半旗要請、三田市教委など「議論なし」で学校に丸投げ 安倍元首相の家族葬で - 神戸新聞NEXT

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半旗要請、三田市教委など「議論なし」で学校に丸投げ 安倍元首相の家族葬で - 神戸新聞NEXT

 安倍晋三元首相の家族葬が7月に行われた際、各地の教育委員会が学校に国旗の半旗掲揚を要請した。行政の意向をくんで丸投げするかのような対応に、専門家からは「あまりにも思考停止」との指摘も。子どもへの価値観の押し付けにもつながりかねず、9月に予定される国葬では行政から独立した判断が求められそうだ。

 「半旗の掲揚につき、特段のご配慮をお願いいたします」。安倍氏の通夜が都内で営まれた7月11日、東京都総務局が各部署に出した事務連絡の一節だ。受け取った都教委は、255ある都立学校にそのまま転送した。同種の要請は全国で次々と明らかになった。

 いずれも「掲揚するかの判断は各校に任せた」などと説明。文部科学省の担当者は「哀悼の意を表することへの取り計らいを依頼する趣旨なら、政治的な活動には当たらない」と“お墨付き”を与える。

 こうした主張に「『お願い』と言いながら、学校は従わざるを得ないだろう」と疑問を投げかけるのは、名古屋大の中嶋哲彦名誉教授(教育行政学)。実際、北海道帯広市では39校のうち35校が、兵庫県三田市でも29校中21校が応じた。掲揚した帯広市のある学校関係者は「指示と受け取った」と振り返る。

 経済政策「アベノミクス」や安保関連法など、安倍政権の施策の是非を巡って世論は大きく割れた。中嶋名誉教授は「政権の評価が定まっていない中で肯定的な評価を学校として表明することは、子どもへの一方的な価値観の押し付けで、『学校の政治的中立』などをうたった教育基本法に反する」と断言した。

 なぜ議論を呼びかねない要請をしたのか。帯広市教委は「市が掲揚を決めたので、学校も市の施設だから歩調を合わせた」とし、山口市教委も「県庁からのお願いがあった」。だが教委は、教育への政治的介入を防ぐため首長から独立して事務を行う制度だ。日本大の広田照幸教授(教育学)は「行政の依頼を右から左に流すだけで、思考停止している」と手厳しい。

 文科省は過去、中曽根康弘氏ら首相経験者の合同葬で国立大などに弔意表明を求めたことがある。ただ国旗国歌法は日章旗を国旗とすると定めるが、どのような場合に半旗を掲げるかの決まりはない。一部の自治体は国旗などの取り扱い要領を作っているが、長野県は管理上の注意点のみを定め、長崎市は弔意を表す場合は原則半旗とするとの規定があるが、市立学校は対象外という。

 9月27日の国葬でも半旗掲揚を要請するかについて、文科省は「検討中」などと言葉を濁す。広田教授は「各教委には、要請にただ従うのではなく、独立した判断が求められる」とくぎを刺した。

     ◇

 三田市は、安倍氏の家族葬が営まれた7月12日の前日、市経営管理部が公共施設への半旗掲揚を依頼した。市立小中学校についても公共施設と判断し、同様の通知を市教育委員会にも出したという。

 掲揚を依頼した理由について、市は「民主主義の根幹となる参院選の街頭演説中に銃撃されて死亡した事件」への弔意とし、同部の担当者は「政府が半旗を掲げることもあり、市として判断した」とする。

 市から通知を受けた市教委の担当者は「市の決定を受けて各学校に協力を求めた。原爆忌や震災と同様の対応で、市教委内で議論はなかった」とする。

 森哲男市長は「市長部局を念頭に通知し、教育委員会が独自に判断をした。強制する権限はなく、教育の中立性は大事だと考えている」とする。

 9月27日の国葬について市の担当者は「まだ議論していない」としている。

(土井秀人)

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