17年間頭を”ポン!”し続けた「親以上の存在」 木村敬一をメダルに導くタッパー寺西真人さん<パラ・男子競泳> - 東京新聞

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 17年間、ひたすら頭をポンとたたいてくれた「先生」と銀メダルを手にした。1日に行われた東京パラリンピック、競泳の男子100メートル平泳ぎ(視覚障害SB11)で2位に入った木村敬一(30)=東京ガス=は「勲章」の手触りを確かめ、「メダルを取れて幸せ」とかみしめた。傍らでタッパーの寺西真人さん(62)が目を細めて見守った。

8月30日の男子200メートル個人メドレー決勝で、木村敬一(右下)にタッピングバーを使い、ターンのタイミングを伝える寺西真人さん(左から2人目)=いずれも東京アクアティクスセンターで

8月30日の男子200メートル個人メドレー決勝で、木村敬一(右下)にタッピングバーを使い、ターンのタイミングを伝える寺西真人さん(左から2人目)=いずれも東京アクアティクスセンターで

 寺西さんは筑波大付属視覚特別支援学校(東京都文京区)の元教諭で、木村が中学部2年のときにパラ競泳へと導いた。以来、ターンやゴールで壁が近いことを棒でたたいて知らせるタッパーを担ってきた。

 海外では、壁からの距離で一律にタイミングを決める国が多い中、日本は築き上げたあうんの呼吸でロスを最低限に抑える。木村選手は寺西さんとのコンビに「レースを成立させるためにいてもらわないと困る」と全幅の信頼を寄せる。

競泳男子100メートル平泳ぎ決勝のレースを終えた木村敬一選手(下)と、タッパーの寺西真人さん

競泳男子100メートル平泳ぎ決勝のレースを終えた木村敬一選手(下)と、タッパーの寺西真人さん

 「親以上に一緒に過ごしてきた」。昨年3月、コロナ禍で拠点の米国から帰国したときに迎えに来てくれたのも寺西さん。今年春までの約10カ月間は、東京の味の素ナショナルトレーニングセンターに泊まり込んで練習を共にした。大会開催には賛否の声。「スポーツって必要なのかな」「自分が金メダルを取らないで、誰が取るんだ」。入り乱れる思いも、そのまま受け止めてくれた。寺西さんにとっては、長さ2メートルの棒を手にプールサイドを行ったり来たりするのも年齢的に苦しい。0.1秒の判断ミスが結果を左右するからこそ、引き際も考える。

9月1日の男子100メートル平泳ぎで銀メダルを獲得した木村敬一

9月1日の男子100メートル平泳ぎで銀メダルを獲得した木村敬一

 木村は前回大会までに銀3個、銅3個のメダルを獲得。東京でも銀を1つ取った。色は確認できない。金のときだけ、国歌で勝利を実感できる。「木村に君が代を聞かせたい」。寺西さんは願う。3日夜、最後のレース、100メートルバタフライ(視覚障害S11)の決勝が控える。二人三脚の集大成を、笑顔で終えたい。 (兼村優希)

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