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「ミャンマー国軍のスパイ逮捕」と報じられた現場で記者が見たものは…地元警察も否定、フェイクニュースか - 東京新聞
ミャンマー国境に位置するタイ北西部メソトで先月末、不法滞在していたミャンマー人ら38人が地元警察に逮捕される事件があり、タイの国内外で「ミャンマー国軍が送り込んだスパイが紛れ込んでいた」などと報じられた。だが、本紙が事件現場や警察幹部に取材をすると、「フェイクニュース」の可能性が高いことが判明した。（メソトで、藤川大樹、写真も）
９月６日、本紙の取材に「スパイはいなかった」と説明するメソト警察のモンサック・ケオオーン署長
事件は8月29日、メソトにある3階建てのビルで起きた。ビルを家宅捜索したメソト警察が集団で生活をしているミャンマー人らを見つけ、不法滞在の疑いで逮捕した。
事件を巡り、タイの大手メディアは「ミャンマー国軍のスパイが紛れ込んでいた」「国軍に抵抗する民主活動家らの動向を監視していた」などと報じ、国外のメディアもそれを伝えた。
9月上旬に現場となったビルを訪ねた。この日はミャンマー人ら約10人が集まり、建物の外の壁や床を修繕していた。ほとんどはタイ語が通じなかったが、何とか取材の趣旨を説明すると、携帯電話でタイ語を話せる団体の関係者を呼び出してくれた。
彼らの説明によれば、ここは仏教系の慈善団体の支部だという。メソト以外にも、中部ナコンパトム県やサムットサコン県などタイ国内に複数の支部を持ち、タイで暮らすミャンマー人らに支援の手を差し伸べている。
敷地内には3階建てのビルとは別に、ミャンマーへの帰国を希望する人が一時滞在する宿泊施設も用意されていた。窓から、小さな赤ちゃんをあやす若い母親の姿が見えた。
続いて38人が暮らしていた建物内を案内してもらう。1階では幼い子どもが母親と遊んでいた。2階の居住スペースには複数のゴザが敷かれ、カバンや枕、毛布が置かれていた。事件前は約50人がここで集団生活をしていたが、今は10人ほどだという。
慈善団体の関係者は「拘束された38人はスパイではない。祈りに来た人、ミャンマーへの帰国を待つ人、助けを求めてやってきた人たちだった。ただ、彼らはタイに滞在するための法的な書類を持っていなかった」と説明。ビルを所有するタイ人男性も電話取材に「スパイなんていない。現場を見てもらえれば、隠し部屋などがないことは分かるだろう」と語った。
メソト警察のモンサック・ケオオーン署長によると、8月8日に近隣に住むタイ人から陸軍を通じて「偽者とみられるミャンマー人の僧侶が、多数潜伏している」との情報提供があり、警察が家宅捜索に踏み切った。38人の大半はミャンマー人だったが、ラオス人やカンボジア人、ベトナム人も交じっていたという。
署長は「38人全員を取り調べたが、（ミャンマー国軍の）スパイはいなかった」と断言した。署長によると、最初に報じたタイメディアは警察署に直接取材をしておらず、「警察無線の情報を聞いて記事にしたのだろう」と推測した。
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