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世界初の缶コーヒー「UCCミルクコーヒー」が50年以上愛される理由 - メシ通
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提供写真/UCC上島珈琲株式会社
1969年に世界初の缶コーヒーが誕生した。
それが「UCCミルクコーヒー」だ。
発売当時、小学生だった筆者が生まれて初めて飲んだ缶コーヒーがまさしくこれ。以降50年あまり、自分にとってはいつ飲んでも、
「こんなにおいしいミルクコーヒーはない!」
これに尽きる定番だ。
いくつもミルクコーヒーの新製品と出会ってきたが、半世紀経っても自分の中でUCCミルクコーヒーの地位は揺るがない。
その魅力を探るべく、UCC上島珈琲株式会社マーケティング本部飲料マーケティング部係長の勝間田拓也(かつまた・たくや)さんにリモートでお話を伺った。
▲勝間田拓也さん。UCC上島珈琲株式会社マーケティング本部飲料マーケティング部係長 写真提供/UCC上島珈琲株式会社
いつでもどこでも手軽に飲める世界初の缶コーヒー
──まずはUCCミルクコーヒー誕生に至った経緯を教えてください。
勝間田さん(以下敬称略):それまでコーヒーは喫茶店で飲むのが一般的だったのですが、弊社の創業者、故・上島忠雄の「いつでもどこでも手軽に楽しめる飲み物にしたい」という強い想いがきっかけで誕生に至りました。
当時から、銭湯や駅の売店などでおなじみの瓶に入ったミルクコーヒーは売っていましたが、瓶は回収されるものなので返却しないといけません。そうすると持ち歩いて好きな時に飲めない。そこで缶コーヒーの開発へ動いたんです。
──まさに発売当時、テレビのCMで流れていた「♪いつでもどこでもUCCコーヒー」がコンセプトだったんですね。
勝間田:製品の誕生当時、私は生まれていなかったので、CMは社内のライブラリで見たんですけど、本当にキャッチーなコピーであり歌詞だなと思いました。
▲初代のパッケージ 写真提供/UCC上島珈琲株式会社
──完成までには相当な紆余曲折があったでしょうね。
勝間田:これまで世の中にないものをゼロから開発するので、苦労は多かったようです。専門家の方々の協力を得ながら試行錯誤を繰り返して完成したと伺っております。
──たとえばどんな苦労があったのでしょうか。
勝間田:コーヒーとミルクが分離してしまう。人の口に入るものなので高熱殺菌を行うと風味が変わってしまう、など幾つもあったようです。今でこそミルクとコーヒーが混ざり合った茶色の液色が当たり前になっていますが、開発時は缶に含まれる鉄イオンとコーヒーの成分のタンニンが結合してコーヒーが真っ黒になってしまう難問が生じて、製缶会社さんと一緒に試行錯誤を重ね、少しずつ解決をして製品化にこぎつけたそうです。
──ミルクとコーヒー豆にはどんなこだわりがあるんですか?
勝間田:レギュラーコーヒーがメインの会社ですので、エキスなどは使用せず、淹れたてのコーヒーを使用しています。ミルクはコーヒーの風味を損なわず、それでいてミルクリッチな味わいもあるミルクを選んでおります。
──ミルクは牛乳100%なんですか?
勝間田:現在発売している製品は、牛乳に脱脂粉乳や全粉乳も使用しています。時代の味覚トレンドに合わせ、牛乳以外も使用してミルクリッチな味わいを作っているんです。
パッケージのリニューアルのたびに味も変化
──ロングセラーの製品は、一般的に少しずつマイナーチェンジを加えていますよね。
勝間田:UCCミルクコーヒーもそうです。誕生から50年、消費者の嗜好も変わってくるので、その時その時のトレンドに合わせた製品を提供してきました。2019年には誕生50周年を迎え、10代目のミルクコーヒーへとリニューアルしました。
▲左から、初代〜10代目のパッケージ 写真提供/UCC上島珈琲株式会社
──僕も折に触れて、UCCミルクコーヒーの味の「新しさ」に出会ってきましたが、要はパッケージのリニューアルのたびに、味も必ず変化させていたんですね。
勝間田:そうです。たとえば、ミルクの味わいを強くしたほうがいいのか、ライトな味わいにしたほうがいいのか、などを考慮して成分のバランスを変えたりしています。
──この50年間で購買層の変化はありますか?
