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ブロマンスが来る? BL(ボーイズラブ)とも違う「男の関係」とは - テレビ東京
にわかに話題の『ブロマンス』という言葉をご存知でしょうか?
「男同士のアツい友情」を意味するこの言葉は、雑誌で特集を組まれるなど、今ブームの兆しがあるんだとか。
「ブロマンスの論文にはほぼすべて目を通した」という生粋のブロマンス愛好家で、ブロマンスをテーマに雑誌に寄稿することもあるというライターの小西麗さんにブロマンスの全貌について伺いました。
スケボするようなダチ=ブロマンス?
──流行の兆しがあるという『ブロマンス』とは、どういうものなんでしょう。
小西麗(以下、小西):ブロマンスとは、英語圏で生まれた「Brother」と「Romance」を掛け合わせた造語で、「男性同士のアツい友情」という意味の言葉です。洋画でよく見る「Hi, Bro!(やあ、兄弟!)」みたいな関係がもっと濃厚になったイメージですね。2010年代にはアメリカ、イギリスの英英辞典に新語として加わるほど、英語圏ではスラング(俗語)として浸透しています。
──どういうシーンで使われるんですか?
小西:仲の良い男性同士を指して、「彼らはブロマンスだよね」みたいな使い方ですね。去年、K-popアイドル・BTSが韓国語で「ブロマンス」という投稿文と一緒に自撮りをアップしたことが話題になっていたので、K-popファンの方々はご存知の方が多いかもしれません。
最近では「ブロマンスもの」といって、物語のジャンルとして扱われることも多いです。日本でいう「バディもの」が近いと思います。洋画・洋ドラ好きの方々にはもう馴染みのある言葉になりつつありますね。
──どういう経緯で生まれた言葉なんでしょう。
小西:もともと、ブロマンスという言葉は、2000年代にアメリカのスケボ雑誌が「四六時中スケボを一緒にするようなダチ」という意味で作られたものなんです。日本の雑誌でも、「色っぽい女の子」という意味で「雌ガール」みたいな新語を作ったりするじゃないですか? そういうノリで生まれた言葉なんです。
名前がなかった感情に名前がついた
──そんな軽いノリで生まれたんですか。
小西:そうですね。だんだん言葉だけ一人歩きして、語源より広い意味合いで使える「男同士のアツい友情」を示す言葉にリブランディングされていきました。
たとえば、最近、お笑いの世界では若手お笑い芸人さんを「お笑い第7世代」と呼ぶ流れがありますよね?
「お笑い第7世代」の発祥は、霜降り明星のせいやさんが深夜ラジオで自分たちを表す言葉として発言したことなんですけど、その語源を知って「お笑い第7世代」という言葉を使っている人は少ないと思うんです。でも、多くの人が「なんか最近、お笑いで若手芸人がキテるな」って思っていた。「なんとなくみんなが思っていたもの」に霜降り明星のせいやさんが名前をつけてくれたことで、「お笑い第7世代がキテる!」って若手芸人さんたちをパッケージングしやすくなりました。
それと同じで、「男性同士のアツい友情」をブロマンスという言葉でパッケージしたことによって、「これこれ! 私はブロマンスが好きだったの!」と思った人がたくさんいたんだと思います。かくいう私もその一人なので......。
──なるほど。小西さんのブロマンスへの目覚めはいつですか?
