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英EU、通商合意も貿易一変 税関申告必須…金融パスポート喪失も - SankeiBiz
英国と欧州連合(EU)が先月下旬に通商協定で合意し、懸念されていた最悪の混乱がある程度緩和されることになった。ただ、通商協定はEU加盟国の地位を完全に代替するものではない。英国はもはやEU関税同盟と単一市場の一部ではないため、英国とEUの間の貿易は以前ほどスムーズにはいかなくなる。企業は新たな書類手続きが義務付けられ、製品が国境で留め置かれるリスクも生じる。金融企業はEU全域でサービスを提供できる「パスポート」を失う。消費者にとっては、互いの地域で生活し、滞在する権利が縮小する。ペットの犬を連れて渡航することも煩雑になる。
渋滞で生鮮腐る恐れ
2021年の幕開けとともに両者の通商関係にはいくつもの変化が生じた。
最も象徴的な変化が税関での手続きだ。EUに輸出する企業は、税関申告書の提出が必要になる。製品を英国のドーバーからフランスのカレーに運ぶには、トラック運転手は適切な書類手続きを済ませていることを示す政府発行の許可証を提示しなければならない。
ジャストインタイムの生産体制に依存する自動車や航空宇宙などのメーカーは、部品が国境で足止めされ到着が遅れる恐れがあるため、在庫を膨らませている。食品メーカーは生鮮食品が渋滞にはまっている間に腐るかもしれないというリスクを背負うことになる。
英国からEUに向かうモノは新年から税関審査が行われることになったが、英国はEUからの輸入製品に対する完全な審査を7月まで遅らせた。それでも企業は貿易取引の記録を取り続け、7月に税関に提出する必要がある。
一方、通商合意とは関係なく、英国を拠点とする金融企業はEU全域でサービスを提供できる「パスポート」を失い、従業員の移転やEU域内での事業強化を強いられる。EU域内の顧客にアクセスするには、EUの40分野に及ぶ規則と英国の規則が同等だと見なされることが必要で、今のところそれは実現していない。そのような認定が得られるかは定かではなく、得られたとしてもEUは短期間の通知で取り消すことができる。
サービス分野にも大きな変化が生じた。英国経済の80%を占め、会計監査や建築、コンサルティングなどを含むサービス業は、新たな制限に直面する。取引を継続するにはEU域内に事業拠点を設立することが必要になる場合があるほか、専門的な資格についてそれぞれの国で承認を得なければならない可能性がある。
製品には2つの承認
このほか、規格基準の面でも、企業は製品について2つの異なる規格や規則を満たさなければならなくなり、英国とEUの両方の市場で販売するにはそれぞれの当局から承認を得る必要が生じた。例えば、英国での販売には1月1日からEUのCEマークに代わり、新たな独自のUKCAマーク取得が一部の製品に義務付けられた。
移民の扱いも変化した。英国とEUの間の自由な移動は終了。英国は移民に対しポイント制の新規則を導入する計画で、外国人は就労目的で英国に入国する前に一定の基準を満たしていることを証明する必要がある。この基準には英語が話せ、雇用契約を得ていること、年2万480ポンド(約290万円)以上の給与などが含まれる。
嗜好(しこう)品の扱いも変化した。EUに向かう英国人旅行者は、港や空港の免税店での買い物に免税が適用されるようになったが、EUから戻る際にはアルコールやたばこなどの製品を無制限には持ち込めない。たばこ200本、ワイン18リットル、蒸留酒4リットルまでが非課税で、超過分にはそれぞれの関税がかかる。(ブルームバーグ Joe Mayes)
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