Judul : ホッパーケーション1巡目〜「大阪」「香川」|55歳のホッパーケーション|ささきかつお - 幻冬舎plus
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ホッパーケーション1巡目〜「大阪」「香川」|55歳のホッパーケーション|ささきかつお - 幻冬舎plus
5月某日
高山を出たバスは山々をトンネルで鮮やかに抜け、濃尾平野に飛び込んでいく。
さらに関ヶ原を越え、滋賀京都の県境の山を越え、京都市内へと入っていく。
ここで降りよう、と思った。食べたいものがあるからだ。
新福菜館の「肉竹入り中華そば(並)」1050円と「焼き飯」500円。
そばを「小」にするの忘れてた……でっかいの着丼しちゃった。でもいいか、朝飯食べてなかったし、晩飯を抜けばいいから。
やっぱもう、安定の美味さだった。京都に来たら必ず食べている。
今日は、移動日だから、仕事はしないと決めていた。
京阪電車、JR大阪環状線に乗り、天満駅へ。日本一長いと言われる天神橋筋商店街を歩く──ここは僕の青春が刻まれた場所だ。
編集者だった20代後半、転勤で4年ほど、この街で暮らしていた。
パワーがみなぎっている街だった。それに負けないくらいのパワーが自分にもあった。
20年以上の時を経て、再びこの街にステイするとは思っていなかった。でも自分が望んでいた。
街は相変わらず人、人、人──「生活」という言葉が見事に当てはまっていた。
商店街から少し歩いたところに、数日滞在する宿泊先がある。
で、今はこの原稿を書いているわけで、結局仕事してんじゃん、になる。
明日と明後日は、遊ぼうと思う。
5月某日
昼前、20数年前によく通っていたイタリアンレストラン、天満の「シレーナ」へ。
ここのB定食(1210円)が大好きで週イチで食べてた。なかなかにボリューミー。晩飯ヌキ確定。
で、1日分の食欲を満たしたあと、大阪でのお楽しみの一つだった「METROCK OSAKA」という、野外フェスへ。2020年、2021年と中止となっていたので、3年ぶりの開催となる。
アーティストも、オーディエンスも、いい顔してたなあ。
ホントに、音を楽しむとかいて「音楽」なんだなあと、実感。
キュウソネコカミ、雨のパレード、ジェニーハイなど、楽しませてもらいました。
終演まで体力がもたないので、中座し、天下茶屋の銭湯でサウナ入ってから、戻る。
5月某日
フェス2日目。
Creepy Nuts、SHISHAMO、MAN WITH A MISSIONといった、人気のバンドが続々登場するのが嬉しい。だけど僕は、小さいステージに登場する、これからブレイクしそうなバンドを見るのも好きだ。何年か前、名前も知らないお初のバンドだったけど、うわ、個性的、演奏もすごいなあ……って思ったら、それがKing Gnuだった。だからフェスは楽しい。
最後まで楽しみたかったけど、2日連チャンはさすがにキツくて、楽しみにしてたサカナクションは泣く泣く諦め、お宿に戻るのだった。無理をしない、というのがここ最近のテーマになっている。
晩飯は、お宿近くの餃子の王将で。どこにでもあるんだけど、大阪で食べるとやっぱ美味い。
5月某日
山陽本線の各駅停車にゆられ、西へ西へと向かう。
11時に大阪駅を出て、岡山駅まで2時間半くらい。時間はあるので新幹線は使わない。
岡山で高松行に乗り換えて、ン十年ぶりの瀬戸大橋を渡ると、ほどなく目的地の坂出駅に到着。
遅めの昼メシは、やっぱこれだろうと、駅下にある「島のいぶき」の「肉盛りぶっかけうどん(大)」680円。うどんのコシはもちろん、甘辛い肉、出汁のうまみも絶品。四国に来たって感じ。
この日のお宿は、駅からかなり歩いたところにあるビジネスホテル。
どんな人が泊まるのかなと思っていると、エレベーター前に金剛杖を持った人が。
思わず「お遍路ですか?」と話しかけると、今日80番まで到達、あと8つとのこと。
これもやっぱり、四国に来たんだなあって感じ。
さて、今夜は日本語zoomレッスンがある。
日本語教師としても、もう15年くらい活動しているんだけど、コロナの影響をもろに受けて、生徒が来日できない=授業がない状態だった。ほどなくして授業はリモートに変わり、僕が受け持つ日常会話と小論文添削、面接練習もzoomに切り替わり、もう2年経っただろうか。
便利だなあと思うのは、来日できないでいる学生とも、こうして海を越えてレッスンできるってこと。この日も、数名が海を越えてレッスンにやってきてくれた。
本当はface to faceの方が、彼らの様子がわかるからイイに決まってるんだけど、ま、仕方ないものは仕方ない。こんな風にword画面をホワイトボード代わりにして、授業をしている。
21時に終了。学生たちは、先生が自宅でなく香川県坂出市のホテルからだとは思っていない。
