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被災者に安らぎを 希望を一針に込め 刺しゅうで千手観音菩薩 宮城 - 毎日新聞 - 毎日新聞
taritkar.blogspot.com東日本大震災の被災者と交流し支援を続けてきた刺しゅう家で一般社団法人「三月のひまわり」代表の星野真弓さん(49)=東京都=が、被災者の心の安らぎをテーマにした作品「レジリエンス~千手観音菩薩(ぼさつ)」を制作し、宮城県石巻市のカフェバーで30日まで展示している。レジリエンスは回復力、復元力といった意味で、星野さんは「作品が誰かにとって光になれたら」と願う。
22万マス、1年がかりで
星野さんは震災後、石巻市の仮設住宅の集会所で刺しゅう教室を開いて被災者同士が思いを分かち合う場を作る活動を始め、その後も震災を主題にした絵本の朗読会を開くなど伝承活動に取り組んできた。一方、制作した刺しゅう画「桜」は国連欧州本部(ジュネーブ)に展示されるなど、作品は高い評価を受けている。
その星野さんが、震災10年を迎えた被災地の復興を願い選んだのが千手観音菩薩。中央に鎮座する観音菩薩が後光の差すように金色に輝く。「『影なくして光はない』という思いから、光を表現するために暗闇を10種類の黒で表現した」という。自らも、被災地で求められる役割が変化する中で「自分に何ができるのか」と葛藤してきたが「1本の手にとらわれてはならない。1000通りの思いやり、優しさがある」との思いを観音菩薩の無数の手に込め、約1年かけ、クロスステッチの技法で、計22万マスを1本の針だけで運び切った。
初披露は、南三陸町の南三陸ホテル観洋で企画した「いのち伝承フォーラム『忘れない 伝えていく』」。今後も伝承活動を続けていくとの宣言も込めて開いたという。会場に盲導犬トラヴィスと訪れていた石巻市の若山崇さん(52)は星野さんの勧めで特別に直接触り鑑賞した。菩薩の顔をそっとなで「目元に触れた時、優しさの中に『絶対に守る』と強い気持ちを感じ、柔和な目に感じた」と若山さん。震災前から視力が低下する難病を患い、震災後に視力を失ったが、トラヴィスとともに同じ障害を抱える仲間同士が支え合う活動を続けてきた。「自分にとっては震災からまだ10年と言うのが実感。それでも、作品から芯の強い勇気をもらい、これからの10年が見えてくる気がした」と話した。
石巻で展示中
作品は石巻市中央の「レジリエンスバー」で30日まで展示中。星野さんは「この作品とともに全国、海外に出向き、命の大切さを伝え続けていけたら」と話している。【百武信幸】
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