정총리 “재입국 장기체류 외국인 거주지 허위신고 처벌 강화” - 동아일보

정총리 “재입국 장기체류 외국인 거주지 허위신고 처벌 강화” - 동아일보

08.17
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정세균 국무총리가 29일 정부세종청사 국무조정실 영상회의실에서 열린 코로나19 중앙재난안전대책본부 회의에서 모두발언을 하고 있다. 2020.7.29 © News1
정세균 국무총리는 31일 “재입국한 장기체류 외국인에 대한 자가격리 관리가 더욱 견고해질 필요가 있다”며 “실제 거주지를 현장에서 점검하고 허위신고 처벌도 강화하겠다”고 밝혔다.

정 총리는 이날 오전 정부서울청사에서 신종 코로나바이러스 감염증(코로나19) 대응 중앙재난안전대책본부 회의를 주재하고 “정부는 입국 심사단계서부터 재입국 외국인이 신고한 국내 주소에 대해 실제 거주 여부, 자가격리 적합 여부 등을 철저히 검증하고, 신고한 주소지가 자가격리에 적절치 않다고 판단되면 시설 격리로 전환하겠다”며 이같이 말했다.

최근 국내 코로나19 감염은 지역발생보다 해외유입 중심으로 일어나고 있다. 전날 0시 기준 신규 확진자는 18명으로 지역발생 7명, 해외유입 11명이다. 지난 29일에는 48명 중 러시아 선박 선원 12명 등 해외유입이 34명에 달했다.


특히 지난 27일에는 경기 김포 소재 해외입국자 격리시설에서 무단으로 이탈한 베트남 국적 외국인 3명이 완강기를 이용해 탈출했다가 29일 경찰에 검거됐다. 정 총리는 “법무부, 행안부 등 관계부처와 지자체는 재입국 외국인의 자가격리 관리 강화에 따른 사전 안내와 추가 격리시설 확보 등 후속 조치에 만전을 기해달라”고 당부했다.
주요기사

정 총리는 휴가철을 맞아 철저한 방역도 당부했다. 그는 “한 설문조사에 따르면 올여름 휴가계획 응답자 60% 이상이 8월에 휴가를 다녀온다고 한다”며 “지금까지 국민 여러분의 인내와 적극적인 협조로 코로나19 국내 발생을 비교적 안정적으로 관리하고 있지만, 이번 휴가철이 새로운 변수가 될 우려가 있다”고 강조했다. 이어 “사람들이 일시에 몰리고 인파 간 접촉이 빈번해지면서 집단감염이 발생할 가능성이 있다”며 “이번 휴가철에 코로나19를 얼마나 잘 억제하느냐가 향후 방역 향방을 가늠하는 시험대가 될 것이다. 언제 어디에서든 방역수칙을 생활화해달라”고 당부했다. 방역당국과 지자체에도 현장 대응태세와 유관기관 협업체계를 다시 점검하라고 지시했다.

정 총리는 “이번 주에 중부와 호남 지방 중심의 집중호우로 주택과 농경지 침수, 산사태 등 피해가 발생했다”며 “특히 대전 지역 피해가 컸는데 아파트 침수 등 130여명 이재민이 발생했다”고 말했다.

그는 “대전시에서는 이재민들이 임시 대피시설에 머무는 동안 불편함이 없도록 해주시고 방역관리에도 만전을 기해달라”며 “ 중부지방에는 다음 주에도 장맛비가 예고된 만큼 관계당국은 마지막까지 피해예방을 위해 최선을 다해달라”고 주문했다.

