「一人一人の復興に寄り添う」被災者支援10年の団体 東日本大震災 - 産経ニュース

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東日本大震災による関西への県外避難者の支援を続けてきた「まるっと西日本」の古部真由美さん(左)と避難者の女性=2月24日、大阪府内(南雲都撮影)
東日本大震災による関西への県外避難者の支援を続けてきた「まるっと西日本」の古部真由美さん(左)と避難者の女性=2月24日、大阪府内(南雲都撮影)
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 東日本大震災から10年となる今年、被災地から関西に避難した人の支援に取り組む団体「まるっと西日本」(大阪市中央区)の活動も10年を迎える。避難者同士がつながれる場を作ろうと、交流会や相談対応のほか、月1回のペースで情報誌も発行。「これからも一人一人の復興の歩みに寄り添いたい」と、6日には大阪市内で追悼の集まりを開催予定だ。(地主明世)

 「私の『復興』はまだ。いつまで避難者なんだろう、と思うこともあります」

 2月下旬。福島市内から3人の子供を連れて府内に母子避難した女性(45)の言葉に、「まるっと」の代表世話人、古部(ふるべ)真由美さん(48)がじっと耳を傾けていた。

 女性は福島第1原発の事故を受けて避難後、福島に残っていた夫と離婚。正社員の職を見つけたが体調を崩して離職し、今は求職中という。「避難した人が求める支援の内容やタイミングはそれぞれ違う。長く支えてもらえるのはありがたい」と話した。

 古部さん自身も放射能の影響を懸念し、茨城県から出身地の大阪に避難してきた県外避難者だ。不安な中、避難者の交流会などに参加したとき、同じ避難者と話すと安心感を得られた。一方、自分よりも困難な状況に陥っている人を見て「県外避難者への支援は忘れられがちだ」と、震災8カ月後の平成23年11月、津波や地震、原発事故などさまざまな背景を持った避難者を「まるごと受け入れて支える」という意味を込めて支援団体「まるっと西日本」を立ち上げた。

 震災直後は全国の自治体やボランティアがさまざまな支援に乗り出したが、被災者が自分に必要な情報を入手するのは困難だった。そこで、古部さんは自治体などに自ら出向いて情報を集め、メールマガジンやチラシ、情報誌を発行。支援制度のほか、避難者の声を紹介する情報誌は現在も、関西の千世帯以上に無料配布されている。

 避難者同士の交流会や電話相談のほか、戸別訪問なども実施。年間200人近くの安否確認をしたときもある。地道な活動が評価され、29年には「第43回産経市民の社会福祉賞」(産経新聞厚生文化事業団主催)を受賞した。

 母子避難で「頼る人がいない」という悩みや、経済面での不安、子供の不登校…など、避難者の相談内容はさまざまだという。行政機関につないだり、子供の進路相談に応じたり、ごみが散乱した自宅の掃除を手伝ったことも。同じ避難者として、思いを共有しながら支援を続けてきた。

 震災から10年という時間が経過しても、支援のニーズは変わっていないという。福島県からのある避難者が「避難を決めたのは自分なので『助けて』とはいえなかった」と打ち明けたこともあったといい、「口では『大丈夫』と言っても、本当に大丈夫な人はめったにいなかった」と古部さん。「公的な支援が切れた後こそ、ボランティアの出番。避難した人が孤立したり自死に至らないよう、見守る必要がある」と強調する。

 復興庁によると、関西2府4県で避難生活を送る人は今も1986人(2月8日現在)いる。「まるっと」には現在も週に2、3人から相談のメールや電話があり、大半は一人親世帯だ。10年たっても情報誌の読者からの反響は大きく、交流会やイベントも途切れたことはない。古部さんは「関西の人の温かい協力があったから、続けてこられた面も大きい。これからも求められる限り活動していきたい」と力を込めた。

 情報誌は各家庭への郵送も可能。問い合わせはまるっと西日本(080・4484・0298)。

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