コロナ禍による影響拡大で、新車の買い替えをあきらめて、今乗っているクルマを長持ちさせようとする傾向が強まりつつある。
そんなオーナーにとって気になるのは足回りのヘタリ。クルマにヤレた感じが出てきて「コトコトガタガタ」とどこからともなく音がしてきたり、「なんか乗り心地が悪くなってきた……」と感じているオーナーの方いませんか?
そこで、足回りのヘタリはどうやって見分けるのか? 新車の時のようにシャキッとした乗り心地に蘇させるにはどうすればいいのか、モータージャーナリストの高根英幸氏が解説します。
文/高根英幸
写真/Adobe Stock
【画像ギャラリー】27年連続で伸びている平均車齢&メーカー別保有台数をチェック!!
新車への買い替え需要が減っていき平均車齢が今後さらに延びていく
クルマの存在価値が見直されつつある。それはコロナ禍によって公共機関やカーシェアなどを利用した移動が感染リスクが高いことから、マイカーを利用しようという動きが増えているからだ。
クルマ好きは外出を自粛しているから、従来よりクルマを利用する頻度が減っているようだが、一般のマイカー族は、よりクルマを利用する頻度は増えているようだ。
しかし景気の先行き不安から、今後は買い替え需要は伸び悩み、クルマの平均寿命が長くなる傾向がますます強まりそうだ。
ところで、平均車齢というものをご存じだろうか。これは自動車検査登録情報協会が調査、発表しているもので、それによると2019年3月末の日本国内の乗用車の平均車齢は8.65年となり、27年連続で車齢が伸びている。
これは交通事故などで廃車になってしまったクルマも含めるため、すべてが乗り潰されている訳ではない。また比較的新しいクルマでも、海外に輸出されている中古車もあるので、実際の平均車齢はもっと長いのだ。
ちなみに国内の乗用車の登録台数はおよそ4000万台(2019年3月末現在)であるが、そのうち新規登録から8年以内のクルマは約53%。残りの約47%は8年以上は乗られていて、30%は10年以上乗られているクルマだ。
10年以上、20年未満までのクルマは約23%もあり、多くの人が大事にクルマを乗り続けていることが分かり、クルマの信頼性も高まっていることが裏付けられている。
サスペンションはどのくらい走るとヘタって来るのか?
昔のクルマは10万km走行すれば、かなりガタガタになったものだ。ダンパーは抜け切ってクルマの動きはフワフワと落ち着かないものになり、いろんなところが遊びが大きくなったり、異音が出て、そろそろ買い替えというサインをあちこちから発していた。
ここ10~15年前まであたりのクルマは装備が充実しているだけでなく、操安性も高まっているのはシャーシをしっかりと作り、高いボディ剛性を確保しているからで、これがクルマの長寿命化にも効いている。
さらに以前と比べ、ヘタッても走りへの影響が出にくいようになってきた。それは重量配分やホイールベース、サスペンションジオメトリーなどによってクルマの無駄な動きが出にくいよう、エンジニアが工夫しているからだ。それでも足回りのヘタは乗り方と手入れによって、かなり変わってくる。
インチアップして低扁平のタイヤを履いている場合、タイヤホイールの剛性も高まっている分、サスペンションの負担は増えることになる。
これはメーカー純正オプションのタイヤホイールでも同じことで、標準仕様と比べ足回りの負担は増えてしまうのは避けられない。
比較的荒れた道路を速い速度で走るような乗り方でもサスペンションの負担は大きい。
街中でゴー&ストップばかりを繰り返しているのも意外とダンパーの負担になり、走行距離は少なくてもヘタる原因になる。
車種や乗り方によって変わってくるので一概には言えないが、欧州車はダンパーなどのヘタリは少なめだがアッパーマウントやサスペンションのブッシュ類などのゴム類は比較的早く劣化が進む傾向がある。
そのためダンパーが抜けてフワフワしてしまっている状態なら、足回り全体をリフレッシュすることで、かなり乗り味がシャキッと引き締まって新車状態にかなり近づく。
国産車はゴム類の寿命が比較的長いが、ダンパーが華奢でなおかつ横力(ダンパーを曲げようと働く力)が大きいクルマが多いため、10万kmより前にダンパーだけを交換するとかなり乗り味は蘇るのだ。
ただしブッシュのヘタリは少ない反面、ボディ全体でのヘタリも進むので、15万~20万km走った車体は、ブッシュを打ち換えても新車のような乗り味にまでは戻らない場合が多い。
足回りがヘタる兆候は?
