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〈社説〉共同親権の議論 審議会の独立を保たねば|信濃毎日新聞デジタル 信州・長野県のニュースサイト - 信濃毎日新聞デジタル
専門家や市民の意見を広く聞いて政策の立案につなげることは、民主主義の重要な手順である。そのための場として設けられた審議会のあり方をゆがめる見過ごせない政治の介入だ。
離婚後も父母双方が親権を持つ「共同親権」の導入について検討している法制審議会の部会が、中間試案の取りまとめを見送った。与党の自民党から、共同親権の導入を明記すべきだといった意見が相次いだためだ。
法制審の部会は7月に示した試案のたたき台で、父母の一方が親権を持つ単独親権を維持する案と共同親権を選択できる案を併記した。選択制は、単独と共同のどちらを原則とするかといった論点ごとにさらに案が分かれる。
これに沿って8月末に中間試案を公表し、意見の公募を経て、議論を詰めていく段取りだった。法制審の事務局を担う法務省が、取りまとめに先立って自民党の法務部会に説明した際、共同親権の導入を強硬に主張する議員らから異論が噴出した。
法制審はこんなことしか決められないのか。意見が反映されないなら法務部会は何のためにあるのか―。議員の怒号は会議室の扉越しに廊下まで響いた。法務省側が取りまとめを延期する方向を示してその場を収めたという。
法相の諮問機関として、民法や刑法をはじめ法務の基本的な事項を議論する法制審は、政府の主要な審議会の一つだ。法律学者や実務家らの知見を取り入れ、行政の公正さを確保する目的がある。
独立、自律した形で議論がなされることが欠かせない。議員が、思い通りにならないからと横やりを入れていいはずがない。専門家らの議論を尊重しないなら、審議会は存在意義を失う。
お伺いを立てるような法務省のやり方もうなずけない。重要案件について与党に経過を説明し、意見を法制審に伝えることは珍しくないというが、それが政治介入に道を開き、審議会の本来の役割を損ねることを認識すべきだ。
離婚後の親権については、父母双方の親としての責任を明確にするため共同親権の導入を求める意見がある。一方で、DV(家庭内暴力)や虐待が背景にある場合、関係を断てなくなって、状況を悪化させる懸念が大きい。
法制審でも意見の隔たりは埋まっていない。親権そのものの捉え方を含め、結論を急がずに議論を重ねる必要がある。与党の威勢で議論を曲げ、強引に制度改定を図ることがあってはならない。
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