(서울=뉴스1)


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정총리 “재입국 장기체류 외국인 거주지 허위신고 처벌 강화” - 동아일보

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【連載小説】夢は交流会で、演出家のハスミレンタロウと再会するが……。夢と現実のはざまでもがく、〝こんなはずじゃなかった〟私たちの人生。 こざわたまこ「夢のいる場所」#4-2 - カドブン

【連載小説】夢は交流会で、演出家のハスミレンタロウと再会するが……。夢と現実のはざまでもがく、〝こんなはずじゃなかった〟私たちの人生。 こざわたまこ「夢のいる場所」#4-2 - カドブン

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こざわたまこ「夢のいる場所」

※本記事は連載小説です。

>>前話を読む

 一息にグラスの残りを飲み干すと、ウーロン茶に混じった安い焼酎特有のえぐみが舌に残った。
「おかわりいかがですか?」
 スタッフに声を掛けられ、二杯目の烏龍ハイを注文する。グラスを受け取って立食コーナーへ立ち寄ったものの、入れ替えのタイミングなのかオードブルはほとんどなくなっていて、干からびたラザニアの皮とレタスの割合が異様に多いシーザーサラダをもしゃもしゃ食べ続けるはめになった。
 ふと顔を上げると、私達のテーブルからは少し離れた場所に、見慣れた後ろ姿を見つけた。今日子だ。スタッフを中心に構成されたテーブルで、数人の参加者たちと楽しそうに歓談している。
 声をかける機会をうかがっていると、今日子も私に気づいたらしく、それまで会話を交わしていた相手に頭を下げ、小走りでこちらに近づいてきた。今日子、と手をあげたものの、その続きがなかなか頭に浮かばない。
 何を言おうか迷っていると、今日子はそんな私を気遣ってか、自分から口を開いた。
「結局来ちゃった」
 そう言って、小さく肩をすくめる。今日子とは、例の喫茶店で会って以来だ。ここに来るかどうか、ずっと悩んでいたようだけど、結局参加することに決めたらしい。
「……大丈夫?」
 思い切ってそう聞いてみたものの、何が、と切り返され、黙り込んでしまう。大丈夫、というのは、今日子自身のこともそうだし、翔太との関係のことだってそうだ。本当は、今日子に聞きたいことはたくさんあった。
 翔太はまだ、会場に来ていない。仕事で遅れる、と事前に連絡が入っていた。本当だろうか。でも、だからこそ今日子は来られたのかもしれない。そんな風にいくつかの疑問が頭に浮かんだけど、結局それらの核心をつくことはできず、私は代わりに、ちゃんは、と聞いてみた。今日子は気まずそうな表情を浮かべ、静かに首を振った。
 萌々ちゃんは翔太とやり合って稽古場を飛び出して以来、私達の前に姿を現していない。萌々ちゃんの友達が間に入ってくれているようだけど、そもそも連絡が取れないらしい。主役がいない以上、稽古はストップすることになる。しばらくは代役でしのぐことになりそうだけど、それも限界があるだろう。そもそも、本番までは後二ヶ月もないのだ。全員の頭に、降板、という言葉が浮かんではいるものの、誰もそれを口に出せずにいた。
 なにも言えず黙り込んだ私を見て、そっちこそ大丈夫なの、と今日子が首をかしげた。
「ハスミさん」
「え?」
「久しぶりなんでしょ? 前にゆめがアモックの舞台に出て以来?」
 ああ、まあ、と答えを濁すと、駄目じゃん、ぼんやりしてちゃ、と眉をひそめる。
「また夢が使ってもらえるように、ちゃんと挨拶しなきゃ」
 すると今日子が突然、そうだ、と言って、ぐいと私の腕をつかんだ。
「あたし、一緒に行ってあげようか。そしたら──」
 反射的に、今日子の手を振り払っていた。やめて。そう口に出した直後、はっとして、ごめん、と小さく謝る。今日子は傷ついたというよりも、不思議そうな顔していた。
「夢がいいなら、別にいいけど……」
 それ以上会話は弾まず、なんとなく気まずい空気が流れる。
りゆうせい君、さすがだね」
 二人でなんとはなしに会場を眺めていると、今日子がふいにそんなことを呟いた。あそこ、と言われて首を回すと、奥のテーブルで、誰かに向かってオーバーリアクションを取る劉生君の姿が目に入った。彼は持ち前のコミュニケーション能力を発揮して、すっかりこの場にんでいるらしい。そのテーブルにはかなり有名な劇団の看板役者や演出家もいたけど、まったく物じする様子がない。彼らしいといえば、彼らしかった。
「あ」
 劉生君の話し相手が誰なのかに気づき、思わず声が出た。その人は、わざとらしいくらいの営業用スマイルを顔に貼り付け、絶えず周囲に話題を振りまいている。
