<社説>文通費改正見送り 透明化の上で必要性問え - 琉球新報デジタル

04.15
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 政治家と国民の意識がこれほど懸け離れているケースはないだろう。国会議員に支給される月100万円の文書通信交通滞在費(文通費)を巡る国会でのやりとりだ。

 使途公開を含めた法改正を求める野党に対し、自民・公明の与党は日割り支給を先行する案を主張した。結果として与野党が一致できず、今国会の改正は見送った。
 文通費がどのように使われたか、領収書提出の義務付けなど透明化は不可欠だ。国民には知る権利がある。同時に支給を定めた法が成立した1947年当時に比べ、文書・通信・滞在にかかる費用、手段は格段の進歩を遂げている。現在も100万円の費用が妥当か、文通費の存在そのものを問う契機にすべきだ。
 文通費の在り方に問題提起したのは日本維新の会だ。10月の総選挙で当選した議員が在職1日で満額を受け取ったことを問題視した。
 2009年にも同様の指摘が国民から挙がった。同年8月30日の総選挙で当選した議員に、8月の在職2日で歳費(給与)と文通費合わせ満額の230万円が支給された。このときは翌10年の臨時国会で歳費の一部自主返納を可能にする法が成立した。ところが文通費は議員の不満が強く返納対象から除外した。
 税金もかからず使途も公開されない文通費は議員の「第2の財布」といわれる。元衆院議員で弁護士の若狭勝氏は朝日新聞の取材に「(文通費を)子どもの学費に使っている人もいた」と明かしている。
 私的流用は論外だが、使途の公開や返納を渋る感覚が理解できない。文通費の原資が税金であることを国会議員は理解しているのか。
 少なくとも今国会で日割り支給を実現し、使途公開など明確なルールづくりに道を開くべきだった。今国会の結末に対し、与野党、特に自・公は、国民が「決められない政治」と冷たい視線を浴びせていることを理解すべきだ。
 そもそも文通費の支給が決まった47年当時、議員会館も整備されず地方出身議員が東京に滞在するには多大な出費が必要だった。政治活動をするにも郵便や印刷物くらいしか広報手段はなかった。
 現在は通信手段が発達し、SNSなどでより多くの有権者に情報発信できる。地方との行き来もはるかに容易だ。
 文通費の使途を公開している日本共産党の20年の収支を見ると1800万円を翌年に繰り越している。
 問題提起した維新の馬場伸幸共同代表の21年9月の収支では、100万円のうち70万円を自身が代表を務める選挙区支部に寄付している。
 両党の場合、公開しているからこそ、適切かどうかを国民が議論できる。公開していなければ議論のとっかかりすらない。文通費がどのように使われたか、現在の額が妥当なのか、納税者の議論と批判に耐えうる環境をつくり出すのは国会議員の責務である。


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