伊東歌詞太郎さん初のエッセイ本『僕たちに似合う世界』インタビュー 「ちゃんと自分で自分を好きでいて」(好書好日) - Yahoo!ニュース

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 7月22日に初のエッセイ本『僕たちに似合う世界』(KADOKAWA)を刊行した伊東歌詞太郎さん。ネット動画で曲をカバーする「歌い手」として脚光を浴び、 その後メジャーデビュー。LINEを含めたSNSのフォロワーは100万人以上と多くの人を魅了しています。幼少期の壮絶ないじめ体験や、家族との複雑な関係を淡々と振り返ったエッセイをもとに、伊東さんの価値観に迫りました。 【写真】覆面のミュージシャン・伊東歌詞太郎さんのインタビューの様子はこちら

どんな道も夢への遠回りにはならない

 今まで自分の人生を振り返るということをほとんどしてこなかったんです。でも、エッセイを書くことが決まってある意味「強制的に」振り返る形になりました。過去を振り返って来なかった分、他人の人生を見ているようで新鮮でしたね。率直に「こんなことやってたの? バカじゃない?」って(笑)。途中から自分で自分がおもしろくなっていました。 ――幼い頃から歌手を志し、歌を本格的に習うために入った劇団が実は演技レッスンしかやらない劇団だったり、突然サックスプレイヤーを目指して猛特訓し、2カ月で辞めたり……たしかに、遠回りをしている場面がいくつか出てきますね。  そうなんですよ。ただ、一見遠回りなことも、遠回りではないんじゃないかとも思います。目標到達点への最短距離って、一直線ではない。他人から見たら遠回りに見える道からも、学ぶべきことはあるんですよね。ただただ必要な道を一歩一歩あるいていくことが、結果的にその人にとっての最短距離になるんじゃないかと。  結局、夢って、「諦めるか諦めないか」でしかないと思うんです。諦めなければ、どの道も遠回りの道ではなくなるんですよ。

自信を持つために、自分を愛そう

――エッセイの中では「“自分を好きでいること”は“自分に自信をもっていること”とイコールだと思う」といった言葉をはじめ、「自分を愛そう」というメッセージが繰り返し発信されているように感じましたが、いかがでしょうか。  家庭教師の経験がひとつのきっかけになっていますね。教師としていろんな家庭にお邪魔して、人間の深い部分をたくさん見てきました。  この日本社会って「ちゃんと自分で自分を好きでいる」ことがすごく難しいんです。でもそれは自分を好きになれないその人自身が悪いわけではなく、学校だったり、親だったり、環境のせいなんですよね。特に、家庭っていうのが大きな割合を占めていると僕は思います。  家庭教師として授業の中で一生懸命そのことを伝えて、一時的には生徒に響いても、1週間経って次の授業の時を迎えるとまた元に戻っている……。これはひょっとして両親に何か原因があるんじゃないか?と思って掘り下げてみると、見事にそうだったりするんですよ。時には両親と向き合って会話することもありました。  自分を愛するってことは、実は人間単体で考えるとできないことではないはずなのに、周りの影響を受けてそれができなくなってると感じます。 ――伊東さんご自身も幼少期のいじめや父親との関係など複雑な環境で過ごしてこられましたが、ご自身がグレたり、道を外れたりしなかったことにはなにか要因はあると思いますか?  意識が音楽に向いていたからでしょうか。キャパシティがそれしかなかったから。グレなかった理由に「どんなことがあっても音楽で食っていくという強い気持ちがあったから」と過去のインタビューで答えたりしたこともあったんですけど。もっと単純に、脳内のCPUに音楽以外のものを受け入れるスキマがなかったというか(笑)。でもそれでよかったと今は思っています。 ――伊東さんのように「これだ」と思えるものがない人や、自分に自信がない人はどうすればいいでしょうか。  自分に自信がない、これって、自分のことを好きになれてないってことだと思うんですけど、これも世間の価値観が良くないと僕は考えています。「優れている人とは、こういう人」というマスメディアからの情報に対して「そこに自分は合致しない」と自己判断をして自信を失ってしまう。  でも、人の価値ってそんなものじゃないですよ。自信がない時って、悪循環で、身動きがとれなくなっていったりするからますます自分を肯定できなくなってしまいますよね。でも、なにか一つでも昨日と違う自分を今日見つけてあげたり、作ってあげたりすると自分を好きになっていけると思います。 ――違う自分、ですか。  どんな些細なことでもいいんですよ。「今日は友達とこんな会話をした」とかでいいんです。「そんな考え方があるんだ」っていう何気ない気づきだって、昨日の自分の中にはなかったものだから。それを成長って呼んであげていいと思います。  小さな心の動きを「そんなちょっとの変化、意味ないでしょ」って切り捨てないで受け止めてあげる。これを365日続けていったら365回アップデートできたことになるんです。良い方向に、自分で自分を導いてあげることをしてほしいなって思います。矛盾するかもしれないけど、人が変わるのってすごく大変だとも思うんです。だからこそ、日々の小さな変化を積み重ねて、自信に変えていけたらいいですよね。

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