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豪州最高裁、“バックパッカー税”を無効と判断/法律相談室 - 日豪プレス
第81回 日豪プレス法律相談室
豪州最高裁、“バックパッカー税”を無効と判断
2021年11月3日最高裁で、豪州にワーキング・ホリデー(ワーホリ)・ビザで滞在する各国の若者にとって画期的な判決が下り、“バックパッカー税”は無効となりました。
覚えていますでしょうか? 16年、豪州連邦政府はワーホリ・ビザ所有者に対し、15%の所得税を課する新税法(※417あるいは4 62ビザを保有して豪州に滞在する外国人は、税法上の豪州人に対する扱いとは異なり、年収1万8,200豪ドル以下であっても15%の所得税を支払わなければならない)を施行しました。それ以前は、個々の条件にもよりますが、ワーホリ・ビザ所有者であっても豪州人同様、年収1万8,200豪ドルまでは非課税でした。つまり、年収1万8,200豪ドルを超えなければ所得税を払う必要はなく、それを超えた額に対して、累進課税方式によって(最初の税率は1ドルにつき19セント)課税されるという方式でした。
最高裁はその名の通り、豪州の裁判所の頂点です。19年10月30日に連邦裁判所で下された判決が適切だったかどうか、今回、最高裁で判断されました。結果、最高裁は連邦裁判所による判決を支持、バックパッカー税を“国籍に基づくある種の差別”とし、ワーホリ・ビザ所有者(原告で豪州に住んでいる英国人のワーホリ・メーカー)にこれを課すことはできないと判断しました。裁判所はまたバックパッカー税について、豪州・英国間で合意されている二重課税回避条約の無差別条項に違反する税法であると説明しました。
これと似た課税条約(無差別条項)は豪州・英国間だけでなく、米国を始め、ドイツ、フィンランド、チリ、ノルウェー、トルコ、そして日本を含む複数の国々と豪州との間で結ばれています。そうしたことから、最高裁による判決が日本人(やその他の国々から来た)ワーホリ・メーカーにも適用されるということは知っておくべきでしょう。
コロナ後、豪州が国境を開くタイミングで最高裁がこうした判決を出したというニュースは、幅広く称賛されています。豪州の多くの農場経営者は、バックパッカー税が施行されてから農場で働くワーホリの減少について心配し、観光業界も豪州の観光業全体に与える影響について危惧していました。特に観光業界は、約2年もの間コロナの影響を大きく受けており尚更です。完璧なタイミングで下された最高裁の画期的判決は、海外から訪れるワーホリの若者だけでなく、豪州のビジネス・オーナーも救うことになるでしょう。
このコラムの著者
ミッチェル・クラーク
MBA法律事務所共同経営者。QUT法学部1989年卒。豪州弁護士として30年の経験を持つ。QLD州法律協会認定の賠償請求関連法スペシャリスト。豪州法に関する日本企業のリーガル・アドバイザーも務める。高等裁判所での勝訴経験があるなど、多くの日本人案件をサポート。
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