「国民皆歯科健診」議論の〝見落とし〟 すでにある無料健診の活用を - withnews

09.15
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「義務化」ではないのだとしたら、歯科健診自体の是非がポイントになります。前提として、歯科健診にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

虫歯や歯周病などによって多くの歯を失うと、高齢になったとき、咀嚼(噛む)機能や嚥下(飲み込む)機能が低下し、生活に支障を来して十分な栄養が摂れなくなり、筋力低下やロコモティブシンドローム(運動器症候群)につながり、要介護となるリスクを高めることが知られています。

また、歯周病は、心疾患や慢性腎臓病、呼吸器疾患、骨粗鬆症、関節リウマチ、がん、早産・低体重児出産など、さまざまな全身疾患と関連していることが報告されています。​​

歯科健診により、虫歯や歯周病など、口腔の異常を早期に発見することができるという意義があり、介護や全身疾患のリスク低減にもつながることが見込まれます。

現行の歯科健診でも、1歳6カ月や3歳での乳幼児歯科健診は義務化されています。また、小中高などの学校では、毎年の実施が義務づけられています。

一方、大人では健康増進法に基づき、市町村が歯周病健診を40歳から70歳まで10年ごとに実施していますが、受診率は1割未満と低い水準になっています。これが今回の騒動の背景にあります。

こうして整理してみると、今回の騒動で見落とされていることがあると気づきます。歯科健診自体はメリットがあるもので、制度もあるのに、そのことが知られていなかったり、受診につながったりしていないことこそが問題ではないか、ということです。

実は他に、全国でも複数の自治体が、10年に1度よりも短い期間での無料の歯科検診(※特定の病気を想定する場合は検診)・健診を行っています。また、企業や健康保険組合などでは、1年に1回、半年に1回という頻度で同様に、無料の歯科検診・健診を行っている場合も珍しくありません。

「国民皆歯科健診」の議論も重要ではありますが、実は足元には、すでに便利で健康の役に立つ制度が存在している、という場合があります。この議論をきっかけに興味を持った方がいれば、ぜひ自分の自治体や企業、健保組合の歯科検診・健診の制度をチェックしてみてはいかがでしょう。

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