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安倍最長政権 失われた正面からの議論 | 社説 | コラム - 熊本日日新聞
安倍晋三首相の連続在職日数が２４日で２７９９日となり、大叔父の佐藤栄作元首相を抜いて歴代最長となった。だが、不祥事や疑惑に対する説明、政策論戦から逃げるスタイルは、とても「大宰相」と呼べるものではない。
何より、新型コロナウイルスの感染拡大への対応は後手に回った上に混乱し、最近は国民に語り掛けることすら拒んでいる。国民は不満を募らせ、内閣支持率はこの数カ月、連続して４０％を下回り、逆に不支持率がほぼ半数に達している。
「安倍１強」と呼ばれた長期政権は、数の力による強引な手法が目に余る。歴代政権が憲法上許されないとしてきた集団的自衛権の行使容認を閣議決定し、世論の強い反対を押し切って安保関連法を成立させたのが、その典型だ。特定秘密保護法や、いわゆる「共謀罪」法などでも、少数意見に耳を傾けることはなかった。
行政の監視を担う国会を軽視し、言論の府を形骸化させる手法によって、民主主義の根幹である「正面からの議論」は失われてしまった。
第２次政権の発足直後から取り組んだ「アベノミクス」は、大規模な金融緩和などによって株価や雇用を好転させたが、米中貿易摩擦やコロナ禍が直撃し、景気拡大は７１カ月で終わった。今年４～６月期の実質国内総生産（ＧＤＰ）は戦後最悪のマイナス成長に落ち込み、「看板」は一気に色あせてしまった。
森友、加計両学園や桜を見る会などの問題では、首相自身に降りかかった疑念さえ積極的に晴らそうとしなかった。その一方で財務省による公文書の改ざんも発覚。人事権を握られた官僚が、首相官邸におもねる「忖度［そんたく］政治」が広がっている実態を浮き彫りにした。
言葉の軽さも目立つ。相次ぐ閣僚らの不祥事に「任命責任はある」としながらも責任の取り方はあいまいに終始。自身の問題にも「丁寧に説明する」と繰り返したが、実践したとは言い難い。
困難な状況である時こそ、国会や国民との対話で、理由や道筋を示すべきではないか。外交面でも、トランプ米大統領とは良好な関係を続けているが、北朝鮮による日本人拉致問題やロシアとの北方領土返還交渉で具体的進展は見えない。さらに、ここへ来て首相の健康不安説が先行きの不透明感を増幅させている。
政治家は、歴史によって裁かれる「被告人」ともいわれる。堂々と論戦を受けて立ち、意思決定の過程を詳細な記録に残し、後世の評価に委ねる。これが、あるべき宰相の「品格」であろう。
自民党総裁の残り任期は１年余り。７年８カ月を謙虚に省みて、改める点は速やかに改めるべきだ。まずは臨時国会の召集要請に応じ、コロナ禍の克服に向けた特別措置法の改正や経済対策の議論に全力を注いでもらいたい。そうでなければ、政権末期との疑念は消えず、求心力の低下にも歯止めはかかるまい。
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August 25, 2020 at 05:11AM
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