鹿児島市で起きた事故から考えた “音で見る”信号の危険|NHK 鹿児島県のニュース - nhk.or.jp

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鹿児島市で起きた事故から考えた “音で見る”信号の危険|NHK 鹿児島県のニュース - nhk.or.jp

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ことし8月、鹿児島市池之上町の市道で、横断歩道を渡っていた男性が路線バスにはねられてけがをする事故がありました。当時、歩行者用の信号は赤で、男性は目が不自由でした。視覚に障害がある人たちが歩いて移動するときには、どのような危険があるのでしょうか。そして、どうすれば事故を防げるのでしょうか。

(鹿児島局 熊谷直哉・柳沢直己)

【音や気配が頼りの横断歩道】

今回、話を聞いたのは鹿児島市に住む小山義方さんです。生まれつき全く目が見えず、街を歩く際には「白杖」と呼ばれるつえが欠かせません。

その小山さんが、日常生活の中で特に危険だと話す場所が横断歩道です。周囲の音や気配で推測しなければ信号が青になっているか分からないからだというのです。

(小山義方さん)
「かなり気を遣って歩かないとですね、実際青だと思っていても赤だったりとか、そういうのはありますので、やはり一番気をつけないといけない」

【どのような危険が 一緒に歩いた】

どのような危険があるのか確かめるため、小山さんがいつも通勤で使っている道を一緒に歩くことにしました。

横断歩道では、最初は信号が青に変わったことに気がついていない様子でしたが、近くで電話していた女性の気配を感じて渡り始めました。

(小山義方さん)
「まず車の流れが止まったというのを判断材料にしました。ただしこの段階では半信半疑です。今回は幸い電話で話していた女性の方が横におられて、その方が渡られたので青かなと思って渡ることにしました」

ところが取材中には、赤のままなのに渡ろうとしたときもありました。これまでにも何度かひかれそうになったときもあるという小山さん。青になったことを音で知らせる信号があれば、安心して横断歩道を渡れると話しています。

(小山義方さん)
「一概に全部音響式信号がついてくれれば、それにこしたことはないんでしょうけど。音が鳴ると安心感がありますよね。音が鳴ったら青だなっていうのがはっきりしますから」

【音が鳴る信号 県内では】

鹿児島県内に音が鳴る信号はどのくらいあるのか、調べることにしました。

現在設置されている音がなる信号は370基。これは信号全体の1割ほどにとどまっているということです。さらに、音が鳴る信号のおよそ6割にあたる235基では、時間帯に制限が設けられています。

周辺住民から警察に「騒音に感じる」などといった意見が来ることもあるため、多くが夜から翌朝にかけて鳴らないよう設定されているというのです。小山さんがよく通る交通量が多い交差点も、午後7時をすぎると音が鳴らなくなりました。

8月に鹿児島市池之上町で起きた事故現場にあったのも、音が鳴らない信号でした。小山さんは、なるべく音が鳴る時間に帰宅するよう心がけていますが、難しいときもあると話します。

(小山義方さん)
「やっぱり音が止まれば不安ですよね。なるべく音が鳴っている間に帰れればいいんですけど、仕事とか用事があったりして遅くなることとかありますから」

【新たな技術 開発も】

音が鳴る信号に代わる新たな技術も開発されています。そのひとつが、「高度化PICS」と呼ばれる仕組みです。専用のアプリをスマートフォンなどに入れておくと、信号の状況を振動や音で伝るもので、京都府や宮城県などでは導入が始まっています。

ただし、鹿児島県にこの仕組みに対応した信号機はありません。さらに、視覚障害者の多くはボタンの凹凸がないスマートフォンは使っていないことが多いといわれています。

【求められる助け合い】

対策が難しい視覚障害者の歩行の安全確保。筑波大学の徳田克己教授は様々なアプローチが必要だと話します。

まず視覚障害者自身が、町を歩く訓練をより多く積むこと。そして、広く誰でも使えるような機器の開発も求められます。そのうえで、徳田教授が最も大切なことだと強調するのは、周囲の人の声かけなど社会全体で支える意識です。

(徳田克己教授)
「一番大切だと思うんですけれども、目が見えない人に対して、今信号赤ですよ、青に変わりましたよと、一緒に信号や横断歩道を渡りましょうかっていうふうなことを声をかける。世の中は人が集まって生活しているわけですから、まずソフト、そしてそれを補うようにハードだと、こういうふうに私は考えます」

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