小西:大学3年生のときにイギリスのドラマ『SHERLOCK』を講義で見たことがきっかけです。現代を舞台にリメイクされた『シャーロック・ホームズ』なんですけど、シャーロックとジョンの互いがリスペクトしながら、支え合い、不器用に気遣い合う姿が最高で......。
どハマりして、『SHERLOCK』についていろいろ調べていくうちに、この作品がブロマンスの金字塔的存在であると知り、衝撃を受けました。「これまで私が好きだったものは、ブロマンスだったのか!!!」って(笑)。英文学科だったのですが卒論のテーマを「シャーロック・ホームズからみたブロマンス」という内容に急遽変更するほど入れ込みました。
ブロマンスというが浸透するまでは、男性同士がわちゃわちゃしている作品や、そのサイドストーリーをファンが考えた二次創作作品は、腐女子(BL好きの女性)向けとされる傾向にありました。私はそういった作品が好きだったので、「自分は腐女子なんだ」と思っていました。一方で、商業BL作品にどっぷりハマることもなく、「男性同士関係はラブじゃなくていいのかも」という思いを抱えていて。そんな中でブロマンスは、「中途半端な腐女子」だと思っていた自分の趣向にぴったり当てはまる言葉だった。
ブロマンスの功名は、「じゃれあう男性たちを眺めるのが好き」っていう感情に「ブロマンス好き」っていう名前をつけてくれたところにあると私は思っています。
ブロマンスは進化する
──いわゆるBL(ボーイズラブ)とはどう違うんでしょうか?
小西:「ロマンス」の語感からか、混同されることが多いんですけど、ブロマンスの方が多様な関係性を指します。BLはラブストーリーと定義されているので、恋愛関係や肉体関係に発展する関係性に限定されますが、ブロマンスはそれにかぎりません。
私はブロマンスという大枠の中にあるいろんな関係性の延長に、BLという「恋愛関係」のカテゴリが生まれていると思っていて。作者によってそれがラブストーリーとして提示されていない場合、読者はそのままブロマンスとして消費することもできるし、ブロマンスの先にBLの予感を持ってもいい。自由に想像して埋められる余白があることが、ブロマンス作品の魅力だと思っています。
例えば、テレ東ドラマにもなった「きのう何食べた?」で、主人公たちは同性カップルで恋愛関係にありますが、カップル同士が交流している、あの関係性にはブロマンスを感じます。男性同士に互いにリスペクトの気持ちがあり、彼らにしかわからないあれこれがある。それってもうブロマンスなんですよね。
──汎用性が高すぎて定義づけが難しいですね......。
小西:ブロマンスはすでに語源から離れてしまったので、明確な定義づけできる人がいないんです。愛好家たちによって、その時々で概念がアップデートされているのを感じます。
実際、私が卒業論文を書いていた2015年頃は、「異性愛者同士」というのがブロマンスの定義の1つであるとされていました。しかし、少し遡ると、男性同士の恋愛を丁寧に描いた名作映画『ブロークバック・マウンテン』をブロマンス作品と定義して書かれた論文もありました。ブロマンスのWikipediaページは、どんどん書き変わっていますし、これからも変わっていくと思います。
──にわかにブロマンスが話題になっているのはどうしてだと思いますか?
小西:ブロマンスは1対1の関係性である必要も、仲良しである必要もありません。「彼らにしか共有できない感情がある」ということがポイントです。チームメイトや、宿敵、恋のライバル、父と息子の間にもブロマンスは成り立つ。ブロマンスという視点を持つと、より深く登場人物の心に寄り添って物語を見ることができるし、好きなアイドルやアーティストたちを「グループごと応援したい!」という気持ちがさらに湧いて、楽しみ方が増えるんです。
なにより、今まで名前がなかった感情に名前がついたことで、自分の趣向を表明しやすくなったことがブロマンスが話題にのぼる大きなきっかけだったんじゃないでしょうか。
後編では、小西さんが「ブロマンスみ」を感じるテレビ東京の番組を解説してもらいました!
Profile
小西麗(こにし・うらら)
1993年生まれ。日本女子大学英文学科卒業。ライター/編集者。ライフスタイル、エンタメ、カルチャーを中心に取材、インタビューの企画・執筆を行う。趣味が高じて、「Bromance」愛好家としてコラムの寄稿や作品紹介がライフワークに。推しのテレ東ブロマンス番組は『ゴッドタン』、『バイプレイヤーズ』。
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March 26, 2020 at 07:09PM
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