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五・七・五のたった17音に、四季折々の古里の風景やその時の思いを乗せる。東松島市の集団移転地「あおい地区」の住民と、小牛田農林高校(美里町)の文芸部員が、俳句を通じた交流を11年間続けている。思い思いに句を詠み、世代を超えて共感し合う機会は、東日本大震災からの心の復興につながっている。(榎戸さくら)
3月5日、同地区の西集会所で20回目の句会が開かれ、10~90歳代の約30人が集まった。この日のお題は、春の季語「 陽炎 」と「卒業」。制限時間30分で、それぞれ1句ずつ考える。作者を伏せた状態で投票し、上位3人が発表される。
〈陽炎か/二日酔いかで/悩みます〉
揺らいだ視覚をユーモアたっぷりに詠み、同率1位に輝いたのは元漁師の雫石良一さん(87)の句。女子部員が「情景がよくわかる」と感想を言うと、「お酒飲んだことないはずだよね」と笑いが起きた。雫石さんは、震災で自宅と多くの友人を失い、ぼう然としていた時期に、初めて句会に参加した。「一度顔を出したらやみつき。高校生から元気をもらう」と豪快に笑った。
句会は2012年4月、部員の発案で、同市の仮設住宅で始まった。県在住の俳人・高野ムツオさんの指導を受けながら、生徒主体で年2回の活動を続ける。前顧問の高橋かおるさん(64)は当初、「つらい被災体験の作品が出たときに、ちゃんとまっすぐ受け止めることができるだろうか」という不安があった。
〈震災の/親友を葬りて/春の風〉などと、春の穏やかさと相反する被災の悲しみを表現する住民も、もちろんいた。
しかし、 杞憂 だった。回を重ねるにつれ、住民の表情が豊かになっていく。高校生と手をたたいて笑ったり、談笑しながら肩を組んだり。句にもだんだん、新生活の喜びがあふれていった。
〈新しき/あおいの実家/風光る〉。集団移転地に新たにできた「実家」が詠まれた句だ。
「17文字にはき出すことで気持ちが楽になる」と、地区会長の小野竹一さん(75)は、句会の意義を語る。家族や友人を亡くした心の傷は、死ぬまでなくならない。「若い皆さんの力を借りて、心が癒やされるんです」とほほえむ。
高校生にとっても世代を超えた交流は新鮮だ。高校2年の女子生徒(16)は「普段関わりのない世代の人と話せて楽しい。健康に良い食べ物を教えてもらいました」と笑顔を見せる。
これまでに生まれた句は1000を超え、10年となった昨年7月には句集も刊行した。「祖父母と孫の年の差でも、俳句から浮かび上がる情景に感動するのは一緒」と前顧問の高橋さんは言う。11年かけて築いた「句の絆」は、今後も続いていく。
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からの記事と詳細 ( 被災者と高校生句会11年 世代超え共感心の復興 東松島・あおい ... - 読売新聞オンライン )
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