クルマのサスペンションは実に複雑で、隅々まで考えられた構造となっている。例えば、本格的なラジコンカーなどは実車同様のサスペンション構造を採用しているが、実車では構造自体は同じでも細かい部分の作りは異なる。
軽量なラジコンは、走行中に路面から受ける衝撃が少なく、なおかつ乗員がいないため、走行に支障がなければ衝撃を吸収しなくても支障ないからだ。
しかし、実車ではバネとダンパーだけでなく、様々な部分が機能することで走行中の衝撃を吸収している。
その代表的なものがブッシュとアッパーマウントだろう。ブッシュとは軸受け部分(人でいうと関節部分)に組み込まれた補強パーツで衝撃を1ヵ所に集中させずに軸受け部分全体で受け止めるようにする部品だ。
平滑性の高いサーキットを走るレーシングカーでは動きの正確性を高めるためにメタルブッシュやピロボールを使うが、量産車ではここにゴムブッシュを採用し衝撃吸収性を高めているのだ。
しかしタイヤ同様ゴムブッシュは劣化するから、長年の使用で衝撃吸収性は低下して、変形したり硬化することで衝撃や異音を発生する原因にある。
走行中、路面からの衝撃を受けた時にゴツンという異音がしたり、ゴトゴトと、以前より路面からの衝撃が伝わってくると感じるようになったら、それは足回りがヘタってきている、部品の寿命が近づいた兆候だと思っていい。
それを早く気付ければ、早めのメンテナンスで解消できるので、結果としてクルマの寿命を延ばすことにもつながる。
どこを見れば足回りがヘタっているかわかる?
足回りのヘタリをオーナーが自分で見て判断することは難しい。ダンパーからオイルが漏れていれば(それだけで車検はNG)交換の必要があると分かるが、それ以外に見て分かるのはアッパーマウントやゴムブッシュの表面に亀裂が入っているくらいで、しかも内部にまでヒビが進行してしまっているかは判断しづらい。
ゴムが硬化してしまっていても見た目には分からない。ゴムブッシュが割れたり、変形してしまっているようなら、交換時期だがクルマをリフトアップして点検しないとそれも見つけられない。
やはり重要なのは異音と衝撃だ。特定の状況の時だけ異音が出るような状況なら、足回りの劣化やヘタリを見つけられる。
例えば、片側のサスペンションが動いた時だけコトコト、ガタガタ音がするようなら、スタビリンクのボールジョイントか、アッパーマウントがダメになっている場合がある。
確かめる方法としては、普段より強めのブレーキを掛けた時にノーズダイブが大きかったり、その後の揺れ戻しが大きかったりする場合はダンパーが抜けてきている証拠だ。
走行中の振動で常にユラユラと落ち着かない場合も、ダンパーのヘタリが原因であることが多い。
ブレーキを強めにかけると異音がするのなら、足回りのボールジョイントやブッシュを疑った方がいい。
走行中にステアリングにコツコツと衝撃が伝わる、舵を切った時にコキンッと音と衝撃が来るような場合は、ステアリングのタイロッドエンドにガタが出ているかもしれない。
自分のクルマはずっと乗り続けているから、徐々にヘタっていくので気付きにくい。そんな時には同型車の別なクルマに試乗してみるのも手だ。
走行距離が異なるなど、違うコンディションのクルマを運転、あるいは助手席に同乗してみれば、自分のクルマと比べて足回りがしっかりしているか、フワフワ、ガタガタして頼りないか分かるハズだ。同じ車種のオーナー同士で試乗しあってみるのもいいだろう。
足回りの交換費用はどれくらい?