 彼女はこの会場で、ハスミレンタロウの次に「演劇ぶっく」と「ステージナタリー」に載った回数が多く、ハスミレンタロウの次に集客力が高く、ハスミレンタロウの次に演劇ライターの知り合いが多い。つまり、この空間における二番目のきようしやだ。誰もがつながりを求めて、彼女の元へと集まってくる。甘い樹液に群がるありのように。あるいは、ゆう灯のばゆい光に魅せられ、身を焦がそうとする羽虫のように。
ほうじようさん、だっけ」
「え?」
 あの人、と言われて、驚いて振り返る。
「そうだよね、あれ」
「……うん、多分」
 は今日、珍しく黒のオールインワンに身を包んでいる。その代わりなのかなんなのか、唇にはあかいリップをつけていた。私がつけても、おてもやんかおたふくになってしまいそうなそれは、派手な顔立ちの莉花にはよく似合っている。
『赤が好きなの。私に似合うから。私は、私に似合うものだけが好き。そうじゃないものは、いらない。そんなもの、いくらもらったって無価値なの。夢もそう思うでしょう?』
 いつだったか、莉花はそんなことを語っていた。莉花のよく通る声が、鮮明に頭によみがえった。莉花の声は、いつだって芝居がかっている。それが記憶のせいなのか、元々そうだったのか、く思い出せない。
「今日、オーディションだったんでしょ?」
 今日子がふいに、そんなことを聞いてきた。
「え」
 予期せぬ質問に、どうしたらいいかわからず固まってしまった。なんで今日子がそれを知っているんだろう。誰にも言っていないはずなのに。私がよほどいぶかし気な顔をしていたせいだろうか。自分でそう言ったんじゃん、待ち合わせに誘った時、と言って今日子が私を肘で小突いた。そこまで言われて、ようやく思い出した。
 今日子の言う通り、私は今日の昼にひとつオーディションを済ませて来た。先月、こやなぎさんとのミーティングの終わりに告げられた、舞台のオーディションだった。私にとっては、最後のチャンスといってもいい。演劇界では一定の評価を得ている、著名な女性演出家の新作公演。その演出家は、古典戯曲を新しい解釈で蘇らせることで有名だった。この世界ではかなりの古株で、うまくいけばキャリアアップの足がかりとなる。
 本当は、時間を調整すれば十分今日子が提案した待ち合わせの時間には間に合ったし、一緒にここに来ることもできたけど、オーディションの後は誰とも会いたくなかった。なんならうそをついてもよかったのに、とつに本当のことを伝えてしまった。私はどうして、こういう時だけうまく演技ができないのだろう。
「うまくいった?」
 興味津々という面持ちで今日子が聞いてくる。まあまあかな、とはぐらかして答えると、大丈夫だって、絶対受かってるよ、と私の肩をたたき、力強くほほんだ。
「あたしからすれば、オーディション受けられるだけでもすごいし。あたしには無理だもん、そんなの」
 どうして今日に限って、この子の「あたしには無理だもん」にこんなに腹が立つんだろう。そうでしょうね、あんたには。でも、私は違う。だって、私は女優だから。オーディションを受けるだけじゃ、何にもならない。何も満たされない。思わずそう言い返しそうになり、でもやっぱりそれは、声にはならなかった。すると突然、今日子が、あ、と声を上げた。
「翔太だ」
 今日子は、ごめん、と断りを入れてからスマホを耳に当て、その電話に出た。会話の内容まではわからないけど、今日子の話しぶりは至って明るく、朗らかで、とても別れの危機にひんしている恋人同士のやり取りとは思えない。
「来たって。入り口で迷ってるみたいだから、ちょっと迎えに行ってくる」
 そう言ってスマホをしまい、出口の方へ歩き出そうとする。次の瞬間、今日子は急に立ち止まってこちらを振り返った。
「翔太、喜ぶんじゃないかな」
「え?」
「ハスミさんのこと。あいつ、すごいファンでしょ? アモックの。今日会えるって知ったら、びっくりすると思う。ねえ夢、やっぱり挨拶しにいっちゃだめ? それで、ファンですって翔太のことを紹介とか──」
「……それって、誰のため?」
 思わず、そんな言葉が口からこぼれ出た。今日子がきょとんとした顔で私の顔を見つめていた。
「今日子って、もうちょっと自分の意志とかないの?」
 今更翔太に尽くしたところで、どうせ別れちゃうかもしれないのに。そう口に出してから、はっとする。なんで私、こんなことを。
「……あの、ごめん。そういう意味じゃなくて──」
「それって、いけないこと?」
「え」
「自分のためじゃなく、誰かのために何かしてあげたいって、そんなにいけないこと?」
 どうせ、別れちゃうとしても。その言葉に顔を上げると、今日子はくるりときびすを返し、私に背を向けて会場を去って行った。

