Judul : 好きな男性のために、自分の進むべき道からそれないで/「シナプス」大木亜希子インタビュー(2) 『小説現代 2020年8月号』 | J-CAST BOOKウォッチ - J-CASTニュース
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好きな男性のために、自分の進むべき道からそれないで/「シナプス」大木亜希子インタビュー(2) 『小説現代 2020年8月号』 | J-CAST BOOKウォッチ - J-CASTニュース
comot.prelol.com小説現代2020年08月号(講談社)で初の創作小説「シナプス」を発表した大木亜希子さんへのインタビュー。第1回の記事「男女の一線を越えた先に何が見えたのか」では、大木さんが書きたかった3つのテーマのうち2つに触れた。
第2回は、3つ目のテーマ「恋に傷ついた一人の女性が自立してキャリアアップしていく姿」に迫る。
写真は、「シナプス」著者の大木亜希子さん(撮影:BOOKウォッチ編集部)
―― 前回に引き続き、多少ネタバレになります。
作品中で、週刊誌の記者である主人公・木村さんは、同僚のカメラマン原田さんが、自分のかつての不倫相手である宮原さんの新たなスキャンダル写真を撮影したことを知ります。
大木 木村は、記者としての責任感もあり、女性としての危うさも秘めている。
彼女は振り切ったはずの宮原に安易な行動をやめるように忠告しに行くが、結局、その場で体を合わせてしまう。会えば女に戻ってしまい、挙句に好きな男のためにスキャンダルの写真を消そうとする。
―― 第1回の記事で触れた呪縛ですね。
木村が原田さんのカメラを手にした瞬間に、原田さんが戻ってきて「今、なんかデータ消しました?」と声をかけます。これは、じつは救いの声ですね。
大木 そうです。このあたりから同僚の原田とのやりとりがあり、木村自身が週刊誌の記者としての仕事に向き合いだしていく。
―― 木村さんはデータを消さなかった。仕事のうえで、越えてはいけない一線を越えずに、ふみとどまりましたね。
大木 私自身の周囲を見ていても、好きな人のために、道からそれそうになる女性はいます。そして、そんな風に女性が追い詰められるのは誰のせいなのか。その危うさに触れたかった。
そして、ここから続くシーンは、不倫から卒業して成長していく女性の姿を描いているのです。
仕事仲間の姿勢に刺激を受けながら、優秀な記者として頭角を現していくであろう木村の姿と、経済的にも自立して自分の足で歩いていく女性の希望的な姿を描いています。
写真は、「シナプス」著者の大木亜希子さん(撮影:BOOKウォッチ編集部)
講談社の編集者から熱いアプローチ
―― この作品を「小説現代」で発表することになったきっかけの一つは、大木さんの著作を読んだ講談社の編集者が大木さんの筆力に注目したからとお聞きしました。
大木 ありがたいことです。講談社の菅さんがお声をかけてくださいました。
―― 菅さんもちょうど同席していますので、担当編集として作品の読みどころをコメントいただけますか?
菅 大木さんの『アイドル、やめました。 AKB48のセカンドキャリア』(宝島社)の冒頭、紅白歌合戦でのシーンを読んで、その描写の臨場感、心情のリアルさに脳天を打たれたような思いになり、読了後すぐにお声をかけさせていただきました。
今回は大木さん初の創作小説、ただの「不倫」と言われるような恋愛を、一人の等身大の人間が自分の目と手と足と耳で築いた情報をもとにしっかりと受け止め、自力で前へ進んでいく様子が、大木さんの持つスピーディで丁寧かつ説得力のある描写とともに描かれています。
世の中的には暗いテーマも、起承転結、喜怒哀楽がてんこ盛りで、読後感はすっきりで、まさにエンタメ小説の王道をいく本作、ぜひご高覧ください。
―― たしかに、各所の描写では景色が浮かび上がるような臨場感がありました。大木さんの作風の特長かもしれないですね。
なお、今回は、雑誌に収録されます。それを踏まえた読みどころはありますか。
大木 じつは、「小説現代2020年08月号」には、佐々木愛さんの「目をつむれば全部」という作品も掲載されています。よく読むと、「シナプス」と同じ登場人物が出てきます。ヒントは本屋さんのシーンです。
雑誌への収録ならではの2作品のコラボです。ぜひ、2作合わせてご覧いただけたら幸いです。
写真は、小説現代2020年08月号(講談社)
BOOKウォッチ編集部で大木さんにインタビューしたのは今回で3回目。テーマが変わっても、ストレートに物語を紡ぐ書きぶりは変わらず、気さくな話し方も変わらない。
毎回、恋愛の話で横道にそれつつ脱線しつつのインタビューだが、記者経験も持つ大木さんならではの、一生懸命に質問に答えてくれるサービス精神に救われている。
写真は、「シナプス」著者の大木亜希子さん(撮影:BOOKウォッチ編集部)
最後に大木さんに聞いたことがある。
作中に「シナプス」という言葉は一度も登場しない。「シナプス」というタイトルで伝えたかったことは何かと。
そこで、私なりの「シナプス」の解釈を打ち明けて答え合わせしたら、見事に外れた。
彼女は言った。
「考えてはいけない人のことを、神経レベルでは考えてしまう」そういうタイトルです。
作家としてのキャリアを歩みつつある大木さんを見ていると、本作で大木さんが描きたかった女性の自立と仕事の充実が、今まさに大木さん自身にも訪れているのだろうと思う。
多くの女性に読んでいただきたいと大木さんが語った本作。ぜひ、手に取ってほしい。
■プロフィール
大木 亜希子(おおき あきこ)
1989年生まれ。15歳から芸能活動をスタートさせ2005年にドラマ「野ブタ。をプロデュース」(日本テレビ系)で女優デビュー。2010年、20歳でアイドルに転身しタレント活動と並行してライター業も開始。15年からは会社員として執筆業務を担当し、18年にライターとして独立。著書に『アイドル、やめました。AKB48のセカンドキャリア』(宝島社)、『人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした』(祥伝社)がある。
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July 21, 2020 at 10:14AM
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