浸水3日後に温泉開放 被災者を温める「笹の湯」の心遣い 福岡 - 毎日新聞

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浸水3日後に温泉開放 被災者を温める「笹の湯」の心遣い 福岡 - 毎日新聞

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被災者らに無料開放している温泉で、利用を呼び掛ける郷原事務長=福岡県久留米市田主丸町竹野で2023年7月20日午後2時32分、高芝菜穂子撮影 拡大
被災者らに無料開放している温泉で、利用を呼び掛ける郷原事務長=福岡県久留米市田主丸町竹野で2023年7月20日午後2時32分、高芝菜穂子撮影

 九州北部を襲った10日の記録的大雨で大きな被害を受けた福岡県久留米市田主丸町竹野地区にある温泉「笹の湯」が、被災者や災害ボランティアらに温泉を無料開放し、人々の心身を癒やしている。近くを流れる巨瀬川が氾濫して、温泉施設やポンプは浸水したが、運営する社会福祉法人「八千代会」のスタッフらが復旧させ、被災3日後に温泉を無料開放した。被災者に寄り添い、まちの復興を願う皆の思いと共に――。

被災しながらも「できることをやろう」

 10日に巨瀬川が氾濫し、温泉施設のロビーなどは床上浸水し、温泉に湯を送るポンプも浸水で故障。隣の障害者入所施設「田主丸一麦寮」なども床上浸水し、今も復旧作業は続く。ただ、温泉施設の浴槽や脱衣所に被害はなく、床上浸水した箇所をスタッフ総出で清掃するなどし、ポンプは業者に頼んで12日に仮復旧できた。

 「笹の湯」周辺の地域は、土石流や河川の氾濫などで多くの住宅が被災し、入浴できない被災者もいる。ポンプが仮復旧し、「自分たちにできることをやろう」と考え、13日に無料開放を始めた。

 「笹の湯」は「八千代会」が2006年から運営する日帰り温泉で、併設するレストランやパン工房も地域住民に親しまれてきた。無料開放は被災者や災害ボランティア、復旧作業の従事者が対象で、被災証明書は必要なく、居住地も問わない。入浴は正午~午後7時。当面は定休日を設けない予定だ。

 田主丸町などの被災住宅で土砂や畳・家具を搬出している県外のボランティア、橋口英雄さん(81)は何度か温泉を利用した。全国の被災地を車中泊しながら回っているといい、「1週間以上滞在するので、温泉の無料開放は助かる」と話した。

広がる支援の輪

「笹の湯」でマッサージなど心身のケアをするボランティア(右)=福岡県久留米市田主丸町竹野で2023年7月20日午後5時38分、高芝菜穂子撮影 拡大
「笹の湯」でマッサージなど心身のケアをするボランティア(右)=福岡県久留米市田主丸町竹野で2023年7月20日午後5時38分、高芝菜穂子撮影

 被災者らへの支援の輪も広がっている。田主丸町の美容室はシャンプーやコンディショナーなどを「笹の湯」に寄贈し、さっそく利用されている。また、マッサージなどで心身のケアをするボランティアも活動。中心となっている久留米市のアロマセラピスト、甲木茜さん(45)は「不安や悩み、ストレスを和らげるお手伝いができたらいいなと思う」と話す。

 「笹の湯」は13日以降、延べ700人以上が利用した。自宅の給湯器が浸水し、湯が出ないという田主丸町の女性(74)は温泉利用後にマッサージをしてもらった。「給湯器の修理には日数がかかるので、温泉が開放されてうれしかった。その上マッサージまでしていただきありがたい」と感謝する。

 「笹の湯」の郷原宏太事務長は「『被災者を支援したい』『まちを復興させたい』といういろいろな方々の思いと共に無料開放している。片付けなどの疲れを温泉で癒やしていただきたい」と語った。【高芝菜穂子】

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