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ソニーの完全無線イヤホンWF-H800は価格以上の高音質。入門機にもオススメ - Engadget 日本版
ソニーの名機ともいえる完全ワイヤレスイヤホン「WF-1000XM3」が発売されてから半年が経ちます。発売当初は入手困難になるほど注目を集めました。ようやく筆者も手に入れようとしたところでしたが、ソニーがまたもや人気を呼びそうな新製品「WF-H800」を2月29日に発売します。想定税別価格は2万2000円です。
WF-H800のレビューをする前に、WF-1000XM3との違いを簡単におさらいします。Bluetoothで接続して気楽に持ち持ち運べる一般的な完全ワイヤレスイヤホンの特徴に、ノイズキャンセリング性能や左右独立伝送などを加えたのがWF-1000XM3(税別価格は2万5880円)でした。
一方のWF-H800は「h.ear(ヒア)シリーズ」の新製品として発売するもの。WF-1000XM3よりもカラーバリエーションを増やして必要最低限の機能だけを搭載した製品です。その実力はどれほどのものなのか、じっくり探っていきたいと思います。
▲WF-H800のカラーはブラック、レッド、ブルー、オレンジ、アッシュグリーンの5色展開
より小さくなったボディー
まず、初めてWF-H800を手にした時に感じたのが、充電ケースの持ちやすさでした。完全ワイヤレスイヤホンを使わない時は、ケースに入れて充電しながら持ち運ぶ人が多いことでしょう。WF-1000XM3の充電ケースも十分小さいと感じられるサイズでしたが、WF-H800の充電ケースはそれよりもさらに一回り小さく握りやすくなっています。充電ケースの重さもWF-1000XM3用の約77gからWF-H800用は約48gとなり、大幅な軽量化を果たしています。
▲新製品のWF-H800(左)と、WF-1000XM3(右) ケース
ケースが小型化したことで当然ながらイヤホン本体も小型軽量化しています。そのため、ノイズキャンセリングや外音取り込み機能などは備えません。
▲WF-1000XM3(上)と、新製品のWF-H800(下) イヤホン
耳から落ちにくいが、つけ心地は個人差がありそう
装着性についてはWF-1000XM3と同じく、耳の3点で支える構造を採用します。このため、耳から外れにくく密閉度も高まり、集中して音楽を聴くことができます。実際にWF-H800を装着して公園や川沿いなどを走ってみましたが、ポロンと耳から外れることもなく安心しました。実はWF-1000XM3よりもWF-H800の方が個人的には耳の形に合っていると感じました。
▲WF-H800を耳に装着した様子
バランス良く聴こえるクリアなサウンド
肝心なWF-H800の音質については、色々な楽曲を視聴しながら、楽器それぞれの聴こえ方や、全体的なバランスはどうなのか、についての感想をお伝えします。まず、シンガーソングライターTaylor Swift(テイラー・スウィフト)の「Shake It Off」という楽曲を聴いてみました。ドラムとブラスバンドが土台を支え、メインのボーカルは重ねてミックスされていますが、WF-H800ではボーカルがしっかりと聴こえるのはもちろんですが、楽曲中にリズムを取るクラップやスネアドラムスティックの音までも繊細に表現してくれます。
続いて人気アイドルグループ嵐の「Turning Up」という楽曲。ポップで明るいメロディーが印象的ですが、実はその楽曲を構成する楽器は非常にシンプルです。5人の歌声が重なり合うハーモニーも綺麗に聴こえますが、冒頭から流れてくるシンセサイザーの揺らぎや、4つ打ちのビートもしっかりとバランス良く聴こえます。
人気バンドDREAMS COME TRUEの「何度でも」を聴いてみたところ、小刻みなギターのカッティングやバッキングボーカルがはっきりと聴こえました。一方、後半にかけてドラムの畳み掛けがある部分や、全体を支えるストリングス(弦楽器)は、もう少し聴こえて欲しい部分だと感じました。
ほかにも異なるジャンルの楽曲についても検証してみました。
EDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)の火付け役ともいえるDavid Guetta(デヴィッド・ゲッタ)の「Where Them Girls At」という楽曲は、アップテンポで力強いシンセサーザーに、クセのあるラップが印象深いです。
この手の楽曲は一般的なポップスに比べて、ミックス(音量や曲全体のバランスを整える作業)の段階で一気に音圧を上げる傾向にあるため、楽曲や試聴環境によっては音割れしてしまいますが、WF-H800では音割れすることもなく、ズンズンと響くビートに気持ちよく乗れました。
ですが、逆を言えばもう少しだけ低音域を占めるシンセサイザーや4つ打ちのビートが聴こえて欲しいところです。
