クロップも驚愕の6-4。なぜリバプールはゴールラッシュできなかったのか? WBA戦1-1の要因に迫る【分析コラム】 - フットボールチャンネル

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滑り出しは最高ながら…

リバプール
【写真:Getty Images】

 警戒していた“ビッグ・サム”に一泡吹かせられた試合の後で、ユルゲン・クロップ監督は、次のようなコメントを残した。

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「我々は夢の国に住んでいない」

 滑り出しは悪くなかった。12月27日に行われたプレミアリーグ第15節、2,000人の入場が許されたアンフィールド、対ウェスト・ブロムウィッチ戦。「6-4」と極端な守備陣形でベタ引きのWBAに対して、12分、サディオ・マネのゴールで先制。CBのジョエル・マティプが入れた速くて鋭いボールを、セネガル代表FWは胸でトラップして右足でボレー。

 早い時間帯での先制点は、前節のクリスタル・パレス戦と似たような試合展開を彷彿とさせた。しかし以降、ドン引きの相手に対して、圧倒的にボールは保持したが攻撃は停滞。追加点を奪うことはできなかった。

 するとWBAが前に出てきた後半、59分にマティプが負傷する嫌な流れの中、81分に自陣でカーティス・ジョーンズのパスがカットされ、相手にCKを与えると、ショート・コーナーから失点。試合は1-1のドローに終わり、就任して2戦目の“ビッグ・サム”ことサム・アラダイス監督に勝ち点1をプレゼントする格好となった。

 なぜリバプールは、クリスタル・パレス戦のように早い時間帯に先制しながら、ゴール・ラッシュに繋げることができなかったのだろうか。

「私の人生でも見たことない」。驚愕の戦術とは?

 1つは、WBAが割り切って前半を捨ててきたところにあるだろう。クロップは次のように振り返っている。

「彼ら(WBA)は新しい監督が就任し、前半は私の人生の中でもそんなに見たことはなかったシステム、6-4とかそういったシステムでプレーした」

 実際、WBAが奪ったボールを前に繋げてカウンタ―に出てきたのは、ようやく30分を過ぎてからのことだった。監督が代わったばかりの降格圏のチームという立場を考えれば、首位のリバプールに対して極端な守備ブロックで構えるのも無理はない。

 それにしても、攻撃する意思すら放棄した「6-4」は、クロップに限らず、ピッチ上に立ったリバプールの選手たちにとっても、「人生の中でもそんなに見たことはなかったシステム」だったのではないか。クリスタル・パレスは前半の段階でも少なからず色気を出してきたが、WBAは昨季王者に対して潔く引いてきた。

 ここまで引かれては、出し手と受け手との間に相当の技術がなければ得点は難しい。そう言った意味では、マネの先制弾にアラダイスは失望しただろう。しかし、その後の追加点を奪えなかったことで、リバプールはリズムに乗り切ることはできなかった。そして次第に“ビッグ・サム”のペースに乗せられていった。

 また、ベンチに変化を加えることができる選手が少なかったことも要因だろう。無いものねだりになってしまうところもあるが、チアゴ・アルカンタラがいたら、極端に狭いスペースでもボールを受けて違いを作り出せていたかもしれない。

 また、ディオゴ・ジョタがいたら、少し乱暴なアーリー・クロスに対しても、逆サイドから斜めに入ってきて、ヘディングでゴールを奪えたかもしれない。このあたりは、年が明けて両選手が復帰してきたら、クロップ監督の選択肢も増えるだろう。

 先制しながらも主導権を握り切れず、1-1のドローに終わったWBA戦を、クロップ監督は「我々はこの試合に勝つべきだった」と振り返った。しかし、他会場でレスターとマンチェスター・ユナイテッド、トッテナムはドローに終わり、チェルシーもアーセナルに負けたこともあるが、リバプールは依然として首位に立っている。“ビッグ・サムの”「6-4」を1度は崩し切って負けなかったことは、やはり王者の地力を示したと言えるのではないか。

 クロップ監督が言うように、プレミアリーグは「夢の国」ではない。実質的に一強独裁のブンデスリーガとは違って、王者が何シーズンも独走することはできない。12月から1月にかけてウインター・ブレイクもない、群雄割拠の過酷な戦場なのだ。

(文:本田千尋)

【了】

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