の朗読も披露された。
木村さんは「健太君は、いつもお父さんお母さんたちを見守っている。前向きに生きていくきっかけになるといい」との願いを込めたという。
弘美さんは「息子への思いは強くなった。悲しさだけではなく、力をくれている。命の大切さを未来につなげたい」。津波のときには高台に避難することの大切さも改めて広めたいという。(柳沼広幸)
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