 ドアを開けると、空調機から流れ出てくる冷たい空気と、いがらっぽい煙草たばこの煙がいっしょくたになって、顔に吹き付けるのがわかった。決して心地いい香りじゃないのに、どうしてか少しだけ心が安らぐ。
 喫煙室には、すでに何人かの先客がいた。全員、顔見知りでないことにほっとする。その方が都合がいい。彼らは気を遣ってくれたのか、私に気づくと顔を見合わせて、ぞろぞろと喫煙室を出ていった。悪いことをしてしまったかもしれないと思いつつ、そのまま床にしゃがみこみ、ゆっくりと息を吐いた。空調のせいか、ここは会場よりも少し温度が低い。人の熱気で酸欠気味になっていた脳に、少しずつ酸素が送り込まれていく。誰もいなくなった途端、この場所の静かさが際立ち、耳を澄ますと意外とはっきり会場の声が漏れ聞こえてくるのがわかった。
 聞こえたのは、薄い壁越しにたむろっているらしい若い男女の会話だった。きっと同じ劇団の仲間だろう。話の内容から、彼らもまた社会人劇団らしい、ということがわかった。
 いまひとつ、この集まりに馴染めていないらしい。そのうちの一人が、うわ、という悲鳴を上げた。
「まただよ。公演中止」
「え、今年何回目? てか、理由は?」
「脚本が間に合わなかったんだって」
「前のもそんなんじゃなかったですっけ」
「プロ意識なさすぎなんだよな、あいつら」
「その枠、私達に欲しいですよね」
 あー、いつかOFFOFFとかでやってみてえ、と誰かが言って、また他の誰かがそれを、一生無理だろ、と笑っていた。
「じゃあせめて、三十までやろうぜ。それ目標で」
 ハードル下げすぎだろ、と一斉にツッコミが入る。そんなの、続けてりゃいつかは達成できるじゃん。
 それを聞いて、笑うよりも先になんだか泣きたいような気持ちになった。いつかの私達みたいなことを言っている。かつては私達もあんな風に、ごうまんで無防備で自信過剰で、そしてあんな風に未来への希望に満ちていたんだろうか。彼らは、ただ続けることの難しさにまだ気づいていない。そしてそれは、彼らにとっては幸せなことなのかもしれない、とも思った。
「『……でも、仕方がないわ。生きていかなければ』」
 思わず、頭に浮かんだそれを呟く。今日、オーディション会場で渡された台本の台詞だ。世界的に有名なロシアの劇作家が描いた代表作。その、ラストシーンだ。それを口にするうち、さっきまでぼんやりとかすみがかったようになっていた昼の記憶が少しずつ蘇ってくるのがわかった。そうだ、次の台詞は──。
「『……きていきましょうよ。長い、はてしないその日その日を、いつ明けるとも知れない夜また夜を、じっと生き通していきましょうね。運命がわたしたちにくだす試みを、辛抱づよく、じっとこらえて行きましょうね──』」