勝間田:UCCミルクコーヒーを支えてくださっている主な消費者は、沢木さんのように、誕生した時から飲んでいただいているヘビーユーザーの方たちです。50年の歴史があるので、製品と消費者の方の家族の思い出とひも付くことも多いんです。
たとえば今40、50代の方がUCCミルクコーヒーを見ると、昔、祖父母の家に行った時に飲ませてもらったとか、ちっちゃい頃に散歩の途中でお父さんがUCCミルクコーヒーを飲んでいて自分も一口だけ飲ませてもらったのが初めての出会いとか、コーヒーの原体験がUCCミルクコーヒーという方たちが非常に多いんです。
──僕と同じですね。50年続いた製品ならではのストーリー。
勝間田:一方で新しい世代の消費者も開拓していかないといけないというところで、缶のデザインを時代に合わせたスタイリッシュなものにしてきました。また、時代に応じて味を変えてきてはいるんですけど、ベースとなるUCCミルクコーヒーの価値と言いますか、人との「絆づくり」というところは変わらず意識しています。
▲現在流通している10代目のパッケージ 写真提供/UCC上島珈琲株式会社
──ミルクコーヒーという絆。うん、わかります!
勝間田:なので、より若い世代へと消費者の裾野を広げていく活動を継続しておこなっていきたいと思っています。
2019年のリニューアルのタイミングでは、Twitterでキャンペーンをやらせていただきました。ちょうど勤労感謝の日が近かったので、日頃感謝を伝えていない人に『ありがとう』の気持ちを込めてUCCミルクコーヒーを贈りませんかというメッセージを込めたものです。アカウントをフォローしてリツイートした時点で応募完了なのですが、その際に自発的なコメントも多くいただきました。大半が「小さい頃を思い出します」や「家族との思い出にいつもこの商品があります」といった心温まるものでした。
──50周年にあたって2019年にリニューアルしただけではなく、4種類の復刻缶を出されました。選ばれた缶のデザインが初代(1969年発売)、2代目(1978年発売)、5代目(1993年発売)、8代目(2003年発売)です。このチョイスの理由は?
勝間田:均等にいろんな世代の方が、「自分はあの時これ飲んだな」ということを思い出していただけるように、だいたい10年の間隔を置いたパッケージということで選びました。
▲2代目のパッケージ 写真提供/UCC上島珈琲株式会社
▲5代目のパッケージ 写真提供/UCC上島珈琲株式会社
▲8代目のパッケージ 写真提供/UCC上島珈琲株式会社
「色彩のみからなる商標」に選出されたのは食品業界初
2019年11月、UCCミルクコーヒーは特許庁により「色彩のみからなる商標」に登録された。これは食品業界から初めての選出。
たしかに、歴代10パターンのパッケージを並べると、茶色、白色、赤色からなるデザインは一貫しており、この3色を見ただけで「あ、UCCミルクコーヒーだ!」とわかる。
▲茶色・白色・赤色の3色の組み合わせが「色彩のみからなる商標」として登録された 写真提供/UCC上島珈琲株式会社
──「色彩のみからなる商標」は今回UCCさんの公式HPを見て初めて知りました。
勝間田:色だけで製品、ブランドが判別できるというお墨付きをいただかないと登録できないという、非常にハードルの高いものだと伺っております。
ほかにトンボ鉛筆さんの「MONO消しゴム」の青・白・黒。セブン-イレブン・ジャパンさんの白地にオレンジ・緑・赤などが登録されております。
──あー、たしかに! MONOもセブン-イレブンも色の並びだけでわかります。
勝間田:色だけで皆さんに知ってもらえるというのは非常に大きな武器になると思います。
──3色それぞれの意味はもちろんあるんですよね?
勝間田:茶色は「焙煎したコーヒー豆」白色は「コーヒーの花」赤色は「熟したコーヒーの実」を表現しています。白いコーヒーの花が咲き、熟して赤い実になり、収穫して焙煎すると、皆さんご存じの茶色いコーヒー豆になるということを表現しているんです。
──うわ、そんな深い意味があったなんて、50年目にして感動を覚えました! で、初代から10代まで、この3色の濃さが微妙に違うんですよね。
勝間田:缶は中が見えないので、飲むまで色も味もわからないじゃないですか。飲んだ時に「あれ、思っていたのと違うぞ」となった場合、消費者の気持ちが離れていくこともあるので、缶を見ただけで味わいが想起できるものをと考えて作っています。たとえば、7代目のパッケージは特にまろやかな色みですよね?
