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「好き勝手」を楽しむ ジャム・セッションの聴き方【ジャズを聴く技術 〜ジャズ「プロ・リスナー」への道56】 - serai.jp
comot.prelol.com文/池上信次
「顔合わせ」の2回目です(前回はこちら)。ジャズは、誰とでも共演できるというのが面白さのひとつですが、その、共演すること自体を目的とした演奏もあります。それが「ジャム・セッション」。これは、曲も編成も事前の打ち合わせなく「その場で」グループ演奏をすることです。おそらく、ジャズの発祥時からこういった即興的な演奏は行なわれていたと思われます。というか、これこそがジャズという音楽を形作ってきたのです。1930年代には、当時メインだった大編成のバンドの仕事を終えたミュージシャンの自由な楽しみの場として、即興に重きが置かれた1940年代には「腕比べ」の場としてジャム・セッションは盛んに行なわれました。こういったなかで演奏の技術や情報が共有、伝達され、ジャズは発展してきたのですね。とくにモダン・ジャズの時代には、その「現場」から多くの新しい才能が認められてシーンに登場しました。
このようにジャム・セッションは、ジャズマンが、公開ではなく「自分のため」に参加・演奏するのが目的だったのですが、プロデューサーのノーマン・グランツは、それを「興行」として企画しました。グランツは発想を転換させ、共演演奏から生まれる音楽的成果ではなく「顔合わせ」そのものを売りにしたのです。こんなことができるのはジャズだけですね。
グランツはジャズ・クラブでの試行ののち、1944年7月2日、ロサンゼルスのフィルハーモニック・オーディトリアムという、ふだんはクラシックのコンサートが行われる大ホールを会場に「公開ジャム・セッション」コンサートを開催しました。ジャム・セッションはもともとリーダーのいない演奏ですから、誰それのバンドという呼び方はできません。グランツはこの興行を、会場の名をとって「Jazz At The Philharmonic」、略称「J.A.T.P.」と名付けました。グランツが集めたのは、イリノイ・ジャケー(テナー・サックス)、ナット・キング・コール(ピアノ)、レス・ポール(ギター)、バディ・リッチ(ドラムス)ら総勢17人。ジャム・セッションですから、そこから新しいものが生まれるというような音楽的成果は望むべくもないのですが、ジャズの面白さである自由と個性が存分に発揮され、大評判となりました。そしてJ.A.T.P.はアメリカ全土はもちろん、ヨーロッパ、日本(1953年)でもツアーするほどの人気となり、グランツが主催するJ.A.T.P.は、1957年まで興行が行なわれました(その後もJ.A.T.P.名義のコンサートは数回行われています)。さらにグランツはそれらをライヴ・レコーディングして発表し、これも大きな反響を呼びました(当時のレコードについては、第42回も参照ください)。
誤解を恐れずいえば、ジャム・セッションは個々の「好き勝手」が面白いのですね。ジャズは「個人の音楽」「個性を楽しむ音楽」なのです。ただし、だからこそ共演者は演奏に大きな影響を与えます。「好き勝手」の度合いも共演者次第です。たとえば、1946年4月のJ.A.T.P.コンサート。出演は、バック・クレイトン(トランペット)、チャーリー・パーカー(アルト・サックス)、レスター・ヤング(テナー・サックス)、コールマン・ホーキンス(同)らといったそうそうたるスターたち。中でもパーカーは、最新スタイル「ビ・バップ」で大注目されていました。しかし「J.A.T.P. ブルース」を聴くと、パーカーはソロの先発でしかもわずか3コーラスしか演奏しません。演奏のクライマックスを作っているのはヤングやホーキンスなのですね。また、「アイ・ガット・リズム」では、ホーキンスとヤングの間でソロをとりますが、まったく生彩に欠けています。それもそのはず、パーカーは1920年生まれ、ヤングは1909年、ホーキンスは1904年生まれ。ビ・バップの旗手も、ここではペーペーの若手なのです。遠慮も緊張も致し方ないところでしょう。
なお、ジャム・セッションは現在でもとくにアマチュア・ミュージシャンのために、全国のライヴハウスで頻繁に行なわれています(ここしばらくはコロナ自粛でほぼお休みですが)。時代は変わってもジャズの原点はまったく変わらず、脈々と受け継がれているのですね。
『Norman Granz’ Jazz At The Philharmonic Vol.6』
『Norman Granz’ Jazz At The Philharmonic Vol.6』(クレフ)
演奏:バック・クレイトン(トランペット)、チャーリー・パーカー、ウィリー・スミス(アルト・サックス)、レスター・ヤング、コールマン・ホーキンス(テナー・サックス)、ケン・カーシー(ピアノ)、アーヴィング・アシュビー(ギター)、ビリー・ハドノット(ベース)、バディ・リッチ(ドラムス)〈A面〉
録音:1946年4月22日〈A面〉
「J.A.T.P.」はSPやLPで、編集もさまざまな形でリリースされていました。これは1950年にリリースされた、「J.A.T.P. ブルース」が収録された10インチLP。A面全部が「J.A.T.P. ブルース」です。パーカーの1946年のJ.A.T.P. での全演奏はCD『JATP 1946』(ヴァーヴ)に収録されています(第42回で紹介)。
文/池上信次
フリーランス編集者・ライター。専門はジャズ。先般、電子書籍『プレイリスト・ウィズ・ライナーノーツ001/マイルス・デイヴィス絶対名曲20 』(小学館スクウェア/https://shogakukan-square.jp/studio/jazz/)を上梓した。編集者としては、『後藤雅洋著/一生モノのジャズ・ヴォーカル名盤500』(小学館新書)、『小川隆夫著/伝説のライヴ・イン・ジャパン』、『村井康司著/あなたの聴き方を変えるジャズ史』(ともにシンコーミュージックエンタテイメント)などを手がける。
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