 結論から言って、オーディションは最悪だった。
「はい、ありがとう。では、次の人」
 名前を呼ばれてオーディション会場に足を踏み入れると、演出家は笑顔で私を出迎えてくれた。
「ええと、がわ夢さん」
「はい」
「ではどうぞ、お座りください。リラックスして、答えてくださいね」
 その演出家と、こうしてじかに会うのは初めてだった。前からきれいな人だとは思っていたけど、間近で見ると五十代とは思えないほど肌に張りがあり、爪の先までメンテナンスが行き届いている。後ろにひとつに縛った髪の毛には清潔感があり、一本の白髪も見当たらない。昔は舞台女優として活躍していた、というのもうなずける。もっときつい感じを予想していたけど、イメージしていたよりもずっとやわらかな印象だった。
 オーディション自体は滞りなく進行していった。数人の受験者とともに、本読みやグループワークをこなし、最後に軽い個人面談を受けることになった。といっても、内容は雑談に近い。最近出演した作品は。どんな舞台を好んで観ているか。演技どうこうというよりは、コミュニケーション能力を測るものだろうと思われた。
 正直、そこまで調子はよかった。泣いても笑っても、これで最後だと覚悟を決めていたおかげだろうか。いつになく集中力は続いていて、変に気張ることもなく、肩の力をぬいてオーディションに挑むことができた。
 その勢いもあってか、演出家の質問に、まるでラリーを返すようによどみなく答えることができた。そういうことが、ごくまれにあるのだ。面談は、きわめて和やかに進んでいった。いくつかの問答の末、最後にこんなことを聞かれた。
「演劇を始めたきっかけを教えてもらえますか」
 そこで、私は話した。自分がいかにして、演劇と出会ったのか。自分がどれだけ平凡で、つまらない人間か。初めて舞台に立った時も、緊張ばかりが先に立ち、自分がメタモルフォーゼする感覚も、役にひようする感覚も一切なかったこと。ただ、台詞を読んでいる。それだけだ。自分が役者に向いている、なんて一度も思ったことがない。だからこそ、一度は演劇をやめようとしていたこと。なのにどういうわけか、今こうして自分がここに立っている、その不可思議さについて。
「だから、私は──」
 その時だった。ぱん、と手を叩く音がする。音の主が目の前の演出家だということに気づくのに、少し時間がかかった。
「はい、もう大丈夫です」
 まだ話の途中だというのに、唐突に打ち切られた。突然の終了通告に、さすがに不穏なものを感じて手を挙げる。なのに、演出家は大丈夫です、と繰り返すだけで聞く耳を持ってくれない。
「あの、でも……」
「よくわかりました。よ」
 今までとなんら変わりない、穏やかな口調でそう告げると、演出家はきっぱりと言い切った。
「でもそれは演技ではなくて、噓です」
 意味がわからず、ぽかんと口を開ける。
「あなたが演劇を求めているのではなく、周囲があなたに演劇を求めている、でしたっけ。たしかさっき、あなたはそう言いましたけど。そんなことはないと思いますよ。あなたがそう思い込んでいるだけで」
「は?」
 思わず不満そうな声を漏らした私を見て、演出家の隣に座っていた助演らしき男性が眉をひそめる。慌てて口をつぐんだものの、もう遅い。当の演出家本人は、それを気に留める様子すら見せなかった。私にかまうことなく話し続ける。
「あなたが今欲しがっているものは、多分もう二度と手に入りませんよ。というかそもそも、一度も手に入ったことなんてなかった」
 さっきから、何を言われているのかわからない。一文字も。
「それはもうすでに失われてしまったんです。あなたも気づいているでしょう? あなた達が才能とかギフトとか呼んでいるものは、そういう性質のものです」
