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【熱海土石流・解説】「警戒区域」来夏に解除へ 被災者はいま|NHK 静岡県のニュース - nhk.or.jp
taritkar.blogspot.com8月7日、熱海市で住民説明会が開かれました。土石流で被災した伊豆山地区で、原則立ち入りが禁止されている「警戒区域」について、斉藤栄市長は「来年の夏の終わりまで」に指定を解除する方針であることを明らかにしました。
(斉藤栄 市長)
「令和5年の夏の終わりまでには警戒区域を解除できるのではないかと考えています。しかし、警戒区域が解除されたからといって、すべての方がすぐに自宅に戻れる状態になるわけではありません。戻れる時期はそれぞれの状況によって異なることになります」
なぜ、来年の夏ごろに解除する方針となったのか、そして被災者はこの方針をどのように受け止めたのか、詳しくお伝えします。
(記者 武友優歩)
Q=キャスター A=記者
【警戒区域の現状は】
Q
説明会では、被災者の今後の生活再建に向けて重要なスケジュールが示されましたね。改めて警戒区域の現状を説明してください。
A
去年7月、地図の中央にある逢初川沿いに土砂が流れ下り、周辺の住宅に大きな被害が出ました。図の赤い色で囲った川の周辺のエリアが、警戒区域に指定されています。
この川の上流に位置する盛り土の造成現場には、県の推計で2万1000立方メートル分の土砂が残されています。今後の大雨などで再び崩れるおそれがあるため、警戒区域は原則として立ち入りが禁止されたままとなっています。
このためことし6月末の時点で132世帯235人が地元を離れた暮らしを余儀なくされていて、多くが公営住宅や賃貸住宅を活用した「みなし仮設」に入居しています。
【来年夏の終わりまでに解除へ】
Q
「来年の夏の終わりまで」に解除するという方針ですが、なぜこの時期になったのでしょうか?
A
熱海市が警戒区域の指定解除のための条件だと考えているのが▼砂防ダムの建設工事と▼残った土砂の撤去工事です。これについて、説明会に同席した国や県の担当者からそれぞれの見通しが示されました。
盛り土の造成現場と下流の住宅地の間に新たに建設が進められている砂防ダムについて、国土交通省の担当者は、来年の3月末までに完成する見通しだと説明しました。
盛り土の造成現場に残っている大量の土砂については、県は今月1日、盛り土が造成された当時の土地の所有者側に土砂の撤去を求める措置命令を出しましたが、元所有者側は「応じられない」という意向を示しています。説明会で県の担当者は、元所有者側が工事に着手しない場合、ことし10月中旬にも県が行政代執行に踏み切り、来年の梅雨の時期までに不安定になっている土砂の撤去を進める方針を説明しました。
熱海市の斉藤市長は、これらの工事が予定どおり進んだ場合、解除の時期を決めて3か月前には住民に説明する方針を示しました。
【警戒区域解除でも住民は・・・】
Q
市長の説明にもありますが、警戒区域の指定が解除されても住民は一斉に戻れるわけではないのでしょうか。
A
はい。警戒区域内で計画されている工事の状況をみながら、段階的に帰還が進められる方針です。
逢初川の改修工事の計画図です。今後の大雨に耐えられるよう、川幅を広げる工事が計画されています。また、緑色で示された川沿いには、市道が整備される予定です。計画図に含まれているエリアでは用地買収をした上で工事が進められることになっていて、その進捗状況によって帰還の時期が決まるということです。
一方、市によりますと、自宅が工事の計画図に含まれていない被災者は、住宅の被害を免れた人が多く、ライフラインの復旧など、条件が整えば戻れる見通しだということです。
【条件整えば戻れる被災者も不安】
植松孝子さん(71歳)は現在、「みなし仮設」として確保された市内のアパートで暮らしています。
自宅の被害は免れたため、今月7日には市の許可を得て警戒区域内に入り、自宅の換気や庭の手入れなどを行いました。ふるさとでの生活の再開を待ち望んでいる植松さんは、月に1回のペースでこうした作業を行っているということです。
植松さんは説明会で示された市の方針について、自宅に戻る時期のめどがたったことに安心する一方で、不安も感じているといいます。
(植松孝子さん)
「めどが立つと心の準備が違ってくるのでそれは良かったと思っています。ただ近所の人が、どなたが帰るとか詳しいことは聞いていないので、コミュニティーがどうなるかというのは一番不安です」。
一方で、自宅に大きな被害を受けた人たちの帰還は、より遅くなる見通しです。熱海市は警戒区域にある土地の一部を買い取って宅地造成を進め、住宅の再建を希望する人に分譲する計画を進めています。これについては、3年後の2025年度中の分譲を目指していると説明がありました。
【自宅に大きな被害を受けた人は】
田中均さん(65歳)は伊豆山地区で生まれ育ち、築およそ30年の住宅に妻と2人で暮らしていました。
県外で暮らす子どもや孫たちが遊びに来られるようにおととし、およそ1000万円をかけて自宅をリフォームしたばかりでしたが、土石流で全壊する被害を受けました。
説明会に出席した田中さんは、ふるさとで自宅を再建するには3年以上待たなければならないという説明を受け、説明会の中の質疑応答で、市に対して苦しい胸の内を訴えました。
(田中均さん)
「家を直して子どもや孫を迎えるばっかりだったので、本当に大変なんですよ。そういうところをわかってください。ふるさとがないというのは本当につらいんですよ」
田中さんは自宅を再建するかどうか、悩みを深めています。
(田中均さん)
「自宅の再建には最低でも4〜5年かかる。自宅を建てるとしたら、70歳になってしまう。そうしたら建てても・・・と、いろいろ考えちゃうんだよね。一歩前へ出られない」
【ひとりひとりの声に向き合って】
Q
同じ警戒区域でも被災者の置かれた立場によって大きく状況が異なるんですね。
A
そうですね。熱海市は住民によって帰還できる時期が異なることから、来年の夏に期限を迎える公営住宅や「みなし仮設」の家賃補助について継続する方針も示しました。
熱海市には被災者ひとりひとりの声に向き合い、復興後の地域の姿や今後のスケジュールについて丁寧に説明しながら、復興を進めてほしいと思います。
※この解説は「たっぷり静岡」番組ホームページの「熱海土石流 関連ニュース・特集」の欄に画像付きで掲載しています。
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