これもまた、ホッパーケーション。
晩酌は、ホテル近くのスーパーの超安いお刺身(天然はまち、298円税抜き)と発泡酒。幸せ。
5月某日
今日は移動日&観光日。高松港を高速艇で出航(往復2270円)、35分後に小豆島に到着。
僕が子供の頃、小豆島といえば壺井栄の小説『二十四の瞳』だったけど、今はアニメ聖地なんだな。
島が好きだ。沖縄をはじめ、瀬戸内の島々、五島列島などなど。
その理由を高速艇に乗りながら考えていたのだが、島って、東京や大阪などの都会に比べて、時間がゆっくりと流れている感じがする。人の暮らしにはそれぞれリズムがあって、それが乱れるとイラッとすることがある。たとえば都会のリズムといえば、数分おきにやってくる山手線。トラブルで10分でも停車したままだとイラッとする。でも島はどうだろう。船は多くても一時間おきくらい。天候によって欠航もある。島の人たちはその時間で暮らしている。(逆に山手線には戸惑うのだろうけど)島を旅していると、「そんなに急がなくてもいいよ」という声が聞こえる気がする。だから好き。
小豆島の土庄(とのしょう)港に到着し、自転車を借りて海岸線をのんびり一回りすることにした……のだが、うわあ、考えが甘かった。海岸線ってずっとなだらかなワケないんだ。アップダウンを5回くらい繰り返すという、なかなかの有酸素運動。筋肉痛も確定となる。
でも、いい景色だなあ、癒されるなあ……と自転車を止め、瀬戸内の島をしばらく眺めて現実逃避していると、出版社の別の担当さんからメールが。
《新作のタイトルを、そろそろ……》
ああ、そうでした。夏に出る新刊(後述)のタイトル決めがデッドでした。一気に現実に引き戻される。
自転車をキコキコ漕ぎながら、タイトル、タイトル、と呟いて初夏の小豆島を回るのであった
5月某日
香川県さぬき市志度。今いる場所はとても静かだ。静かすぎるくらいだ。
隣室と薄壁一枚なので、屁もこけない。昨日の自転車で足がだるい。
まあ、今日は終日ガッツリ仕事しようと決めていたから問題なし。
諸連絡、来週の日本語授業の準備などしていたら、午後になっていた。
せっかくお初の町に来たのだから、ちょっとだけでも歩こうと、志度寺へ。四国88ヵ所のひとつなので88分の1巡礼となる。志度の滞在先はすぐそこが海で、カキ小屋もあった。今はシーズンではないので食べることができないが、冬にまた訪れてみたい。
明日は2週間ぶりに東京に戻る。
ホッパーケーションの1巡目を通して感じたこと。
それは、「慣れないことだらけの非日常も、積み重ねれば慣れる」。
本当はまだ慣れていないけど、いずれ慣れていくと思う。
そんなことをボンヤリ考えていると、もう日が沈んでいくのだった。
5月某日
久しぶりの気動車に揺られJR高松駅まで、そこから空港バスで高松空港へ。
中部~関西~四国と2週間かけて移動したのち、1時間ちょっとで東京(成田)に戻る。川口浩探検隊のようだ。夜はこの連載の編集担当であり親友でもある幻冬舎Kさんと、四谷三丁目で打ち合わせイタメシ。
……と、こんな感じでホッパーケーション1巡目が終了した次第。
ざっくりとした交通費を書くと、東京~飛騨高山のバスが5,500円、飛騨高山~京都のバスも5,500円。大阪~坂出がJR(新幹線使わず)で4,220円、高松空港~成田空港がLCCで5,600円……って、飛行機がバスとたいして変わらないことに驚く。九州行も考えているのでLCCも積極的に使いたいなと。
それと、こんなことを思った。
「水が合う」という言葉がある。
その地域の文化や風土に馴染めることを表現するものだが、各地を転々としていて、本当にその土地の「水道水」の味が違うと思った。田舎だからウマイ、都会だからマズイじゃなくって、自分の味覚に合うor合わない「水」がある。これまたホッパーケーションで得た収穫かもしれない。
そして土日は、また野外フェス「METROCK TOKYO」。打首獄門同好会が楽しかった。
BiSHもよかった。最近の自分応援ソングが「beautifulさ」だったので、サビの「とげとげ」で泣きそうになる。清掃員のみなさんと一緒に踊っちゃった。
あと、小ステージで見たニガミ17才が刺激的で(これはっ!)と思った。フェスのステージで変拍子やって盛り上げるって……King Gnuの次はこれですよ。要チェックですよ。
おまけ(ていうか宣伝)
小豆島でチャリ漕ぎながらタイトル考えていた新刊がもう発売されてますので、紹介させてください。
『ミステリー部が謎を解かせてもらえない』PHP研究所 1210円
中2男子に歴史人物が憑依(?)して謎を解く……という、ちょっと風変わりなショートミステリーです。朝読書にぴったり! よろしくお願いいたします。
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