 まるで、最初からすべてが決まっていたかのようなものの言い方だった。世界は元からこういう形でこんな風にできていて、あなたが手を出す余地はどこにもありませんよ、と言われたような。
「……じゃあ私はこれから、どうしたらいいんですか」
「自分で考えたらどうでしょう。みんなそうしてますよ、あなた以外は」
 突き放すような口調で、その人は言う。
「あなた、役者である前に一人の大人でしょう」
 何も言い返せず、その場に立ち尽くすことしかできなかった。
「はいもういいです、ありがとう。どうぞ、お帰りください」
 それを最後に、ほとんど強制的に部屋から追い出された。バタンと音を立ててオーディション会場のドアが閉まる。それを聞いた瞬間、未来へと続く扉が永久に閉ざされたような気がした。ひとつだけわかったことがある。私は、しくじった。最後のチャンスを無駄にしたのだ。多分もう二度と取り返せない。
「『……やがてその時が来たら、素直に死んで行きましょうね』」
 そこにあったはずのチャンスは、跡形もなく私の元から消え去ってしまった。
「『あの世へ行ったら、どんなに私たちが苦しかったか、どんなに涙を流したか、どんなにつらい一生を送って来たか、それを残らず申上げましょうね』」
 自分の声が喫煙室に設置された灰皿に落ちて、ふわりと灰が舞うのがわかった。
「『すると神さまは、まあ気の毒に、と思ってくださる。その時こそ伯父さん、ねえ伯父さん、あなたにも私にも、明るい、すばらしい、なんとも言えない生活がひらけて、まあ嬉しい! と、思わず声をあげるのよ』」
 こんな風に、言えたらよかった。あの演出家の前で。
「『そして現在の不仕合わせな暮らしを、なつかしく、ほほえましく振返って、私たち──ほっと息がつけるんだわ。わたし、ほんとにそう思うの、伯父さん。心底から、燃えるように、焼けつくように、私そう思うの』」
 そこで間を置いて、自分の呼吸が整うのを待つ。
「『ほっと息がつけるんだわ』」
 とその時、パチパチパチパチ、と誰かが手を叩く音が聞こえた。その声に、はっとして顔を上げる。
「すごーい。ちょっと聞き入っちゃった」
 ぜんとして、その人の顔を見つめることしかできなかった。
「でも、なんでチェーホフ?」
「……今日、オーディションで読んだから」
 その答えで納得したのか、なるほど、というように小さく頷き、で? と首を傾げた。
「どういう意味」
「だからその、オーディション。受かりそう? それとも落ちそう?」
 ずけずけと、遠慮のない口調で聞いてくる。関係ないでしょ、と答えると、あきれたように肩を竦め、それ以上深追いをしようとはしなかった。代わりに、なんでこんなとこいるのよ、と口をとがらせる。
「探しちゃったじゃん」
「探してなんて、私」
 言い返そうとしたそばから、すぐに遮られた。私の反論なんて、最初から期待していないみたいに。
「なんだかんだ元気そうじゃん。ていうか、なんでずっとこそこそ隠れてんの?」
「隠れてなんか」
「噓だよ」
 いつもこうだ。他者を断罪しようとする時、この人はこれ以上ないほど確信に満ちた口調で自分の言葉を口にする。
「この前、公演観に来てくれたくせに。全然声かけてくれなかったじゃない」
 それは、と言いかけ、口をつぐむ。
「あたしが気づいてないとでも思った?」
 そう言って、真っ赤な唇を笑みのかたちにゆがめた。
「……莉花」
 その声が、まるで自分のものじゃないように聞こえた。随分長い間、その名前を呼んでいなかったから。莉花は喫煙室のドアに寄りかかり、じっとこちらを見据えていた。その目に浮かんでいるのは、嫌悪だろうか、それとも。私が莉花の名前を口にした瞬間、きれいな弓なりの眉が、かすかにけいれんしたような気がした。