──そうですね。ミルキーな風味が伝わってきます。並べて見てあらためて気づきました。缶の素材や構造も変わってきているんですか?
勝間田:仰る通り、缶の構造も技術の進歩とともに変わっています。
時代のニーズで「BLACK無糖」が飲料事業の主力商品に
1990年代に入ると各メーカーが新製品開発に心血を注ぎ、コーヒー業界のブランディング競争は激しさを増した。その時代、UCC上島珈琲株式会社はどのような戦略を打ち出したのだろうか。
勝間田:弊社は1994年に「BLACK無糖 缶」という無糖タイプの缶コーヒーを業界に先がけて発売しました。こちらを出した経緯は、時代に伴う消費者の味覚の変化です。
▲「BLACK無糖」は185g缶(レギュラーサイズ)以外にも、紙パック、リキャップ缶などがある 写真提供/UCC上島珈琲株式会社
▲「BLACK無糖」から進化した新ブランド「UCC COLD BREW」より、2021年3月22日から発売開始した「COLD BREW BLACK PET500ml」 写真提供/UCC上島珈琲株式会社
──砂糖の摂りすぎは体によくないという健康指向も「無糖」の一因ですよね?
勝間田:そうなんです。すっかり「メタボ」という言葉も定着しましたが、今では「BLACK無糖」が飲料事業の主力商品となっております。
──近年、缶コーヒー市場が落ち込んでいると聞きますが、それは本当なんでしょうか。
勝間田:そうですね。消費者のニーズの多様化というところで、ペットボトルのコーヒーの誕生が大きいです。持ちやすさ、容量が多い、フタで開け閉めできるなどが重宝されて、2017年から2019年にかけて右肩上がりで売り上げが伸びました。ところが2020年に入ると、伸長がゆるやかになったんです。
──どうしてゆるやかになったと分析しますか?
勝間田:ペットボトルはゴクゴク飲めますけど、缶はペットボトルでは味わえない濃厚な味わいを得られます。消費者が、そのときの気分に適した容器を選ぶようになってきたのが原因だと思っています。確かにペットボトルは脅威ではありますが、缶には缶ならではの価値があるので、引き続きブラッシュアップをしていきたいと思っております。
10代目のパッケージでコーヒー豆も選び直す
──フタの付いた「リキャップ缶」と呼ばれるボトル缶の誕生も近年ですよね。
勝間田:ボトル缶が多くなったのは2010年前後からだと思います。
──ボトル缶とペットボトルでは、どのような違いがあるのでしょうか。
勝間田:ミルクコーヒーにはミルクの入っている割合によって決まる「乳飲料」の規格がありまして、ペットボトルだと容器特性上、乳飲料は難しく、ミルクコーヒーのような濃厚なミルクの味わいがある乳飲料は作れないんです。
──初めて知りました。
勝間田:そこは缶の大きな利点ですね。
──缶は遮光になっていることで、長く保存できるのも強みですよね。一番新しい10代目のUCCミルクコーヒーですが、具体的には9代目とどこを変えたのでしょう。
勝間田:まず1から原料の見直しを図りました。乳飲料規格でミルクリッチな味わいを、というのは変わらないんですけど、よりミルクに合うコーヒーはまだまだあるんじゃないか。弊社はコーヒー会社なので、改めて突き詰めようとコーヒー豆から選び直しました。そうしてたどり着いたのが「アラビカ種」です。
よりミルクに合うコーヒーをということで、アラビカ種100パーセントを使用することにしました。
──アラビカ種にすることによって、ベースになる味が変化してしまうことはないんですか?
勝間田:どうしても変化はしますね。その上で、ずっと飲んでくださっている方たちが敬遠しないような味、なおかつ新規の消費者にも受け入れてもらえるような絶妙なブレンドを目指して完成させました。
──僕が飽きることなく「いつ飲んでもうまい」と感じるのは、そういうブラッシュアップの賜物だと改めて理解しました。消費者から「味が変わった」という指摘を受けることはありますか?
