「一緒に暮らそう」待ち望んでいたはずの話が、なぜかうまく呑み込めない。――西條奈加「隠居おてだま」#11-3 - カドブン

06.50
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西條奈加「隠居おてだま」

※本記事は連載小説です。

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「みたらし団子は、好物だろ。たくさんお食べ」
 砂糖醬油あんをからめた団子は、この世でいちばん旨いと思う食べ物だ。
 なのにどうしてだか、今日は喉につかえる。逸郎のいちばんの好物も、やはりこの団子だ。そして嫌いなものはネギ。好き嫌いすら、瓢吉の真似をする。
「どうしたい、もう食べないのかい?」
 母が心配そうに、顔を覗き込む。
「今日は寝坊しちまって、朝飯が遅かったから。まだ腹いっぱいなんだ」
 つい、噓をついた。朝飯は境内の出店や門前町で、稲荷鮨やら豆腐田楽やら、日によっては団子や大福やらを買って腹に詰め込む。以前は朝飯を買う余裕なぞなく、きっ腹で参詣客の相手をし、もらった銭を握りしめ、店に走るのが常だったが、いまはおやつと昼飯は、隠居家でいただける。おかげで稼いだ金を、朝飯と晩飯に充てられるようになった。
 ただ今日だけは、朝飯を食う気になれず、弟には菜飯のお握りを買ってやった。
 やはり肝心のことを済ませないと、飯すらおちおち食えない。
「母ちゃん、話って……?」
「ああ、そうだったね……瓢吉、おまえに、相談事があってね」
 来た! と、思わず串を握りしめた。串に四つ刺さった団子は、あとふたつ残っている。
「三年も放っておいて、こんなこと言えた義理じゃないことは、わかっているんだがね」
 十一月もあとわずか。冬のなかだというのに、脇の下が汗ばんでくる。
 なかなか切り出せないのか、言い訳めいた語りは長く続いたが、うまく頭に入ってこない。そしてその台詞だけが、すこん、ととび込んできた。
「母ちゃんと一緒に、暮らさないかい?」
 ぽかん、と母を見詰める。これはやはり、現実ではなく妄想だろうか。
 くり返し描いた姿とは違って、母は両手を広げていないし、満面の笑みでもない。
 少し心配そうに、息子の顔色をうかがっている。
「ええと……一緒にって、逸郎とってことだよな? おれは数に入ってないよな?」
「とんでもない。もちろん、ふたり一緒にだよ」
 今朝起きてからは、弟だけが望まれて、自分は置いていかれるものと、ひたすらその万一に備えていた。おかげで頭がついていかない。
「え、おれも?」
「やっぱり、嫌かい? 逸郎はともかく、おまえが承知してくれるかどうか、わからなくてね。だから先に、打ち明けることにしたんだ」
 どうやら本当らしいが、色々とうまく吞み込めない。口をあいたままの息子に、母はさいを語った。
「実はね、いまの亭主の前のおかみさんが、先頃、病で亡くなってね。娘がひとりいるんだよ。十三だから、おまえより三つ姉さんになる」
 母の再婚相手はかねはちといって、ちやうすだてをしている。
 兼八もまた一度離縁していて、前の女房は、娘のを連れて再縁した。しかし母親が亡くなると、娘の立場は中ぶらりんになった。おこまは実の父と暮らしたいと望み、兼八もやはり同じ気持ちだった。
「会ってみたら、素直ないい子でね。亭主に乞われて、あたしも承知したんだ。そうしたら、手前ばかりが無理を通すつもりはない。どうせなら、おまえたちふたりも引きとって、五人で暮らそうじゃないかって言ってくれてね」
「一気に三人の子持ちになって、養えるのか?」
「子供のくせに、よけいなところに気を遣うんじゃないよ」
 およねは笑ったが、はっとして、すまなそうにうつむいた。
「そっか、あたしのせいだね……おまえたちには、苦労ばかりかけちまって。いまさらだけど、すまなかったね」
「別に母ちゃんのせいじゃないよ。悪いのは父ちゃんだし」
「おまえたちのことは、ずっと心にかかっていたんだがね。本当はもっと早く、迎えにこれたらよかったのにね」
 ごめんね、と頭を下げる。母を恨む気持ちは、毛頭ない。両親の離縁はもとより、父の悪所通いが招いた結果だ。
「まあ、たまには顔を見せてくれてもよかったのに、とは思うけどな。おかげで逸なんて、母ちゃんの顔すら忘れちまって」
 およねは離縁して二年半ものあいだ、一度も会いにこなかった。ようやく訪ねてきたのは今年の秋になってからだ。最初は八月半ばだった。
 久方ぶりの母との再会は、何やら恥ずかしいやら気まずいやらで、ろくすっぽ話もできなかった。逸郎は兄以上に、むのに暇がかかった。
「ほら、母ちゃんだぞ。覚えてるか?」
 瓢吉がたずねると、困った顔で首を横にふった。兄の背に隠れてしまい、母がいるあいだ中、一言も口をきかなかった。
「あたしが出ていったとき、逸郎はまだ四つだったから。覚えてなくとも仕方ないね。逸郎にとっては、知らないおばさんだものね」
 傷ついた顔をしながらも、言い訳のように明るく言った。
 もしかしたら、あの最初のときから、息子たちを引き取る算段をしていたのかもしれない。母はそれから根気よく、月に一、二度ほど、巣鴨に通ってきたからだ。
 お菓子をもらったり一緒に遊んだりするうちに、逸郎もしだいに慣れて、最近ではおよねが来ると、嬉しそうに迎える。
 ただ、何というか、母親というよりも、可愛がってくれる他所よそのおばさん、との域を、未だに出ていない感もある。およねの前では決して、泣いたりごねたりしないからだ。
「まあ、たかなわから巣鴨は、ちっと遠いしな。母ちゃんも新しい亭主の手前、もとの亭主の家に通うのは具合が悪い。そのくれえは、おれが察しているから気にすんな」
「この子ったら、生言って」
 母に頭を小突かれて、いひ、と笑う。少し気持ちが、楽になった。
「父ちゃんは、何て? もう、話してあるんだろ?」
「昨日の昼間、伝えたよ。おまえが、うんと言えば、好きにして構わないって」
「こっちに丸投げかよ。いつもながら、いい加減な親父だな」
 残っていた団子にかじりつき、口の中でもぐもぐさせる。あいた間に、母の細いため息が入った。
「ああ見えて、根は悪い人じゃないんだがね。酒は吞まないし、あたしや子供に手を上げたりしない。稼ぎはみいんな使っちまうが、あたしも飯屋で働いていたからね。どうにかおまえたちを養うこともできた。あたしの給金までは、手をつけなかったからね」
「はあ、ほおひへ?」
 じゃあ、どうして別れちまったんだ? そうきいたつもりが、伝わらなかったのか。
 いつまでも口の中に居座る、冷えて固くなった団子のように、母の表情はこわばっていた。どうにか団子を飲み下したとき、呟くようにこたえが返った。
「あたしにも、意地があったからね」
「……意地?」
「女の意地ってやつさ」
 およねはさばさばと言って、皿にあった最後のひと串を、ぱくりと頰張った。

▶#11-4へつづく


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