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坂本龍一さん「気さくに寄り添ってくれた」 東日本大震災被災者悼む - 毎日新聞
taritkar.blogspot.com3月28日に71歳で亡くなった坂本龍一さんは、東日本大震災の被災者と約10年間、交流を続けていた。岩手県陸前高田市の菅原教文さん(58)は「毎年のように被災地を訪れ、お年寄りの話を聞き、我々にも気さくに寄り添ってくれた。これからもお会いしたいと思っていたのに、残念でなりません」と、多彩な活動を続けた音楽家の死を悼んだ。
坂本さんは2011年7月、自らが代表を務める森林保全団体「モア・トゥリーズ」が建設を支援した岩手県住田町の地域材を活用した仮設住宅を訪問。津波で両親と自宅を失った菅原さんに出会った。
坂本さんは、菅原さんが楽譜をめくり、当時14歳だった長女綾乃さん(25)が奏でたキーボードの音色にじっと聴き入った。演奏したのは坂本さんが世界的評価を受けた映画「戦場のメリークリスマス」の主題曲で、菅原さんは「非常に喜んでもらえました」と振り返る。
この出会いを機に、両者の交流は長く続いた。坂本さんは陸前高田市でのピアノコンサートで、楽屋に菅原家を招き、住田町の再訪時には一緒に写真を撮った。
菅原さんの勤務先で陸前高田市にあった「酔仙酒造」は津波で建物が流され、従業員7人が亡くなった。人気銘柄「雪っこ」を坂本さんに贈ると、感謝の手紙とともに新作のサイン入りCDが返ってきた。「おいしいから、進むんだよね」と話してくれた。がれきを処理していた際に見つかった焼酎「秘酔」を贈ったときは「貴重すぎて飲めません」。思いやりがうれしかったという。
菅原さんは14年に坂本さんが中咽頭(いんとう)がんを公表してからは、健康に配慮してお酒を贈ることを控えた。最後に直接、言葉を交わしたのは19年8月。住田町での被災者らとの食事会だった。一緒に寄せ書きをし、CDにサインをしてもらった。楽しい時間だった。「元気で頑張って、と握手してもらいました。私たち家族にとっての宝物です」
再会の日を待ち望んでいた菅原さんは「坂本さんには本当に励まされました。今もそばにいる、心の中に生き続けてくれていると思っています」と語った。【和田浩明】
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