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在宅勤務ブームは恒久的、賃金カットは覚悟せよ-コロナが残す問い - ブルームバーグ
新型コロナウイルス感染症(COVID19)がニューヨーク市に広がり始めた時、レイチェル・ムシカー氏は産休中だった。保険業界で働く夫は地下鉄を使って通勤していたので、帰ってきたら赤ん坊を抱く前にシャワーを浴びさせることにした。「散歩に行くことにすら危険を感じ始めていた」とムシカー氏は振り返る。そこで、一家は3月14日に荷物をまとめ、ニューヨーク州ロチェスターにあるレイチェル氏の両親の家に身を寄せた。
ムシカー氏はブルックリンを愛していた。家賃はとてつもなく高いが、アパートのすぐ近くには素晴らしいブランチを楽しめるビストロがあり、子供を預けるつもりの保育所も近くにあった。しかし今やそれらは意味がない。保育所は自分が仕事に戻るころまだ閉鎖中かもしれない。ブランチは過去のぜいたく品だ。
夫妻はロチェスターの両親の家に2週間滞在するつもりだったが、結局9週間になった。その後は市外のオンタリオ湖沿いに家を借り、ムシカー氏はそこから不動産テクノロジー企業、 レッドフィンのコミュニケーション担当ディレクターの仕事に復帰した。8月には3400平方フィート(約316平方メートル)、4ベッドルームの家を35万5000ドル(約3660万円)で購入した。
故郷に引っ越すという考えが悪夢のように思われた時もあっただろうが、意外にもロチェスターはそう悪くなかった。母親に子育てを手伝ってもらえるほか、車で買い物に行くのも容易で、近所にはブルックリンのクラフトビールの醸造所がある。「昼間に若い人がピクニックをしてビールを飲んでいる。ブルックリンの近くのウィリアムズバーグのようだ」という。
新型コロナパンデミックの中で突然リモート勤務ができるようになった多くの人と同様に、ムシカー氏は引っ越しをする前に雇用主との間で詳細を取り決めてはいなかった。話し合っていなかった点の一つが給料だ。生活費の安いところに住んでいるのだから、減俸を受け入れてくれないかとムシカー氏はレッドフィンから打診された。
これは多くのホワイトカラー労働者が直面する問いだ。ダラス連銀の 調査によると、2月時点には完全な在宅勤務をする米労働者は8%にすぎなかった。オフィスが閉鎖され従業員が人の少ない地域へと脱出する中で5月には35%に増えた。在宅勤務者の比率はその後若干下がっており、ワクチンの普及に伴い今後さらに下がるだろう。しかし、二度と元のオフィスに戻らない従業員の数も多いと見込まれる。
この変化はハイテク業界で特に顕著だ。同業界はどこにいても仕事ができる従業員が多いが、会社は今のところコストの高い地域に拠点を置いている。フェイスブックとマイクロソフト、ストライプはより多くの従業員に無期限にリモート勤務を認める方針を発表した。ただ、ムシカー氏のレッドフィンと同様、引っ越した従業員には報酬の調整を求めている。ムシカー氏がロチェスターにとどまれば、来年の給料と賞与は約20%減る。同氏は少なくとも今のところ、この交換条件は仕方ないと考えている。「世の中は私がこうなるだろうと思っていたものとは違う」と同氏は話す。
在宅勤務で生活費安い所に引っ越せば報酬減の恐れ-雇用主の3割検討
ムシカー氏のような労働者が長期的にどうするのか。それが、新型コロナが恒久的に残していく影響の一つとなるかもしれない。地域で第2の都市や準郊外への移住が恒久的なものになるならば、企業のバランスシート改善や労働市場の変革につながる可能性があるほか、米国の風景を一変させるかもしれない。数百万人の都市居住者が、キャリアを犠牲にすることなく都市圏を離れることができることに気付くかもしれない。在宅勤務のトレンドを研究したスタンフォード大学経済学教授のニック・ブルーム氏は、「まだ始まったばかりだ。都市ブームの逆が起こるだろう」と話した。
原題:
The Work-From-Home Boom Is Here to Stay. Get Ready for Pay Cuts(抜粋)
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