足回りをリフレッシュしようと思ったら、ダンパーとアッパーマウントは交換するのが基本だ。
ダンパーは純正品である必要はないが、自分がイメージする乗り味に仕上げたいなら、部品の選定には気を付けることだ。
どうせお金をかけるのならと、高価なアフターパーツのサスペンションキットを組み込むのもいいが、使用目的が合わなかったり、自分の好みの乗り味と違っていれば宝の持ち腐れになってしまう。
高性能なモノチューブのガスダンパーが持てはやされた時期もあったが、普通に公道を走るだけならツインチューブの低圧ガスダンパーの方がしなやかな乗り味を楽しめる場合もあるのだ。
車格や仕様によって価格は上下するが、ダンパー交換なら純正で工賃込みで10万円~。
電子制御の減衰力可変ダンパーなどが採用されている場合は、当然高くなる。また足回りをメンテナンスしたら、ホイールアライメントも取り直すのが基本だ。
例えば、自動車メーカーにOE供給を実施するダンパーメーカーであるKYBでは同社傘下のKYBエンジニアリングアンドサービスが二輪/四輪の各種ダンパーをはじめとした製品を扱っている。
KYBのアフター向けダンパー製品は、昨年発売された「NEW SR MS/MC」シリーズ(MS/MCはMORE SPORTY/COMFORTの意。下記は工賃を含まないパーツ単体の価格だ。
■ダンパー(1セット:NEW SR SPECIAL)、2/単体(前、後×2)、3/単体計
・プリウス(ZVW30):1/6万2500円、2/2万2600円、1万8600円、3/6万3800円
・アクア(NHP10):1/6万2500円、2/2万2600円、1万8600円、3/6万3800円
・86(ZN6):1/7万円、2/2万2600円、2万2000円、3/6万7200円
ブッシュ類の交換をすると新車のようになる? 費用と効果は?
ブッシュ交換をすると、クルマの動きが見違えるように落ち着いて走りがしなやかになる。ダンパーだけでは上下動しか改善できなかった動きが、細かな前後左右の動きまで落ち着くようになるからだ。
ブッシュだけを交換できるクルマと、アームごと交換しなければいけないクルマでは、当然、部品代は変わってくるが、実はブッシュだけを交換するのは工賃が嵩むので、トータルでの費用はあまり変わらないこともある。
ブッシュがあるのはアームの車体側の取り付け部分で、ハブキャリア側はボールジョイントで連結されている(車体側にも採用されている場合も)。このボールジョイントにガタが出ていれば、アーム交換の必要アリだ。
サスペンションの部品点数と各パーツの価格は、メーカーや車種によって大きな開きがある。
費用の参考までにヤリスやフィットなどのコンパクトカーの場合、アッパーマウントは4000円前後、純正ダンパーはフロント1本1万8000円前後、リアは1本5000円前後といったところ。ディーラーで交換してもらう場合は工賃を含めて12万~15万円くらいかかる。
ブッシュ類は数が多く、車種によって変わってくるため、一概には言えないが(NAロードスターは22個と多いことで有名)、フルブッシュ交換となると10万~20万円(工賃のほうが高い)くらいはかかると見ておいたほうがいいだろう。ディーラーや足回り専門ショップに一度相談してみるとよい。
ロアアームのブッシュ交換も同時にやっておくことで工賃を節約できる。車種にもよるが国産車のロアアームのフロント、リアの新品部品をディーラーで購入すると工賃込みで1万5000円~。
10万kmを超えたら間違いなく足回りのリフレッシュは効果があるし、10万kmに届かなくても10年以上経過していれば、足回りはヘタっていると思って間違いない。
車種によってはサブフレームのマウントブッシュまで換えた方がいいケースも出てくるが、エンジンや駆動系のオイル&水管理もキッチリと行ない、エンジンマウントやベルト類、点火系などもメンテナンスしてやれば、10万kmの走行距離など感じさせないくらい、しっかりした新車の乗り味が楽しめるクルマが維持できる。
愛車を長持ちさせたいなら、自分の足と同じ役割をもつクルマの足回りもリフレッシュしてみることをお薦めしたい。
【画像ギャラリー】27年連続で伸びている平均車齢&メーカー別保有台数をチェック!!
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June 02, 2020 at 07:00AM
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