#4-3へつづく
◎第 4 回全文は「カドブンノベル」2020年8月号でお楽しみいただけます!



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未来投資会議、コロナ後の社会像議論 尾身氏ら加入後初開催 - 日本経済新聞

未来投資会議、コロナ後の社会像議論 尾身氏ら加入後初開催 - 日本経済新聞

14.17

政府は30日、未来投資会議(議長・安倍晋三首相)を開催し、新型コロナウイルス感染症の収束後の社会像・国家像について議論した。テレワークの障壁解消に向けた仕事のやり方のさらなる見直しや、バーチャル株主総会の検討、次世代通信規格である5Gの早期の全国展開、5Gの次世代にあたる6Gの推進などが検討項目に挙がった。今回から新たに茂木敏充外相のほか、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長ら9人が加わった。

〔日経QUICKニュース(NQN)〕

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地震を過大評価か、緊急地震速報で震度1以上観測されず - TBS News

地震を過大評価か、緊急地震速報で震度1以上観測されず - TBS News

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 気象庁は30日午前9時半過ぎ、千葉県南方沖で地震が発生し、関東地方や東海地方を中心とする広い範囲で強い揺れが予想されるとして、緊急地震速報を発表しましたが、実際の震源は鳥島近海で、この地震による震度1以上の揺れは観測されませんでした。

 気象庁は午前9時36分ごろに千葉県南方沖で地震があり、この地震で、震度4以上の揺れに見舞われる可能性があるとして、関東地方や東海地方、伊豆諸島、山梨県、長野県、福島県、新潟県の広い範囲に緊急地震速報を発表しました。しかしその後、この地震による震度1以上の揺れは観測されませんでした。

 気象庁によりますと、震源は千葉県南方沖ではなく鳥島近海で、地震の規模を示すマグニチュードも、当初、緊急地震速報を発表した時点で予想された7.3ではなく、二回り小さい5.8と推定され、津波の心配はなくなりました。地震を過大評価した形で、気象庁は現在、原因を調査しています。

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早急議論に警鐘 「安楽死」めぐり専門家 - 時事通信ニュース

早急議論に警鐘 「安楽死」めぐり専門家 - 時事通信ニュース

13.17

2020年07月30日07時11分

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)の女性患者が死亡した嘱託殺人事件をめぐっては、安楽死や尊厳死の議論を求める意見も出ているが、臨床倫理や死生学が専門の清水哲郎岩手保健医療大学長は「今回のケースは安楽死とは言えず、それを基に早急な議論をすることは危険だ」と警鐘を鳴らす。

<医師嘱託殺人 関連ニュース>

 患者の耐え難い肉体的苦痛や死期の切迫、明確な意思表示などが「安楽死」の要件とされるが、清水氏は「女性は死を望んでいたかもしれないが、他の要件は該当しない。手を尽くせば生きる意欲を取り戻したかもしれない」と指摘。「『つらいなら楽に』と安易に死を勧め、患者を助けたと思っているなら大間違いだ」と逮捕された医師らを批判する。
 その上で、「こういう状態になれば認められる」という安楽死の条件を定めると、それでも生きようとする人には「そろそろ死ぬべきではないか」という社会的圧力になるとし、より慎重な議論を要望。「肉体的苦痛を緩和する医療や、意思疎通を助ける技術は相当進歩しており、精神的な絶望のケアがより課題になる。患者の心情や価値観をどうくみ取るかが重要では」と訴えた。

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