落ち着いた雰囲気の楽曲として英国女性歌手Adele(アデル)の「Skyfall」を選んでみました。映画007の主題歌としても起用された楽曲で、壮大なスケール感のあるオーケストラを中心に構成されます。
WF-H800で聴いたところ、こちらの楽曲も他と同じように、ボーカルが心地良く聞こえますが、揺らぐようなストリングスや、曲にメリハリをつけるドラムやピアノの強弱までも、しっかりと表現してくれます。
最後にジャズの名曲をWF-H800で聴いてみました。アルトサックスを主体とした演奏が印象的な「Take Five」では、4分の5拍子の軽快なリズム感が伝わってきます。「Take The A Train」は、ビッグバンドで構成される楽曲ですが、金管楽器に埋もれがちなベースラインもしっかりと聴き取れました。
ここまで、WF-H800でさまざまな楽曲を試聴してみましたが、聴こえ方の傾向としては、全体的にどの楽曲でもメインのボーカルが他の完全ワイヤレスイヤホンに比べて聴こえやすいうえ、ボーカルがない楽曲についても、低音域や中音域はWF-1000XM3よりも強調され、中高音域にかけては個々の音の粒立ちが良く、ソニーらしいクリアなサウンドです。
こうしたサウンドが楽しめるのも、ソニー独自の高音質技術「DSEE HX」を搭載していることが影響していると考えられます。MP3やAACなどの圧縮音源に加えて、音楽や動画ストリーミングサービスを含む音源も、ハイレゾ相当(最大96kHz/24bit)にアップスケーリングします。
また、ソニーが開発したハイレゾ音源をBluetooth経由でも伝送可能とする音声圧縮技術「LDAC(エルダック)」の他、再生機器からのデータを左右同時に伝送する方式を採用しています。数日ほど使ってみましたが、音楽や動画再生時などの遅延も少ないと感じました。
惜しい部分もあるけど入門機としてもおすすめ
WF-H800の音質や音途切が少ないことは十分満足できましたが、使う上で気になったのはワイヤレス充電ができないことや、防水や防滴も非対応なこと。置いておくだけで充電できるワイヤレス充電の利便性の高さを考えると、次の製品では対応して欲しいところです。また、筆者は雨の日に完全ワイヤレスイヤホンを水たまりに落とした経験があるため、こうしたストレスからも解放されたいです。とはいえ、イヤホンは専用ケースに収納するだけで充電でき、ケース自体の充電はUSB Type-Cケーブルで行えるため、ほぼストレスフリーと言えます。
▲ケースはUSB Type-Cケーブルで充電可能
使い勝手については、楽曲の再生/停止や曲送りをするのに便利なタッチセンサーを備えず、物理ボタンで補っています。この点については、WF-1000XM3を先に体験していたこともあり、物理ボタンをカチッと押すときに耳へのフィット感が失われてしまうため、不便に感じました。いずれにしても複数の動作がボタンに割り当てられており、操作性については慣れる必要がありそうです。
▲WF-1000XM3(左)はタッチセンサー、WF-H800(右)は物理ボタンで操作する
しかしながら、WF-1000XM3と同じくスマホアプリ「Sony Headphones Connect」を使ってイコライザーや、左右センサーにどの機能を割り当てるのかの変更、自動電源オフ、通知音とガイダンスの言語変更などが行える点は、かなり便利だと感じます。
▲Headphones Connect アプリでは電池残量も確認できる
完全ワイヤレスイヤホンは、PCやモバイル周辺機器を手がけるアンカーが1万円を切る価格で製品を販売するほか、パナソニックが初の製品を発売するなど、価格や機能などの競争が激化しています。やはり、ユーザーが完全ワイヤレスイヤホンを選ぶ上で最初に見るべきポイントは「音質と装着感」の2つ。その上で価格や機能のバランスを見極めて判断するのが最良と言えます。
WF-H800に限って言えば、ノイキャンなど一部の機能は削られたものの、WF-1000XM3よりも手が出やすい価格に抑えていることや、クリアなハイレゾ相当の高音質を楽しめること、耳の3点で支える構造を採用するなど、完全ワイヤレスイヤホンを選ぶ上で決め手になり得る要素が十分あります。また、カラー展開も多く小ぶりなボディーなので、ポータビリティに優れています。
数日しか使っていないレビューではありますが、2万円台でこの完成度は良い意味で期待を裏切られました。これから完全ワイヤレスイヤホンを購入する人にとっても良い選択肢ではないでしょうか。まずは、店頭でこの軽くて持ちやすい充電ケースを手に取り自身の耳にイヤホンがフィットするのか試して欲しいです。この音質にアッと驚くかもしれませんよ。
"以上" - Google ニュース
February 29, 2020 at 06:59AM
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