勝間田:ありがたいことに、リニューアルするたびに「ミルク感が強くなっておいしくなりました」といったお声を頂戴します。
──UCCミルクコーヒー以外にもミルク入りコーヒーのラインナップがありますよね。
勝間田:UCCミルクコーヒー以外では2014年に誕生した「BEANS & ROASTERS」シリーズが弊社の代表的なブランドとしてございます。
▲「BEANS & ROASTERS カフェラテ」 写真提供/UCC上島珈琲株式会社
▲「BEANS & ROASTERS ミルク好きのラテ」 写真提供/UCC上島珈琲株式会社
勝間田:当時、大容量のボトル缶タイプがトレンドになったんですが、業界初の乳飲料規格の大容量ボトル缶としてBEANS & ROASTERSのカフェラテを出しました。
──BEANS & ROASTERSはどういった経緯で生まれたんですか。
勝間田:ご家庭などにも「仮想カフェ」を提供したいということで、カフェにあるメニューのような本格的なカフェラテを目指しました。コーヒー豆もミルクもUCCミルクコーヒーとは違うものを使用しています。
自分の原体験になる味だから時代を超えて愛される
UCCミルクコーヒーは様々なコラボレーションもおこなっている。代表的なものが『新世紀エヴァンゲリオン』だ。1995年より放映されたテレビアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』の作中にUCC ミルクコーヒーに似た缶コーヒーが登場。
そのシーンをきっかけに、同アニメの劇場版が公開された1997年、新劇場版となってからの2007年、2009年、2012年に合わせて、それぞれキャラクターをデザインしたタイアップ缶(通称:エヴァ缶)を発売した。
▲2020年に数量限定発売した「UCCミルクコーヒー缶250g(EVA2020)」(※販売は終了) 写真提供/UCC上島珈琲株式会社
──公開中の「エヴァンゲリオン劇場版」の完結編『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』とコラボしたエヴァ缶が2020年に発売されましたが、それ以外にもコラボはあったんですか?
勝間田:2018年に9カ所のご当地キャラクターとコラボした「UCCミルクコーヒー ご当地キャラ缶250g」を発売。2019年にはUCCミルクコーヒー誕生50周年を記念して『ポケモン(ポケットモンスター)』さんとコラボをさせていただきました。
▲2018年に地域・数量限定発売した「UCCミルクコーヒー ご当地キャラ缶250g」(※販売は終了) 写真提供/UCC上島珈琲株式会社
▲2019年に数量限定発売した「UCCミルクコーヒー ポケモン缶250g」(※販売は終了) 写真提供/UCC上島珈琲株式会社
──コラボは若い世代にも飲んでもらいたいという意味合いもありますか?
勝間田:そうですね。『ポケモン』さんに関しては、アニメを視聴したりゲームをプレイしたりするのはお子様だと思うんですけど、その親や祖父母の世代はUCCミルクコーヒーに親しんでくださっていると思います。今一度UCCミルクコーヒーを思い出してもらいたいということもあって、こちらからコラボを提案するケースが多いです。
──他社のブランドにもおいしいミルクコーヒーはあります。でも、いつの間にかなくなっちゃうことが多いんです。なぜ、UCCミルクコーヒーは半世紀続いているとお考えですか?
勝間田:他社さんのミルク入りコーヒーも飲ませてもらってますが、本当においしいものが多いです。でも、やはり一番最初に飲んだもの、自分の原体験になるものが強いということではないでしょうか。なので他社さんの製品を飲んだ後でも、長年慣れ親しんだ味のUCCミルクコーヒーに戻ってきてくださるんだと思います。
──なるほど。合点がいきました。やはり世界初の強みですね。
勝間田:2019年に50周年を迎えたUCCミルクコーヒーは、次の100周年に向けて、1世紀愛されるブランドになるため、これからも時代を先取りできる味づくりを目指していきます!
筆者が少年から青年にかけての季節、町のあちこちにUCC上島珈琲株式会社の自動販売機があり、UCCミルクコーヒー缶はいつでもどこでも、朝でも深夜でも買えた。
今は市場の混沌などにより、スーパーやコンビニでもあまり見かけなくなった。
だが、ネット通販ならステイホームしながらでも手軽に入手できて、いつでも味わえる。実際、筆者は箱買いして常備している。
これからも、仕事でクタクタに疲れた時やセンチメンタルな気分の時などに、甘くておいしいUCCミルクコーヒーを「いただきます!」。
取材協力:UCC上島珈琲株式会社
書いた人:沢木毅彦
インタビュー、映像作品レビュー、企業取材、配信サイトの番組紹介などをやっているライター。居酒屋でスマホいじりながらの一人飲みが最大の贅沢。食事は自炊派で、作るのが簡単な麺類を愛好。米のごはんは週1回程度でOK。その際は納豆か卵は必須。外食ならラーメンは天下一品のこってり、カレーはcoco壱番屋の10辛。激辛好き。巨人ファン。
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April 05, 2021 at 05:00AM
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