【年の瀬記者ノート・静岡】(4)完 リニア問題 国仲介で議論進展も着地点いまだ見えず - SankeiBiz

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 「想定されているトンネル湧水量であれば、全量を大井川に戻すことが可能」

 JR東海のリニア中央新幹線静岡工区工事に伴う、環境影響対策を検証している国の有識者会議は8日の会議終了後、これまでにない踏み込んだ座長コメントを公表した。JR側が示した「トンネル湧水を大井川に全量戻す」計画を、同会議として事実上承認する内容であり、年明けの議会発足から会議の行方を見守ってきた静岡県の担当者や報道陣の間に衝撃が走った。

 県の中央新幹線対策本部長である難波喬司副知事はすぐさま「あくまでも『想定量であれば』との条件が付いている。拙速感があり、誤った印象を与える」とし、同会議の取りまとめに反発した。コメントの文面に、大井川の水問題をめぐって県とJR側との協議が整わず、未着工になっている静岡工区での工事を何としても進めたい-との国土交通省の思いがにじみ出ているとみたからだ。

 県が大井川の水量減少対策として要求した「トンネル湧水の大井川への全量戻し」を同社が承諾したのが2年前の平成30年10月。翌31年から、県の専門部会で具体的な水の戻し方などについて議論が始まったものの、県や地元自治体、利水団体は同社の説明に納得せず、協議は暗礁に乗り上げた。そこで今年になって、国が仲介に乗り出して有識者会議を設立。約8カ月間の議論を経て、同社の「全量戻し」の計画を大筋で了承した-という流れだ。

 国が仲介に乗り出す前、県と同社が2年にわたって協議を重ねたにもかかわらず、全く方向性が見えなかったことを思えば、国の有識者会議設立によって静岡工区着工に向けた議論は飛躍的に進んだといえる。

 しかし、有識者会議が示した方向性は果たして、県や地元住民の“唯一の願い”である大井川の水を守ることにつながるのか。県や利水関係者は、有識者会議がやや強引に結論を取りまとめたとの印象を持っており、不安や不信感を払拭できないままでいる。

 一方で、目標だった令和9年の東京・品川-名古屋間の開業は絶望的になっているJR東海からすれば、課題となっている静岡工区の早期着工を目指して有識者会議に早期取りまとめを望むのは当然のことだ。

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