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上白石萌音 美しく優しく誠実――その人間性が映し出された新作で拘った「余計なことはしない歌い方」(田中久勝) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース
comot.prelol.com3枚のミニアルバムを経て、初のオリジナルフルアルバム『note』をリリース
上白石萌音の1stオリジナルフルアルバム『note』が8月26日に発売され、好調だ。これまで3枚のミニアルバムを発売し、様々な歌を表現してきた。「演技と音楽、両方なければ自分ではない」と言い、いい意味で貪欲に音楽、歌と向き合い、“上白石萌音だけの歌”を作ってきた。デビューミニアルバム『chouchou』(2016年)は、カバー曲で歌い手としての表現力の豊かさを伝え、18歳の時に作ったミニアルバム『and...』(2018年)では「色々な方と繋がって、そのご縁でできたアルバムで、私の中の新たな引き出しを開けてくださったり、逆に私がすごく感じている事を色々なアーティストの方が代弁してくださいました」と語った。音楽に対する思いをより深くし、2019年にリリースしたミニアルバム『i』では「恋」をテーマに、5つの恋の歌を、「歌に関しては装飾をなるべく外し、引き算という感覚で歌いました」と、それぞれの歌の主人公になり切って歌った。
多彩なアーティストが曲を提供。「大変なことになってしまいました(笑)」
そして『note』と名付けられた1stフルアルバムには、内澤崇仁(androp)、大橋トリオ、GLIM SPANKY、n-buna(ヨルシカ)、野田洋次郎(RADWIMPS)、水野良樹(いきものがかり)、YUKI、橋本絵莉子(元チャットモンチー)という、名前を見ただけでもワクワクしてしまう作家陣が集結。それぞれが彼女ために書き下ろした多彩な歌と対峙し、上白石は繊細に、時に大胆に圧巻の表現力でその世界観を伝えてくれる。この初のフルアルバムについて本人にインタビューし、歌に込めた思いを聞いた。
「作り始めた当初は、こんなにすごい方々に曲を書いていただけるなんて全く思っていませんでしたので、大変なことになってしまいました(笑)。このメンバーでフェスをやってほしいくらいの夢のようなラインナップです(笑)」。
自身が好きで、ずっと聴いていた憧れのアーティストが、自分のために書き下ろしてくれた楽曲を歌うというのは嬉しさはもちろんだが、プレッシャーなどはなかったのだろうか。
「レコーディングの時、ご本人がディレクションしてくださることもあったので、その前日は眠れないくらい緊張しました(笑)。リード曲の「白い泥」(アニメ『メジャーセカンド』第2シリーズオープニング曲)は、高校生の時から好きで、カラオケですごく歌っていた元チャットモンチーの橋本絵莉子さんが書いて下さって、アルバムの1曲目はこの曲ってスタッフ全員の意見が最初から一致していました(笑)。歌っていて本当に気持ちいいですし、いつか野外フェスで歌いたいです(笑)。いきものがかりさんは12歳の時からずっと好きで、今回の『夜明けをくちずさめたら』はイントロから水野さん節だって思いましたし、新しく書いていただいた曲なのに、“ただいま”という感じで安心感がすごくあって、ずっと聴いてきた世界観が広がっています。孤独な人も孤独じゃない、繋がっているんだよっていう内容の歌詞が、図らずも今の状況にリンクしていて。アルバム用に歌い直しをしたのですが、色々な伝わり方をしていて、聴く人によって捉え方が違う曲だと思いました。水野さんの優しさ、温かさがつまっている作品です」。
「私の色というのは意識していなくて、むしろ余計なことは何もしない歌い方にしようと思っています」
その水野は『note』特設サイト中で、彼女の歌について「決して押し付けがましくなく、自分の世界や空気感で曲を包む能力に長けています」とコメントしているように、人気アーティスト達のそれぞれの世界観が広がっている中で、きちんと上白石萌音の歌として成立させている。素晴らしいテクニックは言わずもがなだが、それ以上に声の表現へのこだわりを感じさせてくれる。「一縷」を提供した野田洋次郎も「自分の声を知り尽くしている」と絶賛している。
「私の色というのは意識していなくて、むしろ余計なことを何もしない歌い方にしようと思っていて。素晴らしい曲ばかりをいたただいたので、ただただ歌えばいいという、曲への絶対的な信頼がありました」。
彼女が出演したドラマ『恋はつづくよどこまでも』(TBS系)は“恋つづ”と親しまれ、社会現象になり、多くの女性から共感を得たが、彼女の新しいファンには「永遠はきらい」(作詞:YUKI 作曲・編曲:n-buna)の世界観は、“新鮮”に映っているようだ。
「ファンの方達の間で『永遠はきらい』をすごく多く聴いていただけているみたいで、というのも、ドラマではすごく純粋な看護師役をやって、かと思うと、こっち(歌)では恋の駆け引きをしているという意外さがウケているかもしれないですね(笑)。それから、『From The Seeds』(楽曲提供:GLIM SPANKY)もドラマの放送中に配信された曲で、『衝撃的でした』と言ってくださる方が多くて。今まで曲を聴いてくださっていた方も『こういうロックも歌うんですね』と、新鮮に感じていただけたみたいです。GLIM SPANKYさんのロックも好きで、今回の作品もすごく人間味があって大好きな曲です。(松尾)レミさんがコーラスで参加してくださって、GLIM SPANKYカラーをグッと足していただきました」
「大橋トリオさんとのレコーディングでは、音楽を作るってこういうことなんだと、改めて教えられました」
