「親ガチャ」「人生のネタバレ」議論に見る、隣の芝の青さ - 文春オンライン

08.15
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 人間の苦しさというのは他人と比較して自分がいかに未熟で、不幸で、無能で、不運で、イケてないかを思い知らされ、悩み、怒り、嘆き、しかし涙がこぼれないように上を向いて歩こうという言葉に凝縮されているように思うんですよ。

非モテ童貞だったあの頃

 思い返せば、それほど頑丈な身体に生まれず他人より疲れやすい体質の私は、体育会で活躍し女の子にモテモテな級友の背中を見て「ちくしょう」と思いながら、会社員のような勤め人をやっていても負けるだけだと身体を使わなくても良い投資家を目指した20代が懐かしく思います。もう30年ほど前でしょうか。

 コンプレックスというのはたくさんあって、私も長らく非モテ童貞でしたし、どうにか結婚したい、いつかは子どもを儲けたいという気持ちを掲げながらジメジメとした中高生時代を送りました。

©️iStock.com

「親ガチャ」という観点からすれば

 生まれ育った家庭も幸せな時期もあったけど親父お袋の不仲のころも長く、身体は弱い、左利きだ、小学校中学年までいまでいう識字障害を持ち満足に本も読めずに生きてきた中で言えば、少なくとも「親ガチャ」という観点からすれば「当たり」ではないかもしれません。なかなか帰ってこない親父を泣きながら待っているお袋を慰めながら受験勉強に精を出し、物心ついたあたりで本当に「こんな俺を生みやがって」と長い長い反抗期を迎えたのも当然でしたし、自分の気持ちを整理するために多くの時間を費やしたのは苦い思い出です。

 いまとなっては笑い話ですが、しばらく帰ってこない親父をお袋と待っていたら、おそらく親父の愛人であろう女性が自宅に怒鳴り込んできて、さらに「別の女にあんたの亭主が取られて悔しいと思わないの!?」と煽ってきたことがあり、後日、帰宅した親父に「親父の愛人から罵られたけど、恨み買うような遊び方しないほうがいいと思うぞ」と申し上げたところ、こっぴどく殴られました。江戸っ子だった親父は「昭和の男の甲斐性だ」と豪語していましたが、そんな親父も風船がはじけたように小さくしょぼくれた老人になって私に車椅子を押される日々が来たと思うと、いわゆる「親ガチャ」なんてそんなもんだろと感じます。

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