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胎児性患者、福祉と補償議論を 水俣病被害者救済を研究の野澤氏(東大大学院)が著書 - 熊本日日新聞
水俣病被害者の福祉救済施策を研究する東京大大学院の野澤淳史・教育学研究員(39)=社会学=が、新著「胎児性水俣病患者たちはどう生きていくか〈被害と障害〉〈補償と福祉〉の間を問う」=写真=を出版した。胎児性患者らの生活を取り巻く課題と補償制度の問題点を読み解いている。
野澤氏は学生時代から、水俣病の補償問題などを研究する栗原彬・立教大名誉教授(政治社会学)に師事し、現地で患者や家族、福祉施設などの支援者らの話を聞き、文献を調べてきた。
著書では、2004年の関西訴訟最高裁判決で、国や熊本県の責任が認められて以降、胎児性患者らの生活支援や介助などの福祉施策が拡充された経緯を解説。一方で「被害補償の根幹となる患者認定制度は見直されていない」と指摘。通常の福祉施策と加害責任に基づく補償を合わせた議論の必要性を主張している。
障害者の「自立」について、1970年代に胎児性患者らがチッソに生きがいとしての「仕事ばよこせ」と迫った運動などを紹介。先天性の障害のある胎児性患者に対して反公害運動がはらむ「日常の優生思想」を追及している。
野澤氏は「『被害と障害』『補償と福祉』の境界を厳密にしにくい問題は、発達障害や学習障害などにも通じ、日常の優生思想も過去の問題ではない」と水俣病から学ぶ意義を強調している。
著書は世織書房、2700円(税別)。(堀江利雅)
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