大橋トリオも彼女にとっては「ずっと好きだった」という“欠かせない”アーティストだ。大橋との「Little Birds」(作詞:micca 作曲:大橋好規)のレコーディングでは大いに刺激を受けたようだ。
「楽器もたくさん演奏してくださって、レコーディングが本当に職人的というか、繊細に繊細に積み重ねていくレコーディングで、ディレクションもすごく細やかで、ファンとしてはたまらなかったですね(笑)。こうやって曲が生み出されるんだ、音楽を作るってこういうことなのかって、改めて教えてくださいました。楽に歌えているかということをすごく気にしてくださって、コーラスの大橋さんの声も優しくてスッと入ってきて、自分がリラックスするのが一番大切なんだなと感じました」。
「Liitle Birds」で感じた空気感を、彼女自身が作詞した「あくび」(作曲:遠山哲朗)に感じることができ、まるで地続きのような作品になっている。本人によるコーラスが印象的な「あくび」には、松任谷正隆がピアノとオルガンで参加している。さらに「土砂降り」のベースは休日課長(ゲスの極み乙女。/ DADARAY /ichikoro)と、このアルバムには数多くの凄腕ミュージシャンが参加し、そのサウンドにも注目したい。
「2曲の雰囲気は似ていますよね。言いたいことはどちも何気ない幸せが大切ということです。それをSTAY HOME中にすごく感じて、何もないって幸せだなって(笑)。変化がないからこそちょっとした変化が際立ったり、そういうことをすごく感じて。お家が大好きだし、そういう中に幸せってあるんだなって、そんな歌詞が書けたらいいなと思いました」。
「『一縷』は初めて聴いた時、私自身の希望の光になってくれ、心が震えました」
主演映画『L〇DK ひとつ屋根の下、「スキ」がふたつ。』(2019年※「〇」はハートマークが正式表記)の主題歌「ハッピーエンド」は、「永遠はきらい」同様、前作『and...』にも収録されていた作品で「聴いた瞬間にこの曲を歌いたいと運命的なものを感じた」というお気に入りの曲だ。映画『楽園』(2019年)の主題歌「一縷」(作詞・作曲・編曲:野田洋次郎)も、忘れらない一曲だという。
「(野田)洋次郎さんが『この映画の最後の小さな光になれるような、そんな曲に出来たらいいね』とおっしゃっていましたが、初めてこの曲のデモを聴いた時、私自身がちょうど色々なことで悩んでいた時で、私の希望の光になってくれ、心が震えました」。
こう歌いたいというよりも、どう歌うとその曲のよさが一番伝わるのかを、常に考えている彼女の力をより感じるのは「スターチス」(作詞・作曲・編曲:大濱健悟)かもしれない。いい意味で“余白”を感じるこの曲を、彼女が“委ねられ”、そして歌で広げていっている。
「色々なところに想像の余地があって、すごく寄り添ってくれて、でも空間的にはめちゃくちゃ広い感じがする曲です。シンプルで、どこへでも行けるので、さあどうしますかって言われている感じがしました。それだけ難しくて、レコーディングに一番時間がかかった曲ですが大好きな曲です」。
『note』というタイトルに込めた思い
色々な上白石萌音が存在しているこのアルバムだが、聴き終わって感じるのは、彼女の根底にある優しさ、誠実さだ。強い曲、優しい曲、様々なポップソングが詰まっているが、そこに貫かれているのはピュアネスな心だ。
「一曲一曲のパワー、色がすごいので、それをまとめたもの、則ち?って言われるとキーワードが浮かんでこなくて、まとめようがない、それを引っ張るタイトルがめちゃくちゃ難しくて。なのであえて、あまり色がついていないニュートラルで、なじみがある言葉がいいなと思って『note』にしました。英語では動詞で、書き留めるという意味もあって、どちらかというとアナログな肌触りを感じられるような、温かくて、思ったことを走り書きしたようなフレッシュさもあるのかなと思いました。鳥の鳴き声という意味もあるみたいで、気取らない、飾らない感じがあったので、このタイトルに決めました」。
「こういう状況になって歌うこと、演じることが心から好きなんだと再確認できた。一番大事にしたい、失いたくない部分だから、もっと楽しんでいきたい」
彼女はSTAY HOME中も、リモートセッションで音楽番組(『Sound Inn “S”』(BS-TBS)にも出演し、積極的に歌を届け、多くの人の心を潤し、勇気づけた。この状況下で、表現者として一番感じたこと、そして変わったことを聞いてみると――。
「無力だな、どうすることもできないなって思いました。リモートで歌っていましたが、実際は直接助けになることはできなくて、もちろん歌やお芝居が心の支えになって、救われる人もいるかもしれませんが、万能ではないことをすごく感じました。劇場が使えなくなったり、撮影がストップした時に何もできない、こんなに何もできないんだということを改めて感じました。だから独りよがりかもしれませんが、自粛明け最初のレコーディング、お芝居が本当に楽しくて、やっぱり歌うこと、演じることが心から好きなんだなと再確認できました。一番大事にしたいし、失いたくない部分でもあるので、もっともっと楽しんでやっていこうと思いました」。
9月19日、初のオンラインライヴを開催。「遠隔なのにより近くに感じられることがあると思うから、この時間も悪いことばかりじゃない」
9月19日はこのアルバムの発売を記念した初のオンラインライヴ「i note」を行う。3年振り、念願のワンマンライヴでもある。
「遠隔なのにより近くに感じられることがあるから、この時間も悪いことばかりじゃない、と思います。楽しみにしていただけると嬉しいです!」。
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August 30, 2020 at 06:42AM
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