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ドイツ滞在経験から商店街を2000人の遊び場に。人を巻き込む「当事者意識」のつくり方【土肥潤也3】 - Business Insider Japan
撮影:千倉志野
焼津市郊外で育った土肥潤也(27)の記憶にあるのは、ロードサイドの大型ショッピングモールだ。ファストファッションから家電量販店、スーパーマーケットなどがあり、生活にはここで十分事足りた。彼の育ってきた中に駅前商店街の記憶はない。
そんな土肥はドイツの街中で見た子どもたちの遊び場をつくるイベントに、街と人の関係性を考えさせられることになる。文部科学省の青少年指導者交流事業の派遣団としてドイツに約半年滞在する機会を得た際のことだ。
「ドイツでは市民が自分たちで公共スペースをつくっていました。道遊びのプロジェクトでは平日の昼間なのに商店街の真ん中が子どもたちの遊び場になっていました。
おもちゃをどっさり積んだプレイカーが移動サーカスみたいな感じでやってくるんです。その様子を見て、みんなが街の主人公になれているのがすごいと思いました」
ドイツ人と日本人では道路という公共財の捉え方が違うことも、土肥にとって発見だった。日本では道路は役所のものだという意識がある。それに対し、ドイツ人は公共財を自分たちのものだという感覚で捉えていた。
「道路一つとっても、日本人は警察や役所のものだと思うし、ドイツだと自分たちのものと思う、この違いは大きいと思ったけど、ここにヒントがあるとも思ったんです。
道遊びを通して、商店街という道路を自分たちの道だと思える感覚をもってもらえるようにしようと思いました。デモだと角が立つけど、遊びなら柔らかい。何より、遊びは主体的な行動ですから」
「準備」こそ外に向かって開く
「みんなのアソビバ」には準備段階を含めると、直接・間接的に100人近い人が協力している。
土肥のnoteよりキャプチャ
「みんなのアソビバ」を焼津駅前商店街で実行したのは、2018年12月のことだ。日曜日、商店街の道路に敷き詰めた人工芝の上にはゲームやおもちゃを載せた何台ものテーブル。子どもたちはもちろん、大人たちも、よく見れば祖父母らしき人たちもおもちゃで遊び、芝生に寝っ転がった。
2000人が集まる盛況となったのだが、前段階の準備にこそ意味ある試みがあった。20代から70代まで10人足らずの実行委員会は商店主、市役所職員、学生など個人で構成し、自治体からの補助金は受けていない。補助金を受けると、制約を受けて自由度が下がるためだ。準備段階から「やりたい遊び」や「出しもの」など企画をSNSで募り、つくったチラシの配布についてもSNSで応援を求めるなど、外に向かって開いていった。
そうすると関わる人たちが自然発生的に増える。それは商店街への当事者意識を醸成していくことになった。その後も年に2回、5月と11月の開催が続いているが、ある年の5月には重機を取り扱う会社の人が「鯉のぼりを重機で上げたい」と言い、商店街に大きな鯉のぼりが泳いだ。
「みんなのアソビバ」によって商店街の売り上げが伸びることは、実は結果であって目的ではない。
準備段階は言ってみれば大人たちの遊びだ。そして当日は子どもたちが楽しく遊び、大人たちもつられて遊んでいるうちに本気で遊んでしまう。こうして主体的に街に関わる人が増えていくと、商店街には活気が生まれる。
実は当初、商店街組合には「今更……」という雰囲気があったという。ところが蓋を開けてみると、大勢の親子連れが集まった。その景色を見て徐々に人々の考え方が変わってきた。仲間で出資し合って古民家カフェを始めたベテラン世代も現れた。
55枠の一箱本棚がすぐに満員に
400メートルほど続く焼津駅前商店街に位置する「みんなの図書館 さんかく」も、土肥にとってファシリテーションの実践の一つだ。
撮影:千倉志野
活動を通してできた仲間と土肥は、一般社団法人トリナスを共同設立した。2020年のことだ。そして土肥は自分でも空き店舗を借りてみようかなと思い立つ。コワーキングスペースを始め商店街にプレイヤーが増え、空き店舗を活用する新しさや楽しさが目に見えてきていた。
何を始めようかというとき、再びドイツで見た風景が頭に浮かんだ。街のあちこちに公共図書館とは異なるやり方で本が置かれ、循環していた。例えば電話ボックスを開けると中は本棚になっていて「1冊取ったら1冊入れてね」と書かれているという具合だ。差し迫った問題として、部屋に溢れそうになった大量の本をどうにかしなくてはということもあり、土肥は自分の本を貸し出す図書館を開こうと思った。
ところが、周囲の人たちが「商店街だから商売をしないといかんやろ」「身銭を切るやり方では持続可能性が低い」などと盛んに意見する。しかし土肥はNPOを基盤に活動をしているため、金を稼ぐ事業の組み立て方がわからない。あちこちの古書店や図書館、独立書店を見て回って、たどり着いたのが一箱本棚を貸し出す「みんなの図書館さんかく」だった。さんかくには「参画」と、人が集まるという意味の数字「3」を含んでいる。
さんかくの本棚。本棚は1スペースを月額2000円の「本箱」として貸し出す。箱ごとにオーナーが好きな本を並べ、一種の自己表現の場のようにもなっている。
撮影:千倉志野
月額2000円で本箱を貸し出し、オーナーは自分の好きな本やお勧めの本を並べることができる。300円を支払って個人会員になれば自由に本を借りることができる。最初の10枠はクラウドファンディングで集めたが、図書館の司書や同人誌をつくっている人などをはじめ、地元の人たちで55枠があっという間に埋まった。
土肥が払うはずだった家賃は本箱オーナーの賃料で十分に払うことができ、そればかりか光熱費も賄えることとなった。
2年で30カ所に広がった「さんかく」モデル
貸し出される本には感想カードがついている。こちらは元ヴィレッジヴァンガードの書店員、花田菜々子さんの著書「出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと」の感想カードだ。
撮影:千倉志野
土肥は「やいぱる」の経験から、中高生のための場所づくりが日本中に広がっていけばいいのにという思いを持ち、「さんかく」の事業をデザインするにあたっては真似されるようなモデルにすることを意識していた。一箱図書館が中高生にとっての居場所になる可能性を感じたためだ。
だが、全国で30カ所にまで増えるとは予想していなかった。わずか2年で広がった要因の一つは、コロナ禍の影響が後押ししたことだ。今まで地域でさまざまな場づくりのイベントをしてきた人たちが日常の場づくりにシフトした結果、一箱図書館に注目した。そして土肥はもう1点、シビアな見立てを付け加えた。
「外から見ると活動は大変に見えないからだと思う。でも地域に関わる活動では受容する力が問われる場面は必ず出てくると思います。地域の場づくりの経験があって、場づくりには思いがけない問題が起こりうることを知っている人でないと、そもそも一箱オーナーを集められないと思います」
第4回は土肥の3人の恩師とファシリテーションが土肥の人生に与えた影響について。
(敬称略・明日に続く)
(文・三宅玲子